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明るい兆しが見えないTwitter:動画アプリVineも終了、従業員9%削減

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Twitterは2016年10月27日、2016年第3四半期(2016年7~9月)の決算を発表した。売上高は前年同期比8%増の6億1,600万ドル。純損失は1億300万ドルの赤字だったが、前年同期の1億3,200万ドルから赤字幅は若干縮小した。それでもなかなか黒字にならないことから、同社は、全従業員の9%を削減することも明らかにした。

利用者は微増の3億1,700万人、売上高はモバイル広告に依存のTwitter

Twitterの売上高のうち約90%は、広告収入である。広告の売上は前年同期6%増の5億4,500万ドルだった。そして、モバイル広告が広告売上高全体に占める割合は88.5%だった。利用者数は微増だが、広告売上は前年同期比よりも増加している。

全世界でのTwitterの月間利用者数(MAU)は前年同期比3%増の3億1,700万人で、前期からは400万人増えた。モバイルからのアクセスがMAU全体の約83%だった。

Twitterの利用者のうちアメリカ人は約6,600万人で、残りの2億5,000万人以上がアメリカ国外だ。アメリカ市場の売上は3億7400万ドルと、全体売上の60%と大きい。しかしだんだんアメリカ以外の売上高も前年同期比21%増の2億4,200万ドルと成長が大きい。圧倒的に利用者が多い米国以外での市場での売上高が少しずつだが増加しており、今までのように米国市場での売上だけに依拠しなくなってきた。

Twitterの売上高の推移および広告収入とその他の比率(Twitter発表資料を元に作成)
Twitterの売上高の推移および広告収入とその他の比率(Twitter発表資料を元に作成)
売上高の地域別推移と比率(Twitter発表資料を元に作成)
売上高の地域別推移と比率(Twitter発表資料を元に作成)

難航する買収交渉、従業員9%削減

Twitterに明るい兆しが見えない。利用者数もFacebookが17億人以上、Instagramが4億人以上と世界規模で急速に拡大しているのに、Twitterの利用者は微増で、いつまでも3億人強のままだ。

いつまでも赤字体質から脱せないTwitterは、常に買収交渉の話題が尽きない。2016年9月にも、セールスフォース、Google、Apple、マイクロソフト、ディズニーなどと買収交渉を行っていると報じられたが、いつまでも買収先が見当たらない。現在のTwitterを適正な価格で買収したいという企業がないのだろう。そして結局、従業員9%(約300人)を解雇するというコスト削減に踏み切った。2015年6月にジャック・ドーシーがCEOに就任した時にも、従業員4,100人のうち336名が削減されたと報じられている。

たしかにTwitterがなくても日常生活で困る人はいない。TwitterがなくなったとしてもFacebookやInstagram、LINEなどいくらでも他のSNSのプラットフォームがあり、情報発信の手段をそれらに変えればいいだけのことだ。日本ではタレントや芸能人や企業などがTwitterを活用して情報発信をしていることが多いが、世界規模で見るとFacebookやInstagramにその軸足は移行してきている。情報発信する方も利用者が多いSNSを選ぶから当然の流れだ。

動画共有サービスVineも終了

削減するのは従業員だけではなく、Twitterが提供する動画共有サービス「Vine」の提供を終了することを発表した。Vineは2012年10月にTwitterに買収され、2013年1月からTwitterでの動画投稿アプリとして提供されてきた。Vineは当面はサイトは残し、これまで投稿された動画は視聴、ダウンロードが可能とのこと。SNS各社が動画サービスに注力し、多くの利用者が動画を撮影してアップしている現在の潮流の中、Twitterの動画サービスVine終了のインパクトは大きい。

たしかにTwitterは2015年にライブ配信アプリ「Periscope」を傘下に収めてからは、VineよりもPeriscopeを前面に出してきた印象が強いが、誰もがライブ配信するよりも、短時間でちょっとした動画をアップできるVineの人気は高かった。海外だけでなく日本でもタレントや芸能人の多くがTwitterに動画をアップする際にはVineを利用している。これからTwitterでの動画投稿はなくなるか、大きく減少するだろう。そうなるとコンテンツの魅力や情報発信プラットフォームとしての価値も低下することから、ますますTwitterから利用者が離れていってしまうことが懸念される。

利用者が減少していくと広告出稿しても集客効果が期待できないから、メディアとしての価値も低減してしまい、そのようなメディアには広告主も広告を出さなくなり、Twitterの売上の9割を占めている広告ビジネスも成立しなくなるという悪循環になりかねない。

ジャック・ドーシーCEOは今回の決算について「Twitterのコアサービスを向上させることによって成長拡大できる大きな可能性をひめている。明確なプランに基づいて、長期的な成長に向けての必要な改革を行っている。収益拡大の要素は好転しているのでTwitterの将来に自信を持っている( “We see a significant opportunity to increase growth as we continue to improve the core service. We have a clear plan, and we’re making the necessary changes to ensure Twitter is positioned for long-term growth. The key drivers of future revenue growth are trending positive, and we remain confident in Twitter’s future.”)」と強気な発言をしている。しかし、具体的にはどのようなプランで、何のサービスがこれからのTwitterを成長していかせるのか、全く読み取れない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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