父子世帯の実情をさぐる
2015年時点で父子世帯数は8.4万世帯
父子世帯(※)とはさまざまな理由で母親が同一世帯におらず、父親と子供のみで構成される世帯を指す。父子世帯では子供の世話や金銭面でのやりくりなど多様な点で生活上の厳しさが生じており、母子世帯と比べて世帯数は少ないものの、解決すべき社会問題の対象として注目を集めている。今回は国勢調査の最新版となる2015年分の統計公開値をもとに、父子世帯の実情をいくつかの観点から確認する。
2015年時点の父子世帯数は8万4003世帯。その世帯を一番小さな子供の年齢別に仕切り分けしたのが次のグラフ。父「子」世帯なので子供のいない世帯は該当しない。また、子供が20歳以上の場合も当てはまらない。
一般的には子供が幼いほど手間はかかるもの。ゼロ歳児の子供がいる父子世帯は166世帯、1歳・2歳は1142世帯。3~5歳では4867世帯。母子世帯と比べると1ケタ少ない世帯数だが、確実に存在していることに違いは無い。子供の人数はともかく、最年長の子供が6歳未満(一般的には小学校に上がる前)の世帯に限ると3327世帯となる。全父子世帯に占める比率は4.0%でしかないが、子供の世話ではより苦労が生じていることがうかがえる。
その子供の数だが、父子世帯では6割近くが子供1人世帯となっている。
子供が2人の世帯は全父子世帯のうち1/3強、3人以上は1割近く。金銭面でも世話の上でも、大変難儀しているに違いない。
父子世帯における母親との関係は
父子世帯では原則として生物学上の母親が存在していたことになる。その母親との関係を確認したのが次のグラフ。
3/4が離別(離婚などによるもの)、死別は2割、未婚は4.9%に留まっている。
これを父親の年齢階層別に見たのが次のグラフ。
未成年の父親の場合は半数が未婚によるものだが、これは統計上のぶれが生じている可能性がある(該当年齢階層における世帯数は4)。それを除いて考えると、離別が大半で未婚や死別は少数。年上になるに連れて未婚状態は減り、離別も20代後半をピークに以降は減り、死別が増えていく。母子世帯の傾向とは異なり、大よそ20代前半以降は比率の上で未婚と離別が減少、死別が増加していくのは、夫側が子供を引き取る・引き取らざるを得なくなる状況によるものだろうか。
該当世帯の周辺環境や経済的な立ち位置にもよるが、母子世帯や父子世帯は子育てなど生活面で大きな負担を背負うことになる。子供が、手間がかかる幼少時の場合は特に生活がハードなものとなる。父子世帯は母子世帯と比べると金銭面では恵まれているかもしれないが、子育ての上ではより難儀なものとなることは容易に想像ができる。
他方、児童手当や児童扶養手当、児童育成手当をはじめ、公的な支援策も多数存在している。知らずに申請をしなければ享受できないサービスも多々存在するため、専門家に相談をするなり、積極的に調べて申し込みを行い、少しでも状況改善を試みてほしいものである。厚生労働省でも【母子家庭等関係】のページで、様々な支援内容を説明している。ページ名は「母子家庭等関係」とあるが、ページに掲載されている各種資料は父子世帯の話も併記されていたり、「ひとり親家庭」などの表現を用い、父子世帯へのサポートの説明も行われている。
これらの支援を受けるにあたり、気後れする必要は無い。整備されている制度についてはすべて、受ける権利を持っているのだから。
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※父子世帯
国勢調査上の定義では父子世帯の定義は「未婚、死別又は離別の父親と、その未婚の20歳未満の子供のみから成る一般世帯」。世間一般で見聞きされる妻との死別や、離婚による離別以外に、法律上の婚姻関係にない男女間で産まれた子供(非嫡出子)を父親側が引き取った結果として生じる世帯も含まれる(父親自身は子供を産めない)。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。