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スタバなどのカフェでパソコンをWi-Fi接続して仕事をしている人は、何をやっているのか?

横山信弘経営コラムニスト
カフェでそんなに長時間、何の仕事をする必要があるのか?(写真:アフロ)

「働き方改革」を極端に捉えるべきではない

ここ1~2年で、「ダイバーシティ」「ワークライフバランス」「働き方改革」といった言葉が、やたらとネットや新聞紙上の記事で出てくるようになってきました。これまでの日本人の働き方は古典的であり、生産性が悪く、クリエイティブでもない、家族にも優しくないし、人生の幅を狭めるだけ、だから根本から見直そう……といったムーブメントに影響され、登場した言葉たちと言えるでしょう。

私は現場に入る経営コンサルタントですから、生産性が悪い仕事のやり方、長時間労働が前提となっている組織風土には強い姿勢で改革を促します。

しかし、よくニュースで取り上げられる記事の内容は極端すぎて、ほとんどの企業の「働き方改革」の参考にはならないことも知っています。ニュースはニュースであり、現場は現場です。特にまだ社会人になっていない就活生たちには、「スターバックスなどのカフェでパソコンをWi-Fi接続して仕事をしている人」が「働き方改革」を体現している人だと思ってもらいたくないし、間違っても憧れなどを抱いてもらいたくないと考えています。

たとえば、あるIT企業のこんな事例が記事となって紹介されたことがあります。

申請さえすれば「時間や場所に縛られることなく、好きな時間に、好きな場所で働いてもよい」という方針を打ち出したところ離職率が大幅に下がった、という事例です。

自由な時間に、自由な空間で働くことができる。そう聞くと、だいたい想像するのが、「スターバックスなどのカフェでパソコンをWi-Fi接続して仕事をしている人」。私自身もよく利用するため、このようなノマドワーカーをカフェでは頻繁に目にします。

私がカフェでパソコンを開いて仕事をする場合は、講演や研修など、出張中に時間があるときのみ。通常勤務のときは、普通の会社員と同じように定時出社し、夕方の6時までオフィス内に留まります。「アイデアが煮詰まったから、ちょっとカフェでも行ってくる」などとオフィスを抜け出すことはありません。

また、カフェでする仕事のほとんどが「メルマガ」「コラム」「書籍の原稿」などの執筆作業です。確かに、誰にも邪魔されず、コーヒーを飲みながらの時間は、創作に適している気がします。ただ、カフェでないとより良い創作物ができないか、というと、そうでもありません。たまたまカフェにいる時間のほとんどが執筆の時間だ、という結果論にすぎないわけです。これが私のケースです。

カフェでする仕事は2種類しかない

私は取材を受けるとき、ホテルのラウンジやカフェを利用することがほとんどです。

そのせいもあり、フリーランスのジャーナリスト、ライター、デザイナー等が、そのような場所をうまく活用して仕事をすることを知っています。しかし、一般的な会社員が「働き方改革」だのと称して、カフェなどでパソコンを開いて何をするのでしょうか。

以下2つにしか、大別できないと考えます。

■ 執筆、デザイン、コーディング等の「生産作業」

■ メール処理や資料作成などの「間接コミュニケーション作業」

つまり、生産か間接コミュニケーションの作業に限られるわけです。

生産作業であれば、まずほとんどがフリーランスの人、もしくは特殊な環境で働いている人です。たとえば一般的なIT企業のプログラマーがカフェでコーディング作業ができるかというと、セキュリティや生産性の面において、所定のオフィス内でしたほうが理にかなっています。また、たとえオフィスワーカーといっても、経理や人事、労務の仕事に従事している人がカフェで仕事をできるかというと、ほぼ不可能と考えるべきでしょう。

それに、日本の就労人口総数と比較して、上記のような「パソコンのみで生産作業に従事する就労者」はどれぐらい存在するのでしょうか。きわめて少ないと容易に考えられます。

ということは、「カフェでパソコンをWi-Fi接続して仕事をしている人」のほとんどは、メール処理や資料作成などの「間接コミュニケーション作業」をしている、と言えます。ネットに繋いで「テレビ会議」などをしている人もいます。これも生産作業ではなく、あくまでも「間接コミュニケーション作業」であり、企業活動において、新たな付加価値を生み出す作業ではありません。

現場に入ってコンサルティングをしていると、この「間接コミュニケーション作業」ばかりやっている人が、いかに組織全体の業務を非効率化させているのかがわかります。企業内にある、これらの間接コミュニケーション作業を半減させても、ほとんどのケースで売上や利益がダウンすることはありません。それどころか、かえって生産性がアップし、収益を押し上げ、労務上の問題を解決するケースが多々あるのです。

パソコンの前に座り、メールを処理したり、管理資料やプレゼン資料を作ったりしていると、あたかも何か「仕事をしている気」になるものです。ただそういう「気」になるだけであって、ほとんどのケースは不必要な作業なのです。

カフェでのパソコン作業に憧れを抱くべきではない

コミュニケーションの基本は、当然のことながら「直接」やるものです。面と向かって話をするか、せめて電話です。

リアルにインタラクティブな会話をしなければ、話が噛み合わなくなったときの副作用が大きすぎるのが理由です。カフェの中で打合せをしたり、電話をするといった「直接コミュニケーション作業」ならともかく、パソコンを使っての「間接コミュニケーション作業」ばかりしている人がいるとしたら、適当に短時間で済ましておいたほうがよい。

今の時代、「スターバックスなどのカフェでパソコンをWi-Fi接続して仕事をしている人」に憧れを抱く若者がいるそうです。

とんでもない話だな、と思います。フリーランスの人なら責任をもって自己管理をしているでしょうが、一般の会社員であるなら「ああいう人にはなるな」と私は言いたいぐらいです。何らかの待合せの時間や、外出中の隙間の時間にカフェに入ることはあっても、滞在時間が1時間を超えるのはおかしな話。ましてや「働き方改革」の一例として登場するのは、かなり珍妙な話であることを、就活生や若い人は知っておいてもらいたいと思います。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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