大学授業料の国際比較をさぐる
・OECDで公開されている値では、国公立大学の平均授業料がもっとも高いのはチリ、次いでアメリカ合衆国、日本。最大値ならポルトガルが一番。
・私立大学の平均授業料はアメリカ合衆国が一番、次いでオーストラリア、日本。最大値ならラトビアが一番。
・「大きな政府」の国が多い欧州では授業料は国公立大学も私立大学も無料、あるいは低額の国が多い。
高等教育機関の大学は、国の文化や教養や科学の水準を維持し高めるため、そして優秀な人材を育成するのに欠かせない存在。日本ではその大学の授業料は国際的に見て高いのだろうか。OECDの公開値(※)で確認する。
まずは国公立大学。平均値が計上されている国はそのまま平均額を、値幅が計上されている国は最低値と最大値を併記した。何も書かれていない国はゼロ、つまり授業料が無料であることを意味する(データそのものが無い国はグラフ上に国自身が反映されていない)。
ポルトガルの最大値が大きなものとなっているが(1万661ドル)、それを除けばチリ、アメリカ合衆国、日本、カナダ、オーストラリアでは、国公立大学の授業料は高い状態となっている(韓国では最大値がアメリカ合衆国の平均値を上回っている)。国公立大学でも日本の大学授業料は高い水準にある。
国毎の傾向を見ると、デンマークやエストニア、フィンランド、ノルウェーなど、欧州諸国、特に北欧諸国では授業料が無料、あるいは徴収されても非常に低い額に留まっているのが分かる。これらの国は大よそ、いわゆる「大きな政府」(国民負担率が高い代わりに、一般政府(国や地方自治体、公的保険機構)による保護も厚い)に属しており、大学での勉学にかかる費用もまた、一般政府がサポートする姿勢を示していることが分かる。
私立大学ではどうだろうか。
平均額ではアメリカ合衆国が、最大額ではラトビアが群を抜いているが、大よそ国の序列に変わりは無い。欧州諸国、特に北欧諸国では無料、あるいは低い額に留まり、それ以外の国では高い傾向にある。日本はアメリカ合衆国、オーストラリアに次いで高い値(韓国が最大額ではオーストラリアを超えている)。
高等教育機関の制度は国によって大きな違いがあるため、一概に単純比較はやや難があるものの、日本の大学授業料は国際比較の観点でも高い水準にあることは間違いなさそうだ。
なお今回の値に限れば、日本の私立大学の授業料は国公立大学の約1.59倍。文部科学省の「学校基本調査」の最新値、2017年度分で確認すると、国立大学生は60万9473人、公立は15万2931人、私立は212万8476人(学部学生、大学院学生、専攻科などを合わせた人数)。この値から計算するに大学生全体の約74%は私立大学生で、国公立大学より高い授業料を支払っているのが実情ではある。
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※OECDの公開値
「Education at a Glance」で取得可能。各種大学の1年間における授業料がPPPs(購買力平価による米ドル換算方法、あるいは換算値。同じ商品がどの国でも同じ対価で取引されるとの仮定で、各国の通貨を米ドルで換算したもの。OECDでは独自基準でこのPPPsの換算値を逐次更新しており、今回の値もそれを用いている)でどれぐらいになるのかを提示している。
公開対象国は限定されており、OECD諸国すべてでは無い。対象年は2015~2016年。大学の種類の仕切り分けは次の通り。
・国公立大学…Public tertiary institution(公的高等教育機関)
公立教育機関または国の機関によって直接管理されている、あるいは国や公的な機関から任命された人員によって構成される評議会・委員会などで管理されている高等教育機関。
・私立大学…private tertiary institution(私的高等教育機関)。(1)と(2)で構成
(1)Government-dependent private institutions(政府依存型私立高等教育機関)…運営中核資金の50%以上を政府機関から受け取っているか、教職員の給与が政府機関から支払われている。
(2)Independent private institutions(独立型私立高等教育機関)…運営中核資金の政府機関からの受取額が50%未満で、教職員の給与が政府機関から支払われていない。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。