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「好きな人ができた。すぐ離婚して」が許せなかった。6年待たせて別れました~スナック大宮問答集75~

大宮冬洋フリーライター
大阪・石切にて。読者交流宴会の参加者の一人と改めて対談しました。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催150回を超えた。のべ3000人ほどと飲み交わしてきたことになる。
 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***マユミさん(仮名。バツイチ、48歳)との対話***

ほとんど話したことがない男性から、「結婚を前提に付き合ってください」と告白されて

――参加者のみなさんはネット記事などを通して僕のことを少し知ってくれていますが、僕もどんな人が来てくれるのかを把握してからスナック大宮に臨みたいと思っています。マユミさんは<結婚して2年後に、『好きな人と結婚したいから離婚してほしい』と言われて、6年別居してから別れました。自分のプライドとの戦いの無駄な時間でした>という自己紹介文が強烈でした。何歳のときに結婚したんですか?

 32歳のときです。相手は、通い始めたばかりのボクシングジムで知り合った同い年でした。ほとんど話したことがないのに「結婚を前提に付き合ってください」と告白されて、その1週間後には「長く付き合っていた人妻が離婚することになった。彼女には僕しかいないのでこないだの話は撤回させてください」と謝られました(笑)。でも、しばらくしたら「やっぱりあなたと結婚したい」と頭を下げられたんです。

――不穏なスタートですね……。

 ですよね。当時の私には10年ほど付き合っていた恋人がいましたが、結婚の話が出たことはありません。私は結婚に興味があったので、その不思議な彼と付き合ってみることにして、1年間毎日会って大丈夫だと判断して結婚しました。
 でも、彼は本当に変わった人で、友だちがまったくいないんです。結婚式に呼ぶ人も家族以外にはほとんどいないので、両家の招待客のバランスを取るのがすごく大変でした。見た目はカッコいいのに積極性や社交性が欠けている人で、私が友だちと会うこともよく思わず、いつも2人だけでいたがるのです。私は当時、看護師をしていたのですが、彼のために夜勤をしなくてもいい職場に移りました。

常連客の協力を得ているスナック大宮。料理が美味しくて雰囲気のいい個人経営のお店で開催しています。今回は東大阪市石切にお住まいの方に「アーリーズカフェ」を予約してもらいました。(参加者提供)
常連客の協力を得ているスナック大宮。料理が美味しくて雰囲気のいい個人経営のお店で開催しています。今回は東大阪市石切にお住まいの方に「アーリーズカフェ」を予約してもらいました。(参加者提供)

――マユミさんもかなり努力をしたのですね。

 でも、結婚2年後ぐらいから彼の様子がおかしくなり、「好きな人ができたので別れたい」と言われました。確認はしませんでしたが、おそらく例の女性との関係が切れていなかったのだと思います。
 私は実家に戻ったものの、愛情ではなくプライドが離婚を許しませんでした。いろんな人に結婚を祝ってもらい、名字も変えたのに……。相手の思うように離婚してやるものか!という気持ちにとらわれていました。恨みながら別居していた6年間は無駄な時間だったなと今では思います。

離婚の傷心からの長いリハビリ中。50歳を過ぎたらほっとできる関係を築きたい

――最終的にはどうしたのですか。

 結局、弁護士に入ってもらって調停離婚をしました。慰謝料は値切られて200万円です。でも、専門家はさすがですね。私一人のときはドロドロした怒りの感情にとらわれて何も進みませんでしたが、弁護士さんがサクサクと進めてくれてあっという間に決着したんです。私も医療・福祉の専門職なので、仕事をもっとがんばろうと思えました(笑)。

――プライベートが苦しいときは仕事が救いになったりしますよね。今はどんな働き方ですか?

 ある公的機関でやはり医療福祉系の専門職として働いています。母の具合が悪いので実家を離れるわけにもいかず、片道2時間半もかけての電車通勤です。でも、上司のパワハラがひどいので退職しようかと思っています。大声で恫喝すれば周りの人は言うことを聞くと信じているような人です。
 スナック大宮でも話題にしたところ、関東から来ていた男性に、「その上司の言動をメモに残しておいたほうがいいよ。本人は自覚なくやっていることなので、何かのときに役立つから」とアドバイスしてもらいました。さっそく実践しています。メモ帳の名前は「復讐ノート」です(笑)。

――スナック大宮のような酒場には多様な人が利害関係なく集まるので、意外な角度から良き助言を得られたりしますよね。まったく見当違いなことを言われる可能性も高いですけど(笑)。結婚については話せましたか?

 がんばって婚活をして幸せな結婚ができたという方もいて、あの中では私が一番ちゃんと考えていないと感じました。私はまだ(離婚で受けた傷心の)リハビリ中なんです。結婚に窮屈なイメージを持ってしまっています。でも、ほっとできるような関係性への憧れはあるので、50歳過ぎたあたりでもう一度結婚できたらいいなと思っています。

*****

「負の感情にとらわれていると自分が損をする」と気づいただけでも無駄ではありません

 以上がマユミさんとの対話内容だ。依存したくせに浮気をした夫への怒りに駆られて6年間も無駄にしてしまった、と反省しているマユミさん。冷静な専門家に介在してもらったことで事態が一気に前に進んだと振り返っていたのが印象的だった。30代のほぼすべてを費やして現在も心の傷が残ってしまっているようだが、「負の感情にとらわれていると自分が損をする。他人の手を借りてでも解決するべき」と気づいただけでも無駄ではなかったと思う。上司への「復讐ノート」をつけている職場も改善が見込めないのであれば早めに離れるべきかもしれない。
 嫌な人間関係にも我慢するのが大人だと言う人もいるが、筆者はそう思わない。日常的に接する人とは良好な関係を築くように努力するのが大人だし、それがどうにもできないような場からは全力で逃げる権利もあると思う。人生は短く、一度きりだ。尊敬も感謝も感じないような人とズルズルと関わり合っているような暇はない。
 家庭や職場という重要な居場所は簡単には捨てられない。あまりに日常すぎて視野が狭まり、どんなに居心地が悪くても固執してしまいがちだ。でも、思い切って外に出ると、世の中には気分良く付き合える人たちがたくさんいることに気づく。そういう人たちと支え合い、力を発揮し、誰かに喜んでもらうために自分は生まれてきたのだと思えたりする。

スナック大宮は全国各地の良き飲食店で開催しています。写真のメガネ男性が筆者です。今月は東京・大塚の蕎麦店で開催予定(ありがたいことに満席)、11月は東京・西荻のアジア食堂で開催予定です。(参加者提供)
スナック大宮は全国各地の良き飲食店で開催しています。写真のメガネ男性が筆者です。今月は東京・大塚の蕎麦店で開催予定(ありがたいことに満席)、11月は東京・西荻のアジア食堂で開催予定です。(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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