GDPを受けた政府・日銀の対応
11月16日に発表された2015年7~9月期の実質GDP速報値は前期比0.2%減、年率換算では0.8%減。4~6月期の年率0.7%減から2四半期連続のマイナス成長となった。
実質GDPの内訳は「内需」が0.3%分のマイナス寄与、「外需」は0.1%分のプラス寄与となった。
項目別にみると設備投資は1.3%減と2四半期連続のマイナス。個人消費は0.5%増と前の0.6%減から2四半期ぶりに増加に転じている。
輸出は2.6%増、輸入は1.7%増とそれぞれ伸びている。円安の効果も後退し輸出の回復ペースは鈍くなったが、原油安などの影響で輸入の伸びも小さくなり、外需の寄与度はプラスとなった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比プラス2.0%。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.2%の上昇となった。
実質GDPが四半期ベースで2期連続してマイナス成長する状態は、欧米などではリセッション(景気後退)とされるが、景気後退局面となっているかどうかの判断は難しいところ。設備投資などが足を引っ張った格好であり、企業収益は伸びてはいるが、それが設備投資には直結していない状況を浮き彫りにしている。新たな投資を妨げているのは日銀の金融緩和が足りないから、ではないことは確かであろう。
政府はFDP600兆円の実現に向けた緊急対応策を今月中にとりまとめ、一億総活躍国民会議の緊急対策に反映するとしている。しかし、今回のGDPを受けての新たな景気対策のようなものは想定していないようである。甘利明経済財政・再生相は今回のGDPを受けて、景気の先行きについて、海外経済の下振れなどリスク要因はあるものの、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される、との見通しを示した(日経新聞電子版)。
11月18、19日には日銀の金融政策決定会合が開催される。政府の一億総活躍国民会議の緊急対策などに合わせて、もし何らかの追加緩和を画策しているのであれば、12月よりは11月の方が適切ではないかと思う。それはサプライズといった意味合いからではなく、12月のFRBの利上げに合わせない方が良いと思われるためである。
FRBは12月15、16日のFOMCで利上げを決定する可能性が高く、ECBはユーロ安も意識下上で、12月3日の理事会で追加緩和を検討するとみられる。このようにもし通貨安を狙いに行くのであれば、日銀も12月17、18日の金融政策決定会合での追加緩和の検討が適切かもしれない。しかし、いまは米国だけでなく日本政府もここからの円安は望んでいない。円安の物価への効果はあっても、それがデフレ脱却に直結するものでもないため、円安を意識した政策も取りづらい。
量を積み上げても効果が出ていないという状況下で、日銀が次に手を打つとすれば、ターゲット、手段とともにかなりの修正を施す必要がある。このため、11月18、19日の金融政策決定会合での追加緩和というのも、現実的にはかなり無理があると思われる。