男性は60代後半でも約6割が就業中…高齢者の仕事事情(2023年版)
現在の社会問題として注目を集めている、高齢者の仕事事情。その実情を内閣府が2023年6月に発表した「高齢社会白書」の内容などを基に確認する。
まずは高齢者の就業状況の確認。
赤系統色は現在非就業者、青系統色は就業者。女性は兼業主婦として働いていたが子供が成人したことなどでそれを辞めている人も多く、50代後半の時点ですでに1/4強が非就業者となっている。
男性では60代前半でも8割強が働いており、60代後半でも約6割。70代前半に入っても約4割が何らかの形で働いている。一方女性は60代前半ですでに就業者が約6割となり、60代後半に入ると約4割にまで落ちる。男性は自営業者による就業者率が高いのも特徴で、75歳以上に至っても7.5%が確認できる。
高齢者の雇用に関しては、「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入(定年に達した高齢者に対し、退職の形をとらずに継続雇用したり(勤務延長制度)、一度退職した上で再び雇用する(再雇用制度))」のいずれかを導入するよう義務付けている。さらに2021年4月からは70歳までを対象として、従来の雇用による措置や、「継続的に業務委託を締結する制度」「継続的に社会貢献事業に従事できる制度」という雇用によらない措置のいずれかの措置を講ずるように努めることを義務付けている。その導入実情が次のグラフ。
全体では希望した人全員が65歳以上でも継続雇用してもらえる制度を導入した企業が21.8%となっているが、301人以上の大きな企業では19.0にとどまっている。その他措置のほとんどすべてが、21-300人規模の企業の方が高くなっている。大企業は色々としがらみがあるのだろうか。
人数面で見ると、60代前半では男女合わせて431万人、60代後半でも268万人が就業しており、労働市場では大きな要素となっていることが分かる。女性に限ればパートやアルバイトなどの非正規が多数を占めている。
興味深いのは就業率と完全失業率の動向。まずは完全失業率だが、前世紀末以降は65歳以上ではほぼ横ばい、55歳から64歳にかけては金融危機勃発までは減少、その後増加をした後、2011年以降はおおよそ減少をしており、この年齢階層の再雇用が積極的に行われていることが分かる。
もっとも2014年以降は65歳以上も少しずつ減少の動きを見せており、65歳以上の人でも労働意欲を持つ人が増え、労働力が求められていることが示唆されている。さらに2020年以降では小さからぬ増加の動きが生じているが、これはいうまでもなく新型コロナウイルス流行の影響で生じた経済の停滞によるものである(直近年でやや減ったのは経済の復調によるもの)。
最後は就業率(該当年齢階層人口に占める就業者の割合)。就業率は上昇中。特に女性は連続性のあるデータが得られる1973年以降に限れば、2003年まではほぼ横ばいだった動きから2004年以降上昇傾向が見られ、2013年以降は動きに弾みがつき、2016年には5割を超え、さらに上昇が続いている。男性も2013年あたりから上昇に勢いがつき、最大値を更新するまでとなった。ただし2020年以降は上昇度合いがゆるやかになり、男性ではほぼ横ばいへの動きになってしまっている。これは新型コロナウイルス流行の影響で生じた経済の停滞によるものである(直近年でやや増えたのは経済の復調によるもの)。
団塊世代が定年退職を迎えたため、今後急激に高齢者人口が増えることは無いが、若年層は減少中なのとともに、平均寿命も延び続けていることから、全人口比における高齢層の比率はさらに増加し、就業者も増えていくものと考えられる。また、高齢者の労働力への需要も高まりを示し、高齢者側の就業意欲も高いことから、就業率も上昇を継続することだろう。
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