16歳が優勝賞金3.3億円獲得するeスポーツ、「プロになりたい」子に保護者は何を言うべきか
2019年7月、米ニューヨークで行われたゲーム「フォートナイト」の大会で、16歳のブーガことカイル・ギアスドルフ君が優勝し、賞金300万ドル(約3.3億円)を手に入れて話題となっている。フォートナイトは、最大100人のプレイヤーが最後の一人になるまで戦いを広げるバトルロイヤル系ゲームであり、建物をクラフトすることも可能だ。
同大会ソロ部門の参加者約100人は13〜24歳で全員が男性。ゲームにはまるのは一般的に男性が多いことはよく指摘されることだ。優勝したカイル君は、一日8〜10時間プレイしており、ビデオゲームを始めたのは3歳だという。
eスポーツは競技人口1億人超、市場規模は1200億円を超える。2018年のアジア大会で公開競技としてeスポーツが追加され、人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」で日本チームが優勝したことでも話題となった。eスポーツは2024年のパリオリンピック正式競技となる可能性もあり、注目の分野となっている。
eスポーツの賞金額を知り、惹かれた子どもや保護者も少なくないだろう。しかし、話はそう単純ではない。eスポーツの選手を目指すなら、ゲームは無制限にやってもいいのだろうか。「ゲーム依存」のリスクはないのだろうか。
ゲーム依存はWHOで病理認定
2018年、WHOにより、ゲーム障害(ゲーム依存)は病理と認定されたことはご存知の方が多いだろう。アルコールやギャンブルなどの依存症と同様、治療が必要な疾病とされたのだ。
「ゲームの時間や頻度をコントロールできない」「日常の関心事や日々の活動よりゲームを最優先にする」「家庭・学校・職場などに問題が起きてもゲームを続ける」などの状態が12カ月以上続き、社会生活に重大な支障が出ている場合、ゲーム障害と診断される可能性がある。
奇しくも今年4月には、英ヘンリー王子が「ビデオゲームは中毒性が高いから、フォートナイトを始めとしたビデオゲームは禁止すべき」と発言している。
ゲーム依存は、生活に支障が出るところが最大の問題だ。ゲーム依存が進行することで、昼夜逆転した挙げ句不登校になったり、退学・退職してしまったり、育児放棄してしまう例もあり、問題は非常に深刻だ。
心身・生活に支障が出ない範囲で目指すこと
つまり今、ゲームは「ゲーム依存」と「eスポーツ」両面での注目が集まっているというわけだ。
ゲーム依存の治療と研究で知られる国立病院機構久里浜医療センターには、「eスポーツの選手を目指している」という患者が訪れてくるという。生活に支障が起き、依存状態となっているにも関わらず、大義名分ができてしまうことで回復の妨げになることは想像に難くない。
私が講演で訪れた多くの中学校で、複数の男子生徒がゲーム依存状態となり不登校状態になっていると聞いた。テストの前日なのに遅くまでゲームに夢中になっている生徒、新学年になってから一度も登校していないので担任が毎日自宅に訪れているという生徒もいた。一日4〜6時間くらいゲームをしている生徒は少なくなかった。
冒頭でご紹介したカイル・ギアスドルフ君は一日8〜10時間ゲームをプレイしているというが、ゲーム依存と何が違うのだろうか。彼はゲームプレイ動画を配信したり、大会に参加、優勝しており、目標が明確で仕事として取り組んでいる。あくまで主体は彼であり、目的意識が明確なのだ。
一方の生徒たちの本業は学生だ。何かに本気で取り組むこと自体には価値があるが、ゲームは逃避行動ではまる子供が多いものだ。ゲームにすべてをかけるのは、自分が本気でプロプレイヤーになりたいのか、それともただの逃避行動なのかを見極めてからでも遅くないだろう。ぜひ、子供に「プロプレイヤーになりたい」と言われたら、このような問いかけをしてみてはいかがだろう。心身や学校生活に支障が出ないよう、プレイ時間をコントロールしながら、両立を目指してゲームに取り組むべきではないだろうか。
最近は、定時制・通信制学校でeスポーツが部活に採用されることが増えている。中には数名でプレイするゲームもあり、責任感やコミュニケーション能力などが培われているという。ある学校では、ゲームが勉強の妨げになると心配する保護者に対して、部活でのプレイ時間は2〜3時間に制限したり、テストで赤点を取らないなどの条件を設けて説明したという。このように利用をコントロールできるのであれば、悪影響はなく楽しめるのではないか。
生活に支障が出ない範囲でできるのであれば、メリットも得られ、問題が起きずに取り組めるだろう。最終的には自分でコントロールして利用すべきものだ。ゲーム依存にならないよう周囲が見守ることで、子供もよりコントロールしやすくなるだろう。