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パラムーブメント最前線「MEET 9 WONDERS! – わかる・広がるパラスポーツの世界」が始動

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
パワーリフティング体験の様子 写真・P.UNITED

 「P.UNITED」は、パラリンピックから9つの競技団体*が手を取り合い、新たな組織として立ち上がった。共通の課題である練習環境の整備・拡充のためスポンサーを集り、公的補助金に頼らない安定した運営基盤を獲得するために集まり、活動の自立を目的としている。

体験会に訪れた参加者と近い距離で競技を説明する車いすフェンシングの加納慎太郎(LINEヤフー) 写真・P.UNITED
体験会に訪れた参加者と近い距離で競技を説明する車いすフェンシングの加納慎太郎(LINEヤフー) 写真・P.UNITED

 3月22日と23日の2日間にわたり、横浜ランドマークプラザ(横浜市西区)で開催されたP.UNITEDのパラスポーツ体験会「MEET 9 WONDERS!」には、2,041名の参加者が訪れ、パラリンピック、アスリートスポーツのエッセンスをもとにした体験と交流を楽しんだ。

アーチェリーの体験を楽しむ来場者 写真・P.UNITED 
アーチェリーの体験を楽しむ来場者 写真・P.UNITED 

 参加したアスリートたちは一様に、パラスポーツを通じて一般社会とのつながりを深めることが、共生社会の構築に寄与すると自覚している。彼らは、競技と障害の当事者であるという立場から、その魅力と可能性を伝え、支援・参加を呼びかけた。

温もりを感じるアスリートとの距離感!

 車いすフェンシングの選手、加納慎太郎(LINEヤフー)は、数々の国際大会出場経験をもつ東京2020パラリンピック日本代表で、今年8月に開催されるパリ2024パラリンピック出場を目指すトップアスリートである。本イベントについて加納は、「このようなオープンスペースで、買い物のついでに気軽に話を聞いてもらえるのが最大の利点です。9つの競技団体が一堂に会することで、お互いに刺激を受け、大きな力を生み出しています。一つひとつの出会いを大切にし、ファンを増やし、それが活動資金にもつながっていくことが重要だと思います」と話していた。

加納慎太郎(LINEヤフー)と会場を訪れたファンの気軽な記念撮影 筆者撮影
加納慎太郎(LINEヤフー)と会場を訪れたファンの気軽な記念撮影 筆者撮影

 相馬二三世は、車いすフェンシングの新たな挑戦者だ。脳梗塞により左半身に麻痺となり、リハビリのなかで勧められ、パラスポーツ体験会に参加した。そこで相馬は、自分と同じ地域に住むトップアスリートの加納が車いすフェンシングで活躍していることを知り、その姿に触発された。

車いすフェンシングを始めたという相馬二三世。格闘技やボディビルから転身。 筆者撮影
車いすフェンシングを始めたという相馬二三世。格闘技やボディビルから転身。 筆者撮影

「最初は激しいスポーツで自分には無理だと思いましたが、障害を持ちながらも挑戦できる環境があることが貴重であると感じました。実は先日大会に出場し、ボロ負けしたんです(笑)、それでも楽しくて、続けたい。障害をもってスポーツを始める人は、まず競技ということでなくていい、人と知り合うことが大事だと思います。諦めて、誰かに任せていたことも、できることがわかったりコミュニティで情報交換ができます」と話してくれた。5月には陸上競技の砲丸投げに誘われ出場する予定だという。障害を負う4年前まで、レスリングや柔道、ボディビルをやっており、スポーツができることが楽しくて仕方ないという気持ちが伝わってきた。

パラ・パワーリフティングの若手選手の奥山一輝(サイデン化学) 筆者撮影
パラ・パワーリフティングの若手選手の奥山一輝(サイデン化学) 筆者撮影

 奥山一輝(サイデン化学)は、パラ・パワーリフティングの若手選手だ。

「パワーリフティングは、健常者も障害者も腕の力だけで競い合える、そこが魅力的なスポーツです。このようなイベントに参加できることに感謝し、ここでの出会いを通じて、より多くの人々に興味を持ってもらいたいと考えています」と力強く語った。奥山は、昨年はドバイでの世界選手権やアジアパラに出場し日本代表のパワーリフターとして国際的な経験を積んできた。パリへの選考には落選してしまったが、次の2028年のロサンゼルス大会に照準を合わせて気持ちを切り替えていた。

 この2日間、9つの団体が一堂に会し、週末のショッピングモールでパラスポーツ体験会を開催した。様々な障害のあるアスリートが、高いレベルで、多様な工夫をこらして、パラスポーツに挑戦しているそれぞれの取り組みを伝えた。競技団体は東京2020パラリンピックで世界の舞台に立った実績を持ちながらも、大会後は、社会のパラスポーツへの理解と支援をさらに深めるための課題や役割を共有して集まった。

パラ馬術を紹介するスタッフは麗澤大学馬術部の大学生 筆者撮影
パラ馬術を紹介するスタッフは麗澤大学馬術部の大学生 筆者撮影

 P.UNITEDを率いる田中辰美代表は、山口県出身の射撃アスリート、指導者であり、アテネ2004パラリンピック射撃日本代表監督を務めた経験を持つ。現在は、パラ射撃のハイパフォーマンスディレクターとして活躍している。

「競技団体としてはトップアスリートを世界に送り出すことが目標ですが、P.UNITEDとしては、まだそのレベルに達していない選手たちも視野に入れ、広くパラスポーツの魅力を伝えることが私たちの役割です。企業や学校にもアプローチし、パラスポーツを通じて人々が共に豊かになるような触媒となれたらと思っています」と、競技団体の連携が持つ意義について語った。

P.UNITEDを率いる、田中辰美代表 筆者撮影
P.UNITEDを率いる、田中辰美代表 筆者撮影

「MEET 9 WONDERS!」は、東京2020パラリンピック後のパラスポーツの新しい扉を開くイベントだ。多くの人々が、パラスポーツムーブメントの重要性と、交流の楽しさに触れ、関心を深めていった。

 P.UNITEDの連携により、障害のある人々の夢であるパラスポーツとパラアスリートだけが作り出せる「結束」の強さを感じることができた。選手と、競技や障害を支えるすべての人々が協力し合い、パラスポーツを通じて共生社会へと進むために、できることを何でもしようという意気込みに満ちていた。

*P.UNITEDの9つの競技団体:一般社団法人日本車いすカーリング協会一般社団法人日本障害者カヌー協会一般社団法人日本障がい者乗馬協会特定非営利活動法人日本パラ射撃連盟一般社団法人日本身体障害者アーチェリー連盟一般社団法人日本知的障害者水泳連盟一般社団法人日本知的障がい者卓球連盟特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティング連盟一般社団法人パラフェンシング協会 

(校正・地主光太郎)

この記事は、PARAPHOTOに掲載されたものです。

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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