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人生に疲れたら一人旅へ 1泊2日の「ソロ温泉」には10万円の価値がある!

高橋一喜温泉ライター/編集者

忙しない現代社会で生活していると、「時間に追われている」という感覚に襲われる。そんな気の休まらない環境で過ごしていると、心身とも疲労が積み重なっていく。

「今の生活に疲れたな」と思ったら、ソロ温泉に出かけてみてはいかがだろう。

高騰する「プライベートの時間」

新聞を読んでいたら、こんな見出しが目に入った。「自分時間の価値 高騰する背景は」という、編集委員・森川暁子氏による記事である(2022年2月20日付『読売新聞』)。

『セイコー時間白書2021』の中にある、自分のオンタイム(仕事や学校など)、オフタイム(プライベート)1時間の値段はいくらか、という設問について触れている。

記事によると、「オンタイムの値段は2017年以降、4000円前後であまり変化がないのに、オフタイムの値段は約6300円から1万3000円に倍増している」という。つまり、自分のプライベートの時間を貴重に感じる人が増えているというわけだ。

時間のメリハリを失う「テレワーク」

ITやデジタルツールの発展によって、たしかに生活は便利になり、効率的に物事を進められるようにはなった。だが、その分、プライベートの時間がどんどん浸食されているように感じる。

たとえば、メールやSNSなどは24時間いつでも見ることができる。スマホを手放せない人も少なくない。すると、仕事との境目も曖昧になり、就業時間以外でも、メールやSNSに反応してしまう。仕事とは関係なくても、スマホが手元にあれば、いくらでも時間を潰すことができる。

コロナ禍以降、テレワークをする人が増えているが、自宅でテレワークをしていると、仕事とプライベートの時間が曖昧になり、仕事モードからずっと抜け出せないという人もいる。自宅で仕事をしていれば、プライベートの時間とメリハリをつけるのが難しくなるのは致し方ない。

先の『読売新聞』の記事では、「無為な待ち時間が減った」とも述べられている。

時間をむだにしないよう努める中で、無為な「待ち時間」が減った。かつては手持ちぶさたに何かを待っていた時間も、今はスマホでメールを見たり、友達にLINEで写真を送ったりすることで埋まる。退屈が回避されてありがたい。一方で、空き地ひとつなく立て込んだ街にいるような、ぼんやりできる余裕を失ったような窮屈さもある。『読売新聞』2月20日付け

「退屈は回避されるようになったが、ぼんやりできる余裕を失った」という表現は多くの現代人にとって、心当たりがあるのではないだろうか。

「ソロ温泉」は10万円以上の価値をもつ

筆者はひとり旅を愛している。ひとりで温泉旅に出かける「ソロ温泉」では、現代人が失っている「空白の時間」を取り戻すことを提唱している。ただただ温泉につかり、何もしない時間をもつ時間を確保しよう、という提案である。

そのために、スマホやPCとも距離を置き、温泉という最高にリラックスできる場で自分自身と向き合うのだ。

スマホのような効率的で便利なツールがあれば、それを積極的に使いたくなるのは人間の性である。筆者もふだんはスマホやインターネットを自分なりに駆使して、その恩恵を受けている。

だが、何事もバランスが大事である。過ぎたるは猶及ばざるが如し。スマホやインターネットに過度に頼る生活をしていれば、だんだんと心の余裕がなくなり、心身に支障をきたす。

だから、定期的にメンテナンスが必要だ。忙しない日常から定期的に離れ、あえて何もしない無駄な時間を過ごす。温泉地のような非日常の環境は、何かに追われる日常生活のスイッチをオフにするのに打ってつけの舞台である。

現代人にとってオフタイムの値段は1万3000円(1時間あたり)だという。ならば、ソロ温泉に出かければ1泊2日でも、10万以上の価値を得られる計算となる。そういう意味で、ソロ温泉は自分自身に対する「投資」といえなくもない。

秋が深まり、温泉が恋しくなる季節。ふらっとソロ温泉に出かけてみてはいかがだろうか。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『スーパーJチャンネル』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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