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トライアンフ「トライデント660」試乗インプレ 小粋で人当たりのいい相棒。初めての外車に最適だ!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
TRIUMPH TRIDENT660 画像出典:Webikeニュース

ミドルネイキッドの新たなスタンダード

トライデント660は世界的に人気が高まっている中間排気量クラスにおける新たなスタンダードを目指す新世代ロードスターである。

トライアンフの歴史上に名を刻むトライデント。1960年代~70年代に活躍した3気筒レーサーが有名で、5度のマン島TTレース優勝を誇っている。1990年代には750ccと900ccの並列3気筒を搭載したロードスターシリーズとして新生トライアンフの礎を築いた。ちなみにトライデントとはギリシャ神話の海神が持つ三叉槍のこと。まさに3気筒マシンらしい呼び名だ。

エンジンはストリートトリプルSをベースに新開発された水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ660cc。67種類のコンポーネントを新たに投入し、最適化された6速ミッションとともにスリップアシストクラッチを標準装備。最高出力81ps/10,250rpm、最大トルク64Nm/6250rpmと扱いやすさ重視のチューニングとしつつも、力強いリニアなパワーと全域にわたる豊かなトルクバランスが特徴となっている。スタイリッシュな新型サイレンサーによる独特のハスキーなトリプルサウンドも魅力だ。

現代的ミニマルフォルムに伝統のDNAを注入

シャーシも新設計でストリートトリプル系とは異なるスチール製フレームとスイングアームを採用。前後サスペンションにはSHOWA製セパレートファンクション倒立フォークとし、プリロード調整付きのリンク式モノショックを装備。ブレーキにはNISSIN製ダブルディスクにABSを標準装備とし、軽量の鋳造アルミホイールにミシュラン「ロード5」を標準装着するなど堅実な仕上げ。幅広いシチュエーションでのオールラウンドな走りの性能を実現している。

デザインもユニークだ。筋肉質な14ℓタンクにクラシカルな雰囲気の7インチフルLEDヘッドライトを装備するなど、現代的ミニマルフォルムの中にトライアンフ伝統のDNAを織り込んだ独自のスタイルを表現。さらにカスタム心を刺激する45種類の豊富なアクセサリーも用意されている。

現代的な電子デバイスも盛り込まれ、ライドバイワイヤによる「ロード」と「レイン」の2つのライディングモードと切り替え可能なトラコンにABSを標準装備。コネクティビティ機能にも対応した新型TFTディスプレイを装備するなど、シンプルな中にも機能とデザインを融合した今の時代感にフィットしたモデルとなった。

■TRIUMPH TRIDENT660 動画インプレッション

ライポジはコンパクトで取り回しも楽々

まず見た目が新鮮だ。鋭い2眼とシュッと尖ったデザインのストリートトリプル系とはひと味異なるスタイルが印象的。ヘッドライトもLEDなのにクラシカルな丸型で、タンクも往年のカフェレーサーを思わせる凹みを入れたタイプ。車体の前後を切り詰めた、ある意味でストリートトリプル以上にコンパクト化されたマス集中に徹したデザインになっている。

ライポジはかなりコンパクトでハンドル位置も近く自然で疲れにくい。シート高は805mmと標準的だが、タンクまわりがスリムでサスペンションの初期ストロークがソフトなことも相まって足着きも悪くない。大型バイクと思えないほど取り回しも楽々だ。

公道の走りにフォーカスした超フラットトルク

そして、トライアンフと言えばやはり3気筒エンジンだ。何故765ではなく660なのか?その問いに対して、開発責任者のスティーブ・サージェント氏は「新世代ライダーがトライアンフの世界にエントリーするために最適なユニット」と語っていた。

ストリートトリプルSの3気筒ユニットがベースになっているが、大半のパーツを新たに作り直し、ピークパワーは若干抑えつつもその分の余裕を低中速トルクにふったという。

実際に乗ってみるとよく分かるが、平らな大地を盛り上げたような台形トルクが特徴で、4気筒のような急上昇ではなく、どこまでもフラット。最大トルクの9割をほぼすべての回転域で発揮するというユニークさだ。まさに公道の走りにフォーカスしたエンジン特性になっている。

軽快だが安定したフレンドリーな乗り味

もうひとつ、印象的なのが穏やかなスロットルレスポンスで、コーナー出口で開けていく場面でもドンツキが出ないので安心して加速できる。ライドモードは「レイン」と「ロード」が選べるが、どちらも穏やかで手の内感がある。

ハンドリングも軽快だが安定している。車重190kgを切る軽量ボディでホイールベースも短いが、一方がフォークも寝ていて安定成分であるトレール量が長めに取られているのが理由と思う。クルッと曲がる回頭性の良さとともにフロントにねっちりした接地感も併せ持っているのだ。あえて、スチール製のフレームとスイングアームを採用していることも奏功している。コストバランスもあるが、乗り手に優しいフレンドリーな性格なのだ。

もうひとつ、ポイントは足まわり。ショーワ製の倒立フォークとリンク式モノショックにブレーキも前後ニッシン製を装備。日本製なので乗り味もどことなく親しみがある。特別に高級パーツで固めている訳ではないが信頼できる乗り味と言える。トラコンも介入タイミングが早く、必要なときに即サポートしてくれるので安心だ。

トライデント660は実にトライアンフらしいモデルと思う。歴史と伝統を重んじつつも新しいものは取り入れていく英国車らしい仕上がり。そして、この走りとグレード感を持たせつつ100万円を切るプライスで実現したのは拍手ものだ。国産車からの乗り換えや初めての輸入車としても是非おすすめの一台だ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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