「今の世の中、情報多すぎ」と感じている米国人は2割に留まる
インターネットの普及浸透と、それを用いるツールとしてのスマートフォンの汎用化に伴い、人が扱える情報は多次元化と共にけた違いに増加している。この大量情報化時代に、人々の感性は追いついているのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査機関であるPewResearchCenterが2016年12月付で発表した報告書「Information Overload」(※)から、同国の認識に関して確認していく。
次に示すのはインターネットの普及浸透などで情報量が以前と比べて大いに増えた現代において、情報過多(過剰に過ぎる)を感じると認識している人の割合。全体では2割の人が実感している。
成人の2割に留まり、残りの8割はそう感じていない(他の選択肢は「情報が多いことは問題ない、むしろ好ましい」「分からない」で、後者はごく少数)。過去の回答を紐解くと、2013年夏は18%、2007年冬は24%、2006年春は27%と、ほとんど変化が無い。むしろスマートフォンの普及が進み、情報量が積み増しされた現在の方が、情報過多を覚える人は少なくなっているとの結果が出ている。
属性別では男性より女性、若年層より高齢層の方が情報過多によるプレッシャーを覚える人が多い。18~29歳は13%でしか無いが、65歳以上になると3割以上が実感している。また、世帯年収別では低年収、学歴別では低学歴ほど、情報過多感を覚えている。手元に届く、認識できる情報量は高年収・高学歴ほど多いことは容易に想像できるが、それでもなお低年収・低学歴の方が過度な情報量を体感する人が多いのは、自分に有益となる情報か否かの問題に加え、情報処理の能力(利用できる環境、事前知識や経験など、能力判断の材料は多数存在する)にも関わってくるのだろう。
情報が多量化することで、自分の生活に混乱が生じるのではないかとする懸念も、ほぼ同じような傾向が確認できる。なおこちらの質問では、反する選択肢としては「多量の情報は(それを精査活用することで)自分の生活をよりシンプルに、過ごしやすくさせてくれる」が提示されている。
一部イレギュラーな動きはあるが、大よそ男性よりも女性、若年層よりも高齢層、高年収よりも低年収、高学歴よりも低学歴の方が、大量の情報は自分の生活がカオス化する引き金になるとの懸念を有している。
2つの設問を合わせ考えると、情報化社会の現在においてその情報量に窮屈さを覚える人は、自分に処理しきれない大量の情報が降ってくるので、判断が混乱し、正しい選択ができなくなる、さらにはパニックに陥るとの図式がイメージされる。その流れは多かれ少なかれ誰もが経験しているものであり、納得のいくものであるが、それが多分となっているのか、上手く処理できて便宜性を覚える場合の方が多いのか、その違いが「大量の情報化社会」の波を上手く泳げるか、おぼれてしまうかの違いとなって表れているのだろう。
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※Information Overload
2016年3月7日から4月4日にかけて、18歳以上のアメリカ合衆国居住者に対して電話回線経由で行われたもので、有効回答数は1520人。うち381人は固定電話、1139人は携帯電話(そのうち636人は固定電話無し)。国勢調査の結果などに基づいたウェイトバックが成されている。