20kW超の電動バイクは大型二輪の扱いに!? 乗れる免許はどうなるのか!?
12月から道交法が改正される
電動バイクの区分が変わりそうだ。
先月22日、警察庁が発表した「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」の中で電動自動二輪車に関する区分についての改正案が提示された。それは「定格出力が20.00キロワットを超える原動機を有する自動二輪車を大型自動二輪車とし、普通自動二輪車と大型自動二輪車を定格出力により区分する」というもの。
定格出力によって区分される電動バイクは現在、0.6キロワット(kW)以下は原付(原付一種)、1kW以下は小型限定普通二輪(原付二種)とされ、1kW超は普通自動二輪(軽二輪)の扱いとされてきたが、今後は20kWを超える車両は大型自動二輪の扱いに変更される見込みだ。施行は令和元年(2019年)12月1日から予定されていて、警察庁では改正案についてのパブリックコメントを募集している。
取るに足らない存在だった電動バイク
背景にあるのは、最近の電動バイクの著しい性能向上だ。電動バイクといえば、かつてはスクーターやモペットのような小型で非力なコミューターが中心だった。中国などでは深刻な大気汚染に対する国策として早くから電動化が進み、上海でも10年以上前から電動化された自転車やスクーターが街中を走り回っていたが、世界一厳しい排ガス規制と公共交通インフラが進んだ日本では今まで電動バイクが入り込む余地はなかった。
もちろん、今までにも電動化の芽がなかったわけではない。2000年代に入り国産大手メーカーからもEV-neo(ホンダ)、EC-02/03(ヤマハ)、e-Let’s(スズキ)などの原付タイプが相次いで発表されたが、従来の原付スクーターに取って代わることはなかった。それ以外は一部の輸入車か、国産スタートアップ企業が細々と作っていた程度で、電動バイクは言ってみれば取るに足らない存在だったのだ。
高性能電動スポーツモデルの時代がやってくる
それがここ数年で様相が大きく変わってきた。今年からMotoGPと併催されているMotoE選手権やマン島TTにおけるTTゼロクラスを見るまでもなく、電動バイクは年々性能を向上させている。
ストリートモデルでも、アメリカのLightning Motorcycle社が世界最速の電動バイク「LS-218」(2011ボンネビルにおいて215mph=約346km/hの電動バイクによる世界最速記録を樹立)の公道バージョンを2014に発売。今年に入り、さらに価格と性能をバランスさせた新型の「Strike」を発表している。
またスクーターブランドとして有名な台湾のKYMCOも、昨年のミラノショーEICMA2018で電動パワーユニットを搭載したスーパーバイク「SuperNEX」を初披露。今年の東京モーターサイクルショーでも展示され、未だ開発段階ではあるが、6速ミッションを搭載し0-100km/h加速が2.9秒、0-250km/hでも10.9秒で到達する性能を誇示していたことは記憶に新しい。
そして、極めつけは2019年中に量産市販車として発売が開始されるハーレーダビッドソン初の電動バイク「LiveWire」だろう。
7月に米国で国際試乗会があり実際に乗る機会を得たが、0-100km/h加速3.0秒というガソリン車でいえば1000ccスポーツモデルに匹敵するパフォーマンスはもちろん、クラッチやシフギヤチェンジのいらないイージーな操作と静かでクリーンな乗り味に感銘を覚えた。価格もこなれて充電インフラさえ整えば、一気に大型スポーツバイクにも電動化の波が押し寄せる予感を感じたのだ。
免許区分も当然変わるはず!?
話を戻して、今後は定格出力20kWを超える電動バイクは大型自動二輪扱いになるはずだが、多くのユーザーの関心事は免許区分はどうなるかということだろう。前述の内閣府令の中では免許区分の改正には言及していないが、普通に考えれば今後は車両区分に相当する免許が必要になるのも必然と思われる。
これを否定的にとらえる人もいるかもしれないが、自分は当たり前のことと受け止めたい。何故なら電動バイクの性能がすでに従来のガソリンバイクを凌駕するレベルに近づいているからだ。時代とともに交通環境や乗り物が変われば、それを統制するルールも変わっていくのは当然のこと。かつて、ナナハンにノーヘルで乗れた時代もあったが、それがどんなに無謀で危険なことだったかは想像に難くないはず。ライダーや市民の安全を守るための法改正と思えば納得もいくはずだ。政府が先を見越して本腰を入れたということは、見方を変えれば電動バイクがようやく市民権を得たということだろう。悪くない話題だと思う。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。