「人道問題で後退」国連報告者、文在寅を批判…国内ではウクライナ問題でも
韓国大統領選の投開票が9日に迫っているが、任期終了を控えた文在寅大統領がロシアのウクライナ侵攻を巡る対応で批判を浴びるなどし、ただでさえ評価の芳しくなかった任期の晩節をさらに汚している。
韓国外務省は先月28日、軍事関連の戦略物資の対ロ輸出を事実上禁止する制裁措置を決めたと発表。ロシアの一部銀行を世界の銀行決済取引網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除する制裁に同調すると表明し、ウクライナへの人道支援を拡大する方針も示した。
これは、諸外国から一歩遅れた対応で、韓国内では制裁への動きが鈍いことに批判が出ていたのだ。
また、ソウルで1日に行われた「3・1独立運動」の記念式典での演説で、ウクライナ問題への言及がなかったことにも一部で失望の声が上がっている。3・1独立運動は、日本の植民地支配に抵抗したものだが、その際に発表された独立宣言書には、人類平等と民族自決を尊び、侵略主義や強権主義に反対する精神がうたわれているためだ。
文在寅氏は就任以来、北朝鮮との対話を重視し、朝鮮戦争の終戦宣言を含む朝鮮半島平和プロセスを提唱してきた。もとより、平和に同意しない人はいない(例外もいる)だろう。だが、朝鮮半島の平和のため国際社会の協力を呼び掛けるなら、他国の平和も視野に入っていてしかるべきだ。
もっとも、彼の言う朝鮮半島の平和が、どのようなものを意味していたかには疑問もある。文在寅政権は一貫して、北朝鮮における人権蹂躙から目を背け続けた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
北朝鮮の人権状況を担当するトマス・オヘア・キンタナ国連特別報告者は先月23日、ソウルの韓国プレスセンターで記者会見し、国連総会で採択された北朝鮮による人権侵害を非難する決議を巡り、韓国が共同提案国に加わらなかったことについて、人道主義での「後退」であるとし、「北朝鮮に誤ったメッセージを送ることになる」と批判した。
キンタナ氏はまた、朝鮮戦争後に北朝鮮によって拉致された韓国人が516人いることや、朝鮮戦争で捕虜になった人が北朝鮮に残されていることなどにも言及。「人権侵害は現在も進行している」と指摘し、「国連加盟国は北朝鮮との交渉で、絶対に北朝鮮の人権問題を無視してはならない」と訴えた。
果たして文在寅氏の胸に、キンタナ氏の批判はどのくらい響いたのだろうか。