岩田規久男教授によるインフレ率を2%にするためには
次期日銀副総裁候補となっている学習院大学の岩田規久男教授によると、「インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70~80兆円にすべきだ。」そうである。これは、あるサイトでのインタビューに答えた記事にあったが、たぶんご本人が答えたものであろうと思う。
ここで岩田教授が2%の物価上昇のために何が必要かを解説している。市場が注目しているのはマネーの量で、市場は新しい枠組みやマネーの量をみながら、これから中期的にどれくらいインフレになるかを判断するとされている。ところで、市場参加者でマネーの量をウォッチしている人は果たしてどれだけいるであろうか。せいぜい短期金融市場に関わっている人の一部だけであるように思われる。
デフレは終わってインフレになると思えば株を買う、円預金をもっていた人が円安をみて外貨を買う、確かにこのような行動は昨年来の円高修正を受けて出ていることは認める。これについては、政府が圧力をかけて日銀インフレ・ターゲットを導入させたことでインフレ・マインドが高まったと、確かに言えなくはない。ただし、日銀はこの間、特に何もしていない。1月の追加緩和についても来年分の話であった。
次に企業にインフレ期待が生まれる、設備投資に動き出し、輸出を増やすための生産を増強する、企業収益が改善すると岩田教授は指摘するが、ちょっと待ってほしい。インフレ期待が生まれると設備投資がなぜ動き出すのか。インフレ期待だけで需要が増えるのか、もう少し私にもわかる説明がほしい。
大事なのはインフレ期待を起こすことであって、貸し出しを増やすことではないとも言っておられるが、確かに企業は200兆円を超える現預金を持っている。しかし、その資金を動かすのはインフレ期待だけで可能なのか。
「足元でインフレ期待は起こっていないが、市場のプロがインフレを期待することで、徐々に実体経済に波及していく。」ともおっしゃるが、市場のプロとは誰で、何を理由にそんな期待を強めるのか。どこかのプロが期待するだけで、実態経済にどう波及するというのであろうか。
インフレ率を2%にするために必要なのが、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70~80兆円にするとのお話であるが、そもそも企業の資金が預貯金に眠っているのと同様に、金融機関の資金が日銀の当座預金に眠っているわけで、その残高が増えるとどのようにして、物価に働きかけるのか、もう少し具体的な説明がほしい。
経済学の教科書には「準備預金が増えたら銀行は貸し出しを伸ばし、マネーサプライが増加する」という説明があったようだが、これは現在ではほとんど通用しない。それ以前に岩田教授は貸出は増やす必要はないと言っている。日銀の当座預金残高が増えれば物価が上がるという理屈がそもそも良くわからない。ぜひこのあたり、日銀の副総裁となられた際に、もう少し詳しくご説明いただきたい。