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横断歩道で止まらないクルマ8割 追突事故の被害者にならないためには!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニース

横断歩道で一時停止は厳然たるルール

先日、悲惨な追突事故でまた一人のライダーの尊い命が失われた。

警視庁によると、東京・日野市で14日午後5時ごろ、片側1車線道路でトラックが停止していたバイクに追突し、乗っていた60代男性がトラックの下敷きとなり死亡。バイクは横断歩道を渡ろうとしている歩行者を待って一時停止中だった。現行犯逮捕された男性トラック運転手(30)は「歩行者には気付いたがバイクには気付かなかった」と話しているという。

そもそも、横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいれば、車両は一時停止して道を譲らなくてはならない。これは道交法で厳然と定められたルールである。

しかしながら、実情は守られていない。JAFの調べでも、横断歩道(信号機が設置されていない)を歩行者が渡ろうとしている場面で停止したクルマは2割程度しかいないという調査結果がある。約8割のクルマは止まらないのだ。

自分は止まっても後続車が止まる保証はない

普段、街中でも横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる前を猛スピードで通過していくクルマを目にすることが多い。事故があった午後5時ごろは今の季節ならまだ明るく、普通に運転していれば停止していたバイクを見落とすはずもない。否、停止しているのがクルマならブレーキを踏んだのかも。もしかしたら、スマホなどを見ながらのよそ見運転だった可能性も否定できない。

恐いのは、自分は止まれたとしても後続車が止まってくれる保証がないことだ。そんな状況で、信号のない横断歩道の前で止まるのは恐怖でしかない。剥き出しのバイクが数トンの鉄の塊であるクルマに追突されたらどうなるか、結果は言わずもがなである。

追突事故はいつ誰にでも起こり得る

実は自分も追突されたことがある。どこにでもあるような片側1車線の県道を走行中、信号に従って減速・停止した直後に後ろからドーンという衝撃が。振り返ると、セダンのボンネットが自分のバイクの後輪とリヤシートの隙間に食い込んでいた。

バイクごと1mほど前に押し出された感じだったが、それで衝撃がいくらか吸収されたのか、軽いむち打ち程度で済んだことが不幸中の幸いだった。自分もまだ若かったし、バイクも重量級のナナハンで、前後ブレーキをかけていたのが良かったのかもしれない。何よりも追突した後続車の速度が低かったことが幸いだった。

また、10年ほど前にもツーリング中にもヒヤッとするインシデントがあった。箱根近くの幹線道路で信号停止した直後、タイヤが軋むスキール音とともに自分の右横を猛スピードで追い越していったクルマが交差点の真ん中辺りで止まったことがある。

輸入車のスポーツカーだったが、ずっと真後ろで車間距離を詰めて追尾してきたのでイヤな予感がして、信号が青から黄色に変わったときに自分の車線内の左端に寄せながら止まった直後のことだった。

もし、そのまま車線の真ん中に停止していたら、もしかしたら追突されてバイクごと吹っ飛ばされていたかもしれない。そのクルマはそれぐらいの勢いだった。

自分の知り合いの中にも首都高の渋滞末尾で追突されてバイクは一発廃車、その後も後遺症に苦しんでいる人がいる。追突事故は身近に起きていることなのだ。

左端に寄せて停止、制動灯で存在をアピール

追突されないためには、どうしたら良いのか。自分の場合、前述のようにイヤな予感がしたら、なるべく道路の左端に寄せて止まるようにしている。もし後続車が止まれない場合でも、端にいればギリギリでスルーしていってくれるかもしれない。

だが、これにも問題点があって、端に止まっていると後続車からは道を譲っていると思われ、追い越されてしまうことが多々ある。「先に行ってくれ」というサインと誤解され、横断歩道を渡ろうとしている歩行者を逆に危険にさらしてしまうかもしれない。

クルマに比べればバイクは交通弱者でもある。そのときの状況を見ながら最善を尽くすとしか言いようがないところがもどかしい。

自分は停止するときは必ずバックミラーで後方の様子をうかがいつつ、余裕があるとはきポンピングブレーキでブレーキランプを点滅させながら減速するようにしている。場合によっては停止した後もあえてチカチカとやって自分の存在をアピールすることも多い。暗い夜道などではハザードランプを点けることもある。

そして、何かあればすぐにスクランブル発進して危険回避できるよう(できないかもしれないが)、常に気を張っている。

自動ブレーキ義務化が希望の光か!?

と、いろいろな工夫はしているつもりでも、運を天任せであることに変わりはない。人間は忘れっぽくムラがありミスすることも多いし、いくら厳罰化しても事故は無くならない。運転能力や適性にも差がある。最終的にはやはり自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)などの安全運転支援システムの普及を待つしかないだろう。

ちなみに2021年11月から国産の新型乗用車を対象に自動ブレーキの搭載が義務付けられる。やっとか、という感も否めないが是非最優先で進めてもらいたい。それとて完全に安全が担保されるわけではないが、残念ながらこれが現時点で考え得る希望である。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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