政治への関心や自分の生活とどちらが大切か…政治への思いの実情をさぐる(2020年公開版)
国民全体に対するさまざまな施策を国家単位で執り行う活動や、その施策そのもの、さらにはそれらを成すためのさまざまな様式、意識決定などをまとめて政治と呼んでいる。その政治に対し、人々はどの程度関心を持ち、いかなる思いを抱いているのか。今回は総務省が2020年9月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、政治にまつわる4項目の調査結果(設問に対しどれだけ同意できるか)を抽出し、その実態を確認する。
まずは「普段から政治に対して関心がある」。
全体では同意派(「当てはまる」「やや当てはまる」)は3割強、非同意派(「あまり当てはまらない」「当てはまらない」)は6割台。男女別では男性の方が同意派が多く、年齢階層別ではおおよそ若年層ほど非同意派が多い。学生・生徒も10代とあまり変わるところが無い。保護者の下で生活している人が多分にいることもあり、政治への関心まで注力が回らない、優先順位が後回しにされてしまうのだろうか。選挙の投票率は一般的に若年層ほど低い値を示すが、この値を見ると納得してしまう。10代に限れば大部分は選挙権が無いのも一因だろう。
続いて「政治のことよりも自分の生活の方が大事だと思う」。
おおよそ8割は「政治より自分の生活の方が大切」で、そうでない人は2割近くに留まる。政治に重点を置いても、結局は自分自身の生活にも反映されうる、それが直接的か間接的かの違いでしかないのだが、やはり直結する方に注力してしまうのは人の性というものか。一方、よく見ると20~30代では「当てはまる」の回答率が高めに出ており、最初の「政治への関心」の度合いとの連動性も想起される。自分の生活の方が大切なので、あまり政治には関心を寄せないと考えれば道理は通る。
次は「我々が少々騒いだところで政治はよくなるものではないと思う」。
個々の意思の集合が大きな意思となることを考えると、それぞれが同じようにあきらめたのでは、集団としてもその流れに従ってしまう。しかし仮に自分自身が何らかの動きを示しても、それだけですぐに世の中が変わるわけではない。そこに無力感を覚えるのは理解できる。
他方、自分の所属する属性で同じような考えを持っている人が多数いても、その意思がないがしろにされている雰囲気を覚えると、個々の意見ですら通りにくいと認識してしまうことがある。10~30代、そして学生・生徒で「当てはまる」の値が高めに出てしまうのも、自分達の考えが軽視されている思いを抱いているからだと見ると、納得はできる。逆に40~60代で「あまり当てはまらない」の値が増えていくのも、意識の奥底で自分の属性の意見が比較的通りやすい、思っている通りに世の中が動いていることを認識している結果ではないだろうか。
最後は「政治のことは難しすぎて自分にはよく分からない」。
他の結果を裏付ける動きを示している。女性、若年層ほど「難しい、自分には分からない」との意見が多い。特に10代は7割強が同意派。そして年が上になるに連れてその値は減っていく。若年層ほど政治に消極的、無関心なのも、要は難しいからに他ならない。もちろん難しいのが原因で、その他の姿勢が結果ではなく、それぞれ相互に結果と原因となっている部分もあるのだろう。
2016年6月から改正公職選挙法が施行され、18・19歳も選挙で投票ができるようになった。投票権があるとなれば、それに絡んで政治への関心が増す可能性もある。今後少しずつだが10代や学生・生徒に関する各種回答値にも変化が生じるかもしれない。
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※令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2020年1月14日から1月19日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。
調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。