ロボットやコンピューターが人の仕事を代替すると貧富の差は拡大するのか否か、世界の人々の考えをさぐる
技術革新は人の生活をより便利に、豊かに、できないこともできるようにするために行われる。しかしそれは同時に、これまで人がしてきた仕事を新技術が代替し、人の役割が失われることをも意味する。技術の進歩に伴う就業構造の変化に代表される、経済の構造の変化はいつの世にも生じているが、昨今のロボットやコンピューターなどの新技術は、社会にこれまでに無い大きな動きをもたらすのではないかと予想されている。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年9月に発表した調査「In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation」(※)の報告書を基に、昨今の新技術の代表格であるロボットやコンピュータが人の仕事の多くを代替するようになると、どのような社会となるのか、諸国の人々の想像の実情を確認する。
今調査の対象国では多くの人が、今後50年の間に人がしていた仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられると考えている。
それではその予見通り、ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替できるようになったら、社会はどのような変貌を遂げるだろうか。これは世界全体では無く、回答者の国自身においての状況を想定してもらっている。
代替されるような簡単な仕事しかできない人は職を失うか、さらなる低賃金(新技術のコスト未満)での就業を余儀なくされる。一方で代替不可能な高度技能を持つ人の労働価値はますます上がり、また新技術を駆使できる人は効率よく稼ぐことが可能になる。結果として貧富格差が拡大すると考えている人は、調査対象国すべてにおいて6割を超えている。ギリシャ、アルゼンチン、日本、ブラジルでは8割以上の人が、貧富格差の拡大を予想している。
他方、ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替することで、経済はより効率的になる(個人の経済状況は問われていない)とする意見は日本が一番高い値を示しており、74%。次いでポーランドは61%、ハンガリーは52%。アメリカ合衆国は別として、技術への傾注が高い国の方が、高い値を示している感はある。
報告書ではこの回答傾向に関して、回答者の国の経済状況が小さからぬ影響要因であるとし、一つの事例を提示している。次のグラフは「ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替できるようになれば、新しく高給な仕事が生まれ、人はそれに従事することで豊かになれるだろう」という推論に肯定的な人の割合を、現状の自国経済の状況認識別に算出したもの。それぞれの国の労働市場の現状、構造による違いはあるものの、どの国においても現在の経済がよいとの認識を持つ人は、多くの人が新技術によって新しく高給な仕事が生まれると考えている。経済状態が悪いと考えている人は、その希望も低い値に留まっている。
現状がよければ連想される未来も明るいものだろうとの楽観的な考えが多くなる、現状が悪いものなら未来も暗いものとなるとの悲観的考えが増える。未来は現状の延長上にある以上、そのような傾向が生じるのは仕方が無いかもしれない。
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※In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation
対象国において2018年春に行われたもので、調査対象母集団は各国18歳以上で約1000人ずつ。調査方法は電話による対話形式や対面形式など。一部の国では都市部のみでの調査実施。それぞれの国の国勢調査などの結果に基づいたウェイトバックが実施されている。ただし一部設問におけるアメリカ合衆国の調査結果は、2015年6~7月に行われた同様の調査結果を適用させている。
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