朝日新聞で暗号!?:その真意は何か? バベル状態の原発問題に今必要なこと
■朝日新聞3月28日朝刊、暗号!?
今日(2013.3.28)の朝日新聞を開き、驚いた読者も多いだろう。「朝日新聞が暗号で書いてある」「文字化けの文書をそのまま載せたミス?」などとネット上でも様々な発言が見られた。
この記事は、論壇時評オピニオン上の「あの日から2年 忘れさせる「力」に逆らう」。作家高橋源一郎氏による記事である。
その記事の横に、壊されたバベルの塔のような4つの巨大な建造物。そして、日本語が文字化けしたような奇妙な文字である。「疎通」(CG・小阪淳氏)「現代社会をイメージした作品です」との説明がある。
高橋源一郎氏が書かれているテーマの中心は、原発問題である。そう思うと、この4つの「バベルの塔」は、福島第一原発の4つの原子炉建屋のようにも見えてくる。そう考えると、立ち上る煙のようなものの不気味さが増す。
事故は起きてしまった。問題は、これからどうするかだ。抽象的な理論のやり取りではない。今起きている問題だ。現実の問題だ。しかし、それなのに、この2年私たちは真実を語り合ってきたのか。コミュニケーションが取れていたのかと、高橋氏の記事を読み、再考した。
高橋氏は、終戦直後の教員のことを語る。今までの間違いを訂正し、恥ずかしながらも、謝罪しなければならない。そこには、「自分自身」があったと。だがそれもつかの間であったと。
■コミュニケーションとは
心理学的に言えば、コミュニケーションは、心の交流である。どんなに大量の言葉があっても、心の交流がなければ本当のコミュニケーションではない。一方、たとえ言葉がなくても、見つめあい、手を握り合うことで、心がつながり、コミュニケーションが生まれることもある。
心の交流のためには、真実が必要だ。もちろん、真実を伝えるための何らかの表現手段やレトリックも必要だが、偽りや表面的なきれいごとでは、本当のコミュニケーションにはならないはずだ。
■忘れさせる「力」に逆らう
記事の中ではこんな表現がある。
「「収束」などしていない、「収束」したことにしたい人がいるのだ」「もう震災や原発事故は過去のことだと思っているのでしょうか」
私も、ふくしまの方から聞いたことがある。「みんなの記憶に残っているうちに、ふくしまを復興させたかったが、もう難しいかもしれない」。
記事の中では、震災前から東北の小さな集落に入ったアーティストが紹介されている。一方、高級車に乗ってやってきた人々が語る復興夢物語が、かえって悲しみを生んだ例も紹介されている。
この記事で述べられている通り、過去を忘れさせようとする力に立ち向かう必要があるだろう。高橋氏の記事は、真剣に「本当のこと」を語れと私たちの胸に迫ってくる。楽観的になればよいのではない。
震災前、原発安全神話は語られても、本当のことは語られてきたのだろうか。しかし、それでも電気は必要だと私は思う。震災後、1年も2年もの間、再稼動について、今後のエネルギー政策について、本当のことを互いに語り合い、真実に基づき、心が交流するコミュニケーションがとられて来たのだろうか。
かつては、原発反対派の人はマスメディアに出にくかったという。今は原発容認派が出にくいようにも思える。福島原発事故後の日本は、どのように福島県を復興させ、東北を復興させ、日本を復興させるのだろうか。
■再建できなかったバベル・再建のための真実
聖書に登場するのバベルの塔は、神に近づこうとする傲慢な思いの人類が作り上げる。だが、多くの言語が生まれてしまい、コミュニケーションを失い、意思の疎通を失なった大混乱の中、二度と再建されることはなかった。
しかし、聖書はユダヤ民族(人類)の失敗と悔い改めの歴史だ。何度も立ち上がってきた歴史だ。
その中で、旧約聖書ゼカリヤ書は、破壊された神殿の再建物語である。神殿再建は、並大抵のことではない。問題は山積し、困難が押し寄せる。人々の互いの信頼は失われ、再建は遅々として進まない。そのとき、神は預言者ゼカリヤを通し、再建のためには何が必要かを語っている。それは、古代ユダヤ人だけへの言葉ではない。それは、今の私たちへのメッセージに思えてならない。
「あなたたちのなすべきことは次のとおりである。互いに真実を語り合え。城門では真実と正義に基づき、平和をもたらす裁きをせよ。互いに心の中で悪をたくらむな。偽りの誓いをしようとするな。これらすべてのことをわたしは憎むと、主は言われる。」(ゼカリヤ書8章17、18節)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふくしまと共に歩むために」Yahoo!ニュース個人「碓井真史の心理学でお散歩」
「原発事故が発生したとき、もしもその地域と、住民の命と生活と心を守ることができないとすれば、その一点をもって、人類はまだ原子力を使えるほど進歩していなかったことになるでしょう。」
イースターの心:ちょっとした常識と希望についてYahoo!ニュース個人「心理学でお散歩」
「イースターは、悲しみと絶望に沈んでいる人のための、喜びと感謝と希望の日」