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社会の負担か否か、尊敬されているか…シニア層に対する国ごとの価値観の違いは!?

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 増加する高齢者への社会全体の思惑は国ごとに違いはあるのだろうか

先進国で医学の進歩やインフラの整備、社会秩序の安定化の恩恵を受け、高齢社会化が進行している。それに伴い社会全体としての高齢者への接し方、考え方も多種多様な意見が持ち上がることになる。世界ではどのようなとらえ方が一般的なのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測しているWorld Values Survey(世界価値観調査)から、いくつかの視点を抽出し、その実情を探る。

次以降に示すのは、高齢者の存在を論点の対象として各命題を提示し、その内容にどのような感想を持つかを答えてもらい、回答傾向を数字化(DI化)したもの。強い賛同・同意をプラス2、同意をプラス1、非同意をマイナス1、強い非同意をマイナス2とし(選択肢には他に「分からない」がある。また結果論として「無回答」も発生する)、全体の傾向を推し量る。例えば全員が同意を示したらプラス2.000、全員が反意を見せればマイナス2.000となる。大よそ中庸な考えならばプラスマイナスゼロと見れば良い。

最初は「最近お年寄りは尊敬されていない、敬意を払われていない」と思うか。同意な人が多ければ大きなプラス値となる。

↑ 「最近お年寄りは尊敬されていない」と思うか(強く同意=+2、同意=+1、非同意=-1、強く非同意=-2)(2010-2014年)
↑ 「最近お年寄りは尊敬されていない」と思うか(強く同意=+2、同意=+1、非同意=-1、強く非同意=-2)(2010-2014年)

マイナス値なのはエジプト、フィリピン、ドイツの3か国のみ。その他はすべてプラス、つまり「最近シニア層はあまり尊敬されていない」との印象を持っている。これが単に社会全体の風潮としてなのか、若年層から中堅層の人たちがぞんざいに扱っている実情を意味しているのか、それとも高齢層が尊敬に値する行為をしていない結果だと思っているのかまでは分からない。ともあれ結果として、「尊敬されていない雰囲気」を感じている人が多い次第。

特に値が高いのはルーマニア、韓国、ブラジル、スロベニアなど。日本は比較的高く、今件対象国の中では6番目。どちらかと言えばアジア地域では低めの値がが出ているが、日本と韓国は別格なようだ。

続いて行政周りの話。高齢者は知識・経験の面で豊富な能力を持つ一方、身体的には劣る場合が多く、行政面でサポートをする必要性が出てくる。社会保障面での優遇や、年金制度などが好例。それらの恩恵に関し、不公平なレベルのものにあるのか否かを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 高齢者は政府から不公平な程の恩恵を受けている(強く同意=+2、同意=+1、非同意=-1、強く非同意=-2)(2010-2014年)
↑ 高齢者は政府から不公平な程の恩恵を受けている(強く同意=+2、同意=+1、非同意=-1、強く非同意=-2)(2010-2014年)

大よその国がマイナス、つまり否定的な意見で占められている。ドイツやブラジル、ウクライナなどではとりわけ高い。他方プラス値を示しているのはフィリピン、タイ、香港の3か国。中国もプラスマイナスゼロと微妙な領域。複数面での解釈は可能だが、少なくとも現状では高齢者が受けている恩恵は不公平ではないとの考えが支配的。

日本はマイナスには違いないものの、シンガポールや台湾、韓国同様に小幅な下げ幅に留まっている。意見は均衡に近い状況なようだ。もっとも日本の場合は他の設問同様「良くわからない」、つまり意見留保の選択者が多いのも特徴(37.6%と1/3を超えている)。

最後は「高齢者は社会の負担である」との意見。

↑ 高齢者は社会の負担である(強く同意=+2、同意=+1、非同意=-1、強く非同意=-2)(2010-2014年)
↑ 高齢者は社会の負担である(強く同意=+2、同意=+1、非同意=-1、強く非同意=-2)(2010-2014年)

大よそ否定的、つまり高齢者を「社会の上で足を引っ張る存在」としては認識していないのが大勢ということ。特にキプロスやオーストラリア、ブラジルなどではその傾向が強い。他方台湾やポーランド、スロベニアなどではやや低め。日本はマイナス1.015と、単純計算の上では全員が「社会の負担では無い」とそれなりに認識している結果となっている(ただし「良くわからない」を選択した人は16.0%と諸国中最多の値を示している)。

各国の高齢化の進行度や社会保障の対応状況、歴史的背景や社会文化などの違いも多々影響を及ぼしているが、現時点では大よそ「高齢者が受けている恩恵は不公平なものでは無い」「尊敬はそれなりに受けている」「社会の足を引っ張るような負担では無い」が共通認識のようだ。

これが5年経過した次の調査結果となると、どのような変化を見せることになるだろうか。各国とも高齢化が進行し、経済社会の仕組みにも変化が見えるのは間違いなく、人々の心境にも違いが見えてくることが予想される。高齢化が進んでも今の心境を維持できるのか。大いに注目したいところだ。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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