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「駐車場で死体がでたら僕」Twitterで自殺実況?Facebookでも起きる事件実況の悲劇

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
SNSでの実況は助けを求める声かもしれない(写真:アフロ)

TBS NEWSで、16日未明に名古屋市中区のコインパーキングで車両火災が起き、焼け跡から一人の遺体が見つかった事件が報じられた。

ネット上で「これはTwitterのこのユーザーなのでは」と騒ぎになっている。該当するユーザーは、4月15日未明に「近日名古屋の駐車場で死体がでたら それ僕なんでお願いします とっても楽しい人生でした」とツイート。「自殺ライブってかなりおもしろそう」ともツイートしており、その後、火がついた写真が投稿されるなど、自殺の実況に見えるツイートを連投している。

執筆現在、冒頭の名古屋駐車場での遺体の身元は不明であり、両者のつながりは明らかではないが、タイミングが合致していることもあり、悲しいことにTwitterで自殺実況をしていたように見える。

Facebookでも起きた事件実況動画配信

実はSNSにおいて、このような自殺や事件の実況は複数回起きており、問題視されている。

たとえば、ニュージーランドで現地時間3月15日に死者50人に達する銃乱射事件が起きた際、事件はFacebookでライブ中継された。200人以上がリアルタイムで視聴したが、生中継中に動画を報告したユーザーはおらず、最初の報告は、中継終了してから12分後、中継開始から29分後だったという。

同社はすぐに動画を削除し、容疑者のアカウントを削除したが、録画した動画はFacebookだけでなくInstagramやYouTubeなどに拡散してしまった。同社は、最初の24時間で事件の動画150万件を削除したが、そのうち120万件はアップロード時にブロックしたそうだ。つまり、動画はそれだけ広く拡散してしまったことになる。

同社は、拡散を阻止できなかったことに対して非難を受けている。対策として、問題ある動画をすばやく検出する技術の開発に注力する他、ライブ配信できるユーザーの制限を検討しているという。

追いつかない各社の対策とユーザーができること

スマホさえあれば、SNSに投稿したりライブ配信ができてしまう。それ故、ユーザーが多くの人に伝えたいことがある場合、SNSを使う例は少なくない。事件の中継は言語道断の卑劣な行為だが、中には悲しいことに自殺の実況をしてしまうユーザーもいる。

SNS各社では、自殺防止として様々な対策を講じている。たとえばFacebookでは、自殺をほのめかす投稿を第三者から報告だけでなく、人工知能(AI)を使って検出しており、ライブ配信上でも同機能が使えるようになっている。

2017年10月には、座間市の事件が起きた際に、Twitter上で加害者が自殺志願者に方法を助言したり、「死にたい」などとツイートした被害者を誘い出したことが問題となった。Twitter社は同社ポリシーを変更し、自殺や自傷行為の助長や扇動を禁じた他、自殺の兆候があるユーザーの報告を受けた場合にメンタルヘルスパートナーの連絡先情報などを知らせるとしている。

前述の通り、インターネット上のサービスを使った実況中継問題は、過去に何度も起きている。そのたびに運営会社は新たな対策を講じているが、まったく追いついていないのが実情だ。

SNSで自殺実況をしていたケースに限ると、誰かに助けを求めていたのではないだろうか。冒頭でご紹介した事件でも、Twitterで投稿を見ていたユーザーはいたはずだが、本気だと思わなかったのか、事前の通報などにはいたらなかったようだ。

SNSを見ていると、時折本気かどうかわからない投稿を見かけることがある。しかしそのような投稿の中には、助けを求める心の悲痛な叫びが混じっていることもある。もし見かけた場合は拡散などをするのではなく、積極的に運営会社に通報したり、直接の知り合いの場合は連絡を取るなどしてあげてほしい。

Twitterの場合は、自殺を示唆する投稿はこちらから報告できる。事件に関する投稿などの場合は、投稿右上の下向き三角をタップして「ツイートを報告する」から報告しよう。

Facebookの場合は、自殺を示唆する投稿はこちらから報告できる。事件に関する投稿などの場合は、投稿右上の下向き三角をタップして「この投稿を報告」をタップして報告しよう。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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