北朝鮮経済にも影響していた中国の人民元切り下げ
中国は、人民元の対ドル相場の取引基準値を11日に1.86%、12日1.62%を切り下げたのに続き、13日にも1.11%切り下げた。
これを受け、世界各国で同時株安となったのは周知の通りだが、その影響は北朝鮮にまで及んでいる。
北朝鮮には株式市場は存在しないが、国内の商取引では外貨への依存度が高くなっている。表向き、国民に外貨の使用を禁じている当局が、市場の場所代の支払いなどでは国民に外貨を要求しているくらいだ。
そして外貨のなかでも、とりわけ人民元への依存度は極めて高い。
平安北道で貿易に携わっている李某氏は米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューに次のように答えている。
「人民元切り下げのニュースが中国から伝わり、あっという間に北朝鮮国内にも拡散した。新義州(シニジュ)市内の駅前ホテルや外貨商店など外貨両替所には、米ドルを買おうとする闇両替商たちが集まっている」
「市場では、人民元で売買すると損をするので、受け取らないという商人も現れた」
新義州の商売人は、人民元で1000~2000元(約2万円~4万円)ほどの資金を当たり前に保有している。ドンジュ(金主、新興富裕層)になると数万元の資産を保有している人も少なくないが、今回の切り下げによる混乱で資産を大きく減らす人が続出。今後も混乱が予想されるという。
北朝鮮にも自国通貨「北朝鮮ウォン」が存在するが、2009年に行われた貨幣改革(デノミ)によって多くの人が資産の大半を失い、通貨の信用はガタ落ちした。そうした苦い経験から、北朝鮮では資産を金(ゴールド)や米ドル、人民元に替えて保有するのが常識。
また、今回の人民元切り下げを受けて、「人民元よりは米ドルが安全」という認識がさらに広がりそうだ。
前述した通り、北朝鮮当局はこれまでに繰り返し外貨使用禁止令を出している。
しかし、商売の現場ではなし崩し的に外貨が使われており、今回の切り下げも、北朝鮮経済に何らかの打撃を与えることが予想される。