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背水のイラン戦 男子バレー リオへの正念場

柄谷雅紀スポーツ記者
2大会ぶりの五輪出場をつかむためには、もう負けられない。(写真:アフロスポーツ)

背水の陣となるイラン戦

リオデジャネイロ五輪世界最終予選兼アジア予選で、日本はポーランドに敗れて2連敗し、1勝2敗となった。ただ、2014年の世界選手権覇者に敗れたのは、ある意味で想定の範囲内。1日から2連戦となるアジア勢のイラン、オーストラリアに連勝すればアジア最上位で突破できる可能性も見えてくる。五輪出場枠を獲得できるのは、女子の結果を見ても4勝3敗が最低ライン。4勝しても、他国の結果次第では出場権を手にできない可能性もある。最終日に昨年のワールドリーグを制し、世界トップレベルの力があるフランス戦が控えることを考えると、このアジア2連戦で1敗でもするとかなり厳しくなる。1日のイラン戦は、まさに背水の陣だ。

イランにはロンドン五輪予選の後、2勝6敗と大きく負け越している。昨年のワールドカップ(W杯)では2セット先取してから逆転負けしたが、決して勝てない相手ではない。苦手意識も今までよりはなくなっているはずである。ただ、イランもW杯後に監督が交代しており、昨年に比べると明らかにチーム状態はいい。

サーブとブロック

日本はポーランドに負けはしたものの、収穫があった。石川祐希と柳田将洋のサーブの復調である。この2人がサーブの時に取れたブレイクポイントは7点。効果的に相手を崩せている場面も多かった。2人のスパイクも好調で、石川は20本打って14本を決めて決定率70%、柳田は13本中8本を決めて61.54%という高い決定率を残した。これは正念場を迎えるに当たって明るい材料だ。

日本がここまで低調なのがブロック。勝った初戦のベネズエラ戦こそ11本のブロックを決めたが、中国戦では3本、ポーランド戦では2本しかない。ブロックの本数を増やせれば、少しは楽な戦いができる。そのために必要なのは、南部正司監督が就任してから取り組み、昨年のW杯で効果を発揮した「選択と割り切り」の守備だろう。確率の高いところに人数をかけ、それ以外のところはノーマークになってもやむを得ないという思い切った戦略である。

イランのミドルブロッカー陣は弱くはないが、攻撃の軸はやはりサイドアタッカーだ。中でもオポジットに入る10番ガフールは、出場したオーストラリア戦では22本打って59.09%、カナダ戦では36本打って50%のスパイク決定率を記録し、攻撃の核となっている。5月31日のフランス戦には欠場したが、イランのチームスタッフに尋ねたところ「右膝に不安はあるが、問題ない。日本戦に向けての休養だ」と言っていた。日本戦にはコンディションを整えて臨んでくるだろう。状況によっては、このガフールにブロックを集めてつぶしにかかってもいい。サーブで崩すことができれば、よりブロックは絞りやすくなるはずだ。

減らしたい被ブロック

日本の攻撃では、被ブロックの数を減らしたい。ベネズエラ戦での被ブロックは8本だったが、中国戦では14本、ポーランド戦では11本だった。手ごわく、高さのある相手になるほど増えてしまうのは仕方がない面もある。しかし、被ブロックの本数を減らすことでサイドアウトを取れるようになり、終盤の競り合いから勝機を見いだすこともできるようになる。イランのミドルブロッカーは6番ムーサビエラギと9番ゴラミ。ムーサビエラギは身長203センチ、最高到達点362センチと高さがあり、ブロックが硬い。ゴラミは身長195センチと上背はそこまでないが、ブロックの移動が早く、手の出し方がうまい。コースが空いているように見えても、最後に手が出てくるイメージだ。日本のアタッカー陣は、最後までブロックをよく見極めて攻撃することが大事になるだろう。

ポーランド戦ではベンチワークが後手に回ったり、ばたついたりする場面があった。リオに行くためには、イランには絶対に負けられない。選手、スタッフが一丸となって勝利をつかんでほしい。

スポーツ記者

1985年生まれ、大阪府箕面市出身。中学から始めたバレーボールにのめり込み、大学までバレー一筋。筑波大バレー部でプレーした。2008年に大手新聞社に入社し、新潟、横浜、東京社会部で事件、事故、裁判を担当。新潟時代の2009年、高校野球担当として夏の甲子園で準優勝した日本文理を密着取材した。2013年に大手通信社へ。プロ野球やJリーグの取材を経て、2018年平昌五輪、2019年ジャカルタ・アジア大会、2021年東京五輪、2022年北京五輪を現地で取材。バレーボールの取材は2015年W杯から本格的に開始。冬はスキーを取材する。スポーツのおもしろさをわかりやすく伝えたいと奮闘中。

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