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ディフェンドどころかボロボロ発進のタイガー・ウッズは「正しい方向」へ進んでいる!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
パー5でスコアを伸ばすはずのウッズが、初日はパー5で落としてばかりだった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

日本開催を断念し、米ロサンゼルス郊外のシャーウッドCCで開催されているZOZOチャンピオンシップ。その初日はコロンビアのセバスティアン・ムニョスが8アンダーで単独首位に立ち、8名の日本人選手たちは小平智と星野陸也が4アンダーで17位タイ発進したが、松山英樹や金谷拓実は2アンダー、39位タイと振るわず、石川遼は1オーバー、64位タイとさらに振るわなかった。

だが、もっと「振るわなかった」感を溢れさせてしまったのはタイガー・ウッズだった。昨年、千葉・習志野CCで通算82勝目を挙げて、サム・スニードの歴史的記録に並んだウッズだが、ディフェンディング・チャンピオンとして臨んでいる今年は、初日から4オーバー、76を叩き、首位から実に12打差、最下位から2番目の74位タイというボロボロ発進になった。

ウッズの試合出場は9月の全米オープン以来、1カ月ぶりだ。ウイングドフットでは予選落ちしたウッズだが、今大会開幕前は「全米オープンのときより明らかに調子はいい。戦う準備は、しっかりできているので、それがこのコース上で反映されると思う」と自信さえ漂わせていた。

おまけに、このシャーウッドCCはウッズにとっては馴染みのコースだ。自身が大会ホストを務めるヒーロー・ワールド・チャレンジは、2000年から2013年まで、このシャーウッドが舞台だった。それゆえ、今年のZOZOチャンピオンシップの代替コースがシャーウッドになったことは、ある意味、ウッズの連覇を期待したからこそ、とまで思われていた。

しかし、蓋を開けてみれば、10番からスタートした初日のウッズは、11番(パー5)ではティショットが木の後ろに止まってボギーを喫し、13番(パー5)ではラフから深いラフへ、バンカーへ、そして4打目でまだグリーンに乗せられず、まるで素人のようなミス連発でダブルボギー。16番(パー5)ではクリークに入れて、さらなるボギーを叩き、前半39、後半37で76を叩いた。

フェアウエイを捉えたのは7度だけ、パーオンしたのは10度どまりで、グリーン上では合計30パット。14番で25メートルのバーディーパットが運良くカップに沈み、そのときだけウッズの頬が緩んだが、終始、険しい表情でホールアウトし、77人中74位と出遅れたことは、あまりにも悔しく情けなかったのだろう。ウッズは囲み取材を待ち受けていた米メディアを無言で交わし、珍しく取材を拒否してコースから立ち去った。

腰痛や膝痛の爆弾を抱え、ゴルフの調子もなかなか上がらないウッズだが、今大会では来月の「マスターズへのいい準備をしたい」と意気込んでいた。

だが、初日の大幅な出遅れは、普通の大会なら予選通過が危ぶまれる最悪の発進。しかし、幸か不幸か、出場人数が78名(ゲーリー・ウッドランドが棄権し、現在77名)に限定されている今大会は予選カット無しゆえ、スコアや順位に関わらず、全員が4日間を戦うことになる。

歯に衣着せず、皮肉な表現を好む米メディアは、ウッズが置かれている今の状況をこう記している。

「ウッズが望んでいた通り、彼はマスターズへ向けて、ここで(あと3日間も)いい練習ができる。なるほど、ウッズは正しい方向へ進んでいる」

目の前の状況は、確かにその皮肉の通りだが、シニカルな米メディアの鼻を明かすようなウッズの奇跡の大挽回を秘かに期待していたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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