電気飛行機が英仏海峡を飛んだ
フランス時間で先週の金曜日7月10日に英仏ドーバー海峡を電気モータの飛行機が飛び渡った、というニュースが入ってきた。電気自動車ならぬ電気飛行機である。リチウムイオン電池と強力なモータでプロペラを回す。化石燃料を使わない環境に優しい飛行機となる。欧州のエアバス社が電気飛行機で海峡を渡った。
英国ケント州のリッド(Lydd)空港を飛び立ったエアバス社の電気飛行機は、フランスのカレー(Calais)空港に着陸した。全長20フィート(約6m)、重量1300ポンド(585kg)の二人乗りの機体だという。エアバス社の飛行に対して、パイロットの安全を優先するため、救援チームのヘリコプターが帆走飛行し、救援高速船が海峡を航行した。
今やさまざまな飛行機会社が電気飛行機の開発競争に入っているという。エアバス社は、今回二人乗りの電気飛行機というよりは、ハイブリッド飛行機を開発し、もっと多くの人間を運べるようにしたいと語っているとAP通信は報じた。
これまでは、航空機で使われた技術が自動車に使われてきた。飛行機という巨大な機体を動かすために電気モータを多数活用してきた。例えば、パワーステアリングのように地上を走行する場合のハンドルは、クルマに使われるようになってきた。X-by-wireと呼ばれる技術はまさに飛行機技術がクルマに入ってきたようなもの。例えば、ステアリング-バイ-ワイヤーは、元々飛行機技術からきている。操縦桿で飛行機の向きを変える時に操縦桿からモータ駆動で補助翼を動かす。この技術はまもなくクルマに入ってくるだろう。
モータとエンジンの両方を使うハイブリッドエンジンは、飛行機ではなくクルマが先行した。このクルマの技術が飛行機に入っていくのである。飛行機技術がクルマに入るのではなく、クルマ技術が飛行機技術に入るという、技術の反転現象はすでに起きている。エレクトロニクスの技術は軍から民への展開だった。コンピュータや半導体はもともと軍事産業から始まった。スマホで使われている無線技術もインターネットも軍事技術の民生応用だ。技術は軍が先で民が転用するという歴史だった。
しかし、今は軍でも反転現象が起きている。高集積半導体技術やブラウザ技術、液晶ディスプレイ技術、LED照明などは民生先行で立ち上がった。今やこういった技術は民から軍へと応用されている。
自動車でもガソリンエンジンからハイブリッドカーへ進んだように、内燃エンジンの飛行機もハイブリッド飛行機へと今後15年のうちに実用化が始まるとエアバスは見ている。民から軍への応用展開は、むしろ軍事予算が減った平和な時代を象徴しているのかもしれない。
(2015/07/12)