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消費者物価は4月にも前年比2%近辺に。2.0%台にあったのは、消費増税の影響を除くと30年前に遡る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

4月の消費者物価指数は2%超えも

 4月の消費者物価指数(除く生鮮)は携帯電話料金の引き下げによる影響が1.1%程度なくなると予想されており、4月からは食品などの値上げも相次いでおり、原油価格も高止まりしていることなどから、前年同月比プラス2%という日銀の目標をクリアする可能性が高い。

 2%を超えてくるとなれば2008年9月以来となる。2008年7月から9月にかけて中国など新興国経済の急成長を受けて原油先物が大きく上昇しており、これにより消費者物価も一時的に2%台に上昇していた。

 この際には2008年9月にリーマン・ショックが起きている。金融市場では欧州のサブプライムローン問題などが発生し、原油価格の上昇はそれらを無視した投機的な動きのように見えていた。

 今回もロシアによるウクライナ侵攻という問題が起きていたが、これはむしろエネルギー価格や穀物価格の上昇を加速させる懸念がある。物価については押し上げ要因が多い。

 日本ではここに円安の動きが加わってくる。日銀と欧米の中央銀銀行の方向性の違いが円安の動きを加速させかねない。

全国消費者物価指数(除く生鮮)が2%台に乗せていたのはいつなのか

 それでは2008年以前の全国消費者物価指数(除く生鮮)が2%台に乗せていたのはいつになるのか。

 総務省の消費者物価指数のデータによると2014年4月から2015年3月まで、そして1997年4月から1998年1月までも2%を超えていた。しかし、いずれも消費税の引き上げによる影響によるもので、これは参考にしかならない。

「消費者物価指数」第3-3表 生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比の推移

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 1989年4月に消費税がスタートしたが、この影響がなくなる1年後の1990年4月以降も消費者物価指数(除く生鮮)は2%台となっており、それが1992年12月まで続いた。

 消費税の影響がない年となれば1992年あたりに遡り、30年ぶりの2%台ということになる(筆者調べ)。

前回2%台の時代の長期金利は5%近辺

 当時の日銀の政策金利は公定歩合であったが、1992年4月にはその公定歩合を0.75%引下げ3.75%としていた。つまり短期金利ですら4%近辺にあった。1992年の長期金利は5%あたりにあった。

 日銀は物価目標を2%としているが、日本では消費税要因を除くと2008年の一時期か、バブル崩壊後の1992年あたりまで遡らざるを得ないことになる。

 今回の物価上昇が2008年のように一時的なものとなるのか。日銀はそのように考えているようだが、そうではなく2%の水準が続く可能性はないと言えるのか。

 日銀が発表している3月の企業物価指数が前年同月比で9.5%となり、比較が可能な1981年1月以降で最大の上昇率となったことも考えると、むしろ高水準が持続する可能性もありうるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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