欧米の長期金利上昇とともに、政府・日銀によっても円安が促進される恐れ。ドル円は130円台を回復
政府は31日の経済財政諮問会議で骨太原案(経済財政運営の指針)を提示した。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字とする年次目標について原案では明記せず、与党自民党の声に配慮した。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行うことも併記した(31日付ロイター)。
黒字化目標の年度をめぐり、積極財政派の検討本部と財政規律を重んじる推進本部で対立が先鋭化していた。その結果、「財政健全化の旗を降ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」とも記したが、「2025年度」とする年次そのものの記述は見送った。
政府が2025年度の達成時期を明記しないのは、新型コロナウイルスの影響が広がった2020年7月の指針以来2年ぶりとなる。
2025年度に黒字とする年次目標にそもそも意味があるのか、それが達成される見込みはあるのかということはさておき、積極財政派の意見も意識した達成時期を明記せずが、今後、どのような影響を及ぼすのか。
新型コロナウイルスの影響が広がった2020年7月の指針の際は、ある意味致し方がないとの認識であったと思われる。
しかし、今回は外部環境が大きく異なることにも注意が必要である。積極財政派は現在の日銀の積極緩和にも影響を与えてきている。
日米の金融政策の方向性の違いもあり、5月はじめにドル円は一時131円台に上昇した。米長期金利が一時3.2%まで上昇した。
しかし、その後、米国の物価がいったんピークアウトした。9月以降はFRBの利上げはいったん停止かとの見方も出て、米長期金利は一時的に2.7%近くまで低下した。
ところが今度は欧州の物価が記録的な上昇となり、ECBの金融政策の正常化が現実味を帯びてきた。マイナス金利政策も早ければ7月にも解除される見込みとなってきた。そこに今度は、あらためて原油高も加わってきた。
欧州の国債が売られドイツの長期金利は1%台をあっさりと回復した。
米長期金利は3.2%から低下したものの、何度かトライしても2.7%を割り込めずにいた。そこに欧州の物価上昇が意識され、さらにISM製造業景況感指数が市場予想に反して上昇し、米景気の強さを示し、FRBが9月以降も0.5%の利上げを継続するとの見方が強まり、1日の米長洲金利は一時2.95%まで上昇した。
欧米の長期金利が再度、上昇基調となれば、0.25%で抑えられている日本の長期金利との差は歴然となる。このため、金利差による円安が再燃してきた。これによってドル円は再び130円台を回復してきたのである。
さらに政府の財政規律の緩みまで意識されると、あらためて円売りを誘う可能性がある点にも注意が必要となる。
加えて6月2日には10年国債の入札が実施される。10年国債の入札日にも日銀は10年国債の指し値オペをオファーしており、これは財政ファイナンスと認識されてもおかしくはない。
円への信認を揺るがしかねないこともあり、政府・日銀によっても円安が促進される恐れがあることを認識すべきと思われる。