愛人の「トップ女優」まで粛清…金正恩政権で政治犯収容所が復活
いったんは閉鎖された北朝鮮の管理所(政治犯収容所)が、金正恩政権の誕生をきっかけに復活させられていたとの情報が出ている。さらに、縮小されたとされていた別の収容所は、同様の理由で規模が拡大したという。
政治犯収容所の事情に詳しい北朝鮮内部情報筋は今月初め、韓国デイリーNKに対し、「解体された17号管理所(平安南道价川市)は2014年11月、元帥様(金正恩氏)の方針によって復活させられたものだ」とし、「元帥様時代の第一歩が踏み出されたのと同時に、粛清された人々とその家族、親戚などが大量に増え、再開が必要になったのだ」と伝えた。
韓国政府の統一研究院は2013年に発表した「北朝鮮政治犯収容所」報告書で、17号管理所は1983年頃に閉鎖されたと明らかにしている。その後、同管理所の運営が再開されたことが脱北者らの証言でわかっていたものの、再開に至る経緯は判明していなかった。
情報筋は「新しい首領が誕生すれば規律も新しくなり、既得権勢力も交代する」と説明。故金正日総書記の取り巻きによって占められていた権力中枢が、金正恩氏の「親衛隊」によって取って代わられる過程で粛清が起きたということだ。
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情報筋はまた、「首領様(故金日成主席)から将軍様(金正日氏)に変わる時は先軍政治が始まり、軍保衛局の管理所と鍛錬隊(軽犯罪者刑務所)が拡大し、その次に管理所が拡張された」としながら、「これと同じ脈絡で、元帥様(金正恩氏)時代にふさわしい規律と内部綱紀確立のために新しい管理所が必要になった」と説明した。
情報筋によれば、一時は縮小されていたとされる平安南道北倉(ピョンアンナムド・プクチャン)の18号管理所も、金正恩政権の誕生後に規模が拡大したという。
「18号管理所は、2013年以前には、収容者が減って規模が縮小していた。しかし『現代宗派事件』で再び収容者が増えた」(情報筋)
現代宗派事件とは、2013年12月に金正恩氏の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長が国家転覆陰謀罪で処刑された事件を指す。
張成沢氏は一時、北朝鮮の「実力ナンバー2」とされ、金正恩氏の後見役でもあった。しかし、その増長を嫌った金正恩氏は張氏を排除するとともに、彼の「一派」と見なされた人々をことごとく粛清した。その数は1万人以上とも言われる。
その中には張成沢氏の愛人だったかつてのトップ女優や、張成沢氏との関係者の息子に嫁いだ人気女優らも含まれている。
18号管理所の拡大は、張成沢氏と関係のあった幹部やその家族が大挙収容され、その数があまりにも多かったことで、一般国民に知れ渡った側面があるということだ。