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側壁への衝突、落下 高架でのバイク事故は何故起こるのか!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニュース

9月15日未明、東広島呉自動車道で走行中の400ccバイクが道路の壁に衝突し、高架下に転落した男性ライダー(50)が死亡する事故があった。つい先月にも現場付近で同様の死亡事故が起きるなど、高架での側壁へ衝突、落下事故が目立っている。こうした事故は何故起きるのか、今一度よく考えてみたい。

※以下は8月21日にWebikeニュースに掲載された記事に筆者自身が加筆しています。

目も眩む高さ、迫る側壁でパニックに

残念なことにこの盆休みもバイク事故が多発した。報道されている死亡事故だけでも両手の指に収まらない件数だ。

その中でも不可解な事故も多かった。ひとつは高速道路などの側壁への衝突、さらには側壁を乗り越えて地面に落下するケースも見受けられた。

8月10日朝に新東名の上り、御殿場ジャンクション付近での高架での事故。報道映像などを見る限り、ほぼ直線に近いような緩やかな左カーブ。右の側壁に数十メートルにわたって生々しい擦過痕が残り、またバイクのダメージが少ないことからも、カーブを曲がり切れず浅い角度で側壁に接触後、転倒したように見える。

自分も事故現場を通過したことがあるが、一見緩いカーブに見えるが速度が上がるほど急に曲がっているように見えてくる。加えて背筋がゾクっとするほど高い所を走ること、側壁が意外にも低いことなども影響して、急に恐怖にかられてパニックに陥ることもあるかもしれない。目線が釘付けになり、体が硬直してしまう。

いわゆる「金縛り」というやつだ。何故こんな場所で事故が……と思うかもしれないが、バイクはクルマ以上にメンタル面が運転に及ぼす影響が大きい。

高架はエスケープできる場所が少ない

これを裏付けるかのような状況も映像から確認できた。事故現場のすぐ先には車線内側に白い破線がペイントされていることが分かる。これは「減速レーンマーク」と呼ばれるもので、カーブ手前などで見かけたことも多いはず。車線を狭く見せることでドライバーに減速を促すのが狙いだ。

これがあるということは、裏を返せば、速度を落とすべき“危険な場所”ということである。

事故原因はスピードの出し過ぎで曲がり切れなかった、という単純なものではないかもしれない。もしかしたら、クルマなどが絡む2次的要因があったのかもしれない。ライダーからは見えない死角から幅寄せされたり、急に割り込まれて行き場を失った可能性もある。この暑さだ。熱中症や急な体調不良で意識が遠のいたことだって考えられる。

また、事故があった新東名を含め、特に高架のジャンクションでは路側帯などのエスケープゾーンが狭い場合が多く、側壁の高さもライダーの目線からは低く感じる場所も少なくない。誤って転倒すれば、最悪は側壁を乗り越えて落下というイメージが脳裏をかすめる。

元々何もない空中に作られた道路。その特殊な構造上、仕方ないのかもしれないが、万が一の事故への備えは果たして十分と言えるだろうか。

運転能力のキャパを向上させよう

バイクはクルマと違ってハンドルを切れば曲がる乗り物ではない。鉄の囲いもシートベルトもエアバッグも無い。クルマに比べれば明らかにリスクは高いし、決してイージーな乗り物ではないのだ。

自然の風や操っている満足感を肌で感じられる素晴らしい乗り物ではあるが、そういったリスクもきっちり織り込み済みで対峙する覚悟が求められる乗り物なのだ。

そう言われてしまったら身も蓋もない、と言われそうだが、ただ一つポジティブ思考になれるとしたら、運転能力のキャパシティを向上させておくことだろう。

たとえば、「曲がれない」と思っても目線をちゃんと向ければ実際(バイクの性能的に)は曲がれることがほとんどだし、オーバースピードと気付いたときにコーナリング中でも減速できる方法もある。そういった、パニック回避の手段を多く体験しておくことで、実際にピンチの場面でも救われることがあるはずだ。

最新マシンも乗りこなす知識と技術あってこそ

一例として、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)というものがある。これはパニックブレーキなどで車輪がロックして転倒するのを防ぐ安全装置で、現在は125cc以上のすべての新車に装備が義務付けられている。

ただ、安全運転講習会の参加者に聞くと「ABSを作動させたことが今までに一度もない」という人がほとんどだ。これでは、いざというときにせっかくの安全装置を生かせずじまいである。

いくら高性能な最新マシンでも、コントロールできなければただの凶器になってしまう。安全マインドはもちろんのこと、正しい「知識」と体で覚えた「技術」、そして確実な「装備」があってこそ、安全は担保される。

安全運転講習会やライディングスクールなど学びの機会はいろいろあるので、ぜひパニックを安全に体験しておいてほしいと思うのだ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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