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両親にとっていい娘でいたかった…大和田美帆の“失って得たもの”

長谷川まさ子フリーアナウンサー/芸能リポーター
笑顔でインタビューに答える大和田美帆さん

 舞台を中心に活動する女優・大和田美帆さん。ご両親はご存知、大和田獏さんと岡江久美子さんです。おしどり夫婦の娘として美帆さんが子供の頃から意識していたこと、さらには、今年1月に離婚を発表し、シングルマザーとして過ごす日々やその胸中など…自称“頼れない女”の心境の変化を尋ねてみました。

―シングルマザーになったことを発表して半年が経ちましたね

 あっという間でした。自分自身の新しい感情、それに人からもらう愛情に気付いたり…。娘と2人になってカラフルに、いろんな“色”を経験させてもらっています。失って初めて得るものがあるんだなと実感しています。

 私の場合、幼少期からずっと誰かを意識している感覚があるんです。それは親の職業の影響だと思うんですけど。責めているわけじゃなくて、気付いたら勝手に“誰かから見た私”や“いい娘さん”を意識してしまっていたので、本当の自分を見失っていた気がします。なので今回、初めて親の反対を押し切ってシングルマザーになって、やっと本当の私になっているような感覚があります。

 小さい頃からいつも周りの目を意識していました。親と街を歩いていると、誰かに見られているという感覚が常にありましたし、大和田獏と岡江久美子の娘として、「いいお嬢さんですね」って言われた方が親も喜ぶと思っていて。現に悪いことなどは全くせず生きてきました。だから離婚をする時は、やはり親のことを気にしました。私の離婚は親のイメージを下げるものであるし…。そういう考え方をベースにこれまでに選択してきたこともけっこうありました。

 今回、申し訳ない気持ちもありましたが、「パパ、ママ、ごめんなさい。私の人生、自分で選択します」とシングルマザーの道を選びました。結局、離婚を発表してネットなどで親が悪く言われているのを見てしまい、悲しく辛かったけど、それも予想したうえで、自分が選択したことだから、自分で乗り越えなくてはと思っています。

―娘さんと2人の生活はどうですか?

 娘はもともと私と2人での時間が長かったので、まだ違和感はないようです。今は娘といっぱい笑っているし、その笑顔に何度も救われていますけど、想像以上に大変ですね。突然、不安でどうしようもなくなることもあります。離婚をする時、親の元に戻らないと決めていたので、毎日2人での生活でたまにしんどい時もあって。週末には、家族連れを見ると寂しくなることもありますが、逆に私1人でなんとかやってやるぞ~とやる気も出たりして(笑)。両親にはたくましく育ててもらって感謝していますが、だからこそ誰かに頼ることが苦手で。結局、1人で抱え込んで自分で自分の首を絞めているんですよね(苦笑)。

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―“大変”を実感するのはどんな時でしょう?

 大変というか、しんどいのは、子供の成長を1人で喜んで1人で悩むことですかね。家事とか物理的なことじゃなくて、誰かと一緒に喜びたい。日々、子供がいろんなことができていく中で、「すごいね」「かわいいね」って、誰かと分かち合いたいなとは思います。

 

 今は本当に友達に助けられていて。「こんなことできたー」とか「じんましんがひどかった」とか、1人で抱えきれない部分を「すみませんけど、ちょっと聞いてくれませんか?」という感じで、メールしたりして共有してもらってます。私が1人っ子なので、友達には一生お世話になる感覚があって。母も1人っ子なので、友達の大切さは母からも教わっていました。

―離婚後、両親から「戻っておいで」と言われることは?

 ありませんでした。それが大和田家なりの愛なんです。もともと父も母も甘いほうではなかった。学生時代から父は厳しかったんです。門限は夜7時で、携帯電話もたまごっちもなかなか買ってもらえないとか。そういう感じで20歳まで育ちました。きっと、“突き放す愛”みたいなものへの確信があるんじゃないでしょうか。

 今はその時の厳しさに感謝しています。離婚後もあまり干渉してきませんし、たまに食事するくらいです。私のことを心配しているとは思いますが、それぞれの人生をちゃんと楽しんでいるように見えます。

 特に母は、長く「はなまるマーケット」に生出演しながら、中学・高校とお弁当を作ってくれるなど、“働く母”の姿を見せてくれたので、私が今、「子育てを一緒にしてください」とは言えないです。母も「私の人生これからよ!」とか「もう私は育児は終わったから、一緒に住まないわよ」と、気持ちいいくらいはっきり言います(笑)。本当に困った時には助けてくれるのでしょうけど、さっきも言ったように、私、“ヘルプを出せない女”に育ったので(笑)。

 孫に対しても、母は甘くないですね。泣いていると「あらあら大丈夫?」って言うのがおばあちゃんだと思ってたんですけど、「泣かないの!」って怒るんですよ(笑)。「かわいいかわいい」とも言ってくれるので、うれしいですけどね。ちなみに、父は目の中に入れても痛くないって感じで、デレ~っとうれしそうにしているので、それを見ているのは私も幸せです。

―親子イベント「ミホステ」が好評のようですね。始めたきっかけは?

 19歳から舞台に立たせていただいて、毎月のように歌ってお芝居ができるというありがたい環境の中、出産で初めてピタッとお休みをして。初めの1年は育児に必死でした。でもその後、少し余裕が出てきた頃に、子供連れで出かけられる場があったらいいなと思うようになって。自分の理想を具現化したのが、子供と行ける音楽会「ミホステ(『MIHOP STEP JUMP!!』)」です。

 自己プロデュースなので、事務所には許可を得て、構成や場所選び、参加者の募集まですべて自分でやっています。もちろん、ミュージカルのように劇場に観に来てくださる方に楽しんでいただくのも役者として1つの表現ですけど、そういう舞台を観に行くタイミングのない方々に、歌を聴いてもらったり、手遊びなどを交えて、音楽の楽しさを子供に感じてもらいたいなと。2017年から始めて10回開催できたので、1つのライフワークにしていきたいなと思って、音楽療法の勉強も始めました。

 お客さんは、ブログ読者の方が多いんですけど、結局、皆、同じ悩みを持つ母親という共通点があるので、会場で悩みを打ち明けられる方もいらっしゃいます。そんな方たちが、「きょうの夜からまた家事育児頑張ります!」と笑顔で帰るのを見ると、私もやる気をいただけるし、始めてよかったなと思います。

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―デビューの際、2世であることに“心構え”はありましたか?

 今思えば、そんなに意識していなかったのかもしれません。私、デビュー作が自分の中では悔しくてたまらないほど、実力不足だったんです。それは自分でも分かっていたので、負けず嫌いなこともあり、さらに向上心が芽生えて。たたいてもらったおかげで、スキルアップしてお客さんに認められる人間にならなきゃと思えたんです。逆に、2世じゃなければもっと早くにあきらめていたと思います。

 親が芸能界にいるからこそ厳しい目で見てもらえる。2世として見られたくないという思いで、あの頃はどうにか歌もお芝居もうまくなりたくて、本当に必死に毎日レッスンをしました。気付いたら批判の声も少なくなって。そうなるまでには、だいぶ時間もかかりましたけどね。

―両親からダメ出しは?

 あります。父からは客観的で的確な意見をもらうことが多いのですが、最初の頃、ミュージカルが好きな母からは「歌がちょっと…」「ヒヤヒヤする」って何度も言われました。身内が一番厳しい批評家ですよね。ありがたいです。実は、ミュージカルを2~3本やって、歌がなかなかうまく歌えず、心が折れて、ミュージカルから離れたことがあったんです。

 そんな時、鴻上尚史さんの『恋愛戯曲』というストレートプレイの舞台に出て、歌などの技術だけでなく、気持ちで何かに負けていたことを気付かされました。それこそ鴻上さんはいろいろと見抜いていて、「親を意識するなよ!」「君を見てるんだよ!」と言われたり。蜷川幸雄さんや栗山民也さんにも、「好きなだけじゃ芝居はやっていけない」とだいぶ鍛えられました。いかに、周りからどう見られるかばかり意識して生きてきたのかを実感した日々でしたね。

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―9月には舞台が控えていますね。

 そうなんです。福田雄一さん演出の『ペテン師と詐欺師』で、山田孝之くんと石丸幹二さんがW主演するコメディーミュージカルです。福田さんと舞台で組むのは、2014年の『フル・モンティ』以来2度目です。その作品でも共演している山田くんは同い年なんですけど、本当に才能にあふれた、とんでもない方。刺激を受けました。

 今回の私の役はすごくエネルギッシュで抜けた役。どんな経験も活かせるのがこのお仕事の特権だと思っています。福田さんにも、そしてお客さんにも、これまでの人生経験を活かした、私にしかできないお芝居や歌をお届けしたいです。

―どんなお母さん、どんな役者でありたい?

 いつも、喜んでいられる母でいたいです。何事も喜んで、ありがたいと思って生きていれば、その姿って娘に伝わるかな、見てくれたらうれしいなという感じです。結果、娘が将来、何事も楽しんで感謝して生きられる人間になってくれたらなと思います。

 私自身、何事も楽しんで、喜んで、感謝することというのが、ここ数年でより強まりました。特に娘との時間は全力で楽しんでいます。子は鏡と言いますよね。「娘にどうなってほしいか」は、「私がどうなったらいいか」という問いかけだと思うので、それは忘れないでいたいです。

 役者としては、大きな舞台でも小さな舞台でも、ライブでもテレビでも、誰かの心を動かせる人間でありたいですね。先日、96歳になる祖母に、娘と会いに行ったんです。そこで歌をリクエストされて、讃美歌を歌いました。私が歌いたいからじゃなくて、祖母が聴きたい曲として歌ったんですけど、その時間がと~んでもなく幸せでした。

 1対1の、他に誰も聴いていない、ただ祖母を癒やしたいなぁという思いだけで歌った時間。その時、やっぱり、誰かに笑顔になってもらえるようなお仕事しかないと確信しました。それがたとえ、たった1人だけだとしても、心を動かすことができたらと思います。

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(撮影:KOZOクリエイターズ)

■インタビュー後記

 大和田獏さんが司会を務めていた時代に『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)のリポーターだったご縁から、美帆さんの舞台をよく観に行っていました。特に美帆さんが主役を務めた『ガラスの仮面』では、勝手に叔母のような気持ちになり、感涙しながら観ていたことを思い出します。そんな美帆さんが、結婚、出産、離婚を経験。今回、離婚後初のインタビューで、今までの人生を振り返り、素直な思いを赤裸々にお話しいただけたと思います。大変だと言いながらもハツラツとしていて、なんだか安心した“勝手叔母”でした。

■大和田美帆(おおわだ・みほ)

東京都出身。2003年にミュージカル『PURE LOVE』で女優デビュー。以降、ドラマ、舞台、バラエティーなど幅広いジャンルで活躍中。主な出演作品に、舞台『ファンタスティックス』『音楽劇ガラスの仮面』『アマデウス』『恋と音楽』、ドラマ『相棒 season17』(ゲスト出演、テレビ朝日系)など。現在、『チョイス@病気になったとき』(NHK Eテレ)にMC出演中。個性的な文章がアメーバブログで人気となり、2017年にはエッセイ集『ワガコ』(新潮社刊)を発売。9月にはミュージカル『ペテン師と詐欺師』が控える。

フリーアナウンサー/芸能リポーター

群馬県生まれ。大学在学中にTBS緑山塾で学び、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で7年間アシスタントを務める。ワイドショーリポーター歴はTBS「3時にあいましょう」から30年以上、皇室から事件、芸能まで全てのジャンルをリポートしてきた。現在は芸能を専門とし、フジテレビ「ワイドナショー」、日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」ほか、静岡・名古屋・大阪・福岡の番組で芸能情報を伝える。趣味は舞台鑑賞。

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