「民主主義を忘却した」文在寅政権に米国から深い失望
韓国の与党「共に民主党」は2日の国会外交統一委員会で、北朝鮮に向けた体制批判のビラ散布の禁止を盛り込んだ「南北関係発展に関する法律」改正案を単独で強行採決した。
改正案は、軍事境界線一帯でビラを散布するなど南北合意書に違反する行為を行った場合、3年以下の懲役または3000万ウォン(約280万円)以下の罰金に処することができると定めている。与党が圧倒的多数を握る国会本会議での採決を経て、成立する見込みだ。
野党は「憲法が保障する表現の自由を制限する」として猛反対してきたが、与党は「南北境界地域に暮らす住民の安全を守るため」として成立を急いでいた。しかし、境界地域の人々の安全を脅かしてきたのは、対北ビラそのものではなく、それに過激な反応を示してきた北朝鮮の側だ。結果的に、北朝鮮側の意を汲んで自国内での表現の自由を侵す形になってしまっている。
こうした動きに対しては、韓国国内だけでなく米国からも批判の声が上がっている。文在寅政権は「民主主義と人権がわかっていない」との主張である。
(参考記事:豪州が打ち砕く、文在寅に残された「たったひとつの希望」)
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、ロベルタ・コーエン元米国務副次官補は「文在寅政権は、韓国の政治経済的な力が民主主義制度と人権尊重にあるということを忘れた」と批判。「民主主義社会で安全保障と人権のバランスを取るのは常に難しい」としながら、「北朝鮮の人権問題に対する政府・非政府レベルでの批判を封じることは北朝鮮の要求と脅威に降伏するものであり、このようなバランスの取り方は受け入れがたい」と述べた。
文在寅政権は最近、政権与党の闇にメスを入れてきた尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長への攻撃を巡り、「検察の独立性を侵し、民主主義を破壊するものだ」との非難を浴びている。
北朝鮮に配慮して自国民の自由を制限する姿勢と、自分たちの利益のため検察を屈服させようとするやり方は、通底するもののように見える。つまるところ、文在寅政権と与党にとっては民主主義や国民の利益は二の次で、「自分たちがやりたいようにやる」ことが最優先なのではないか。
それにしても、文在寅政権が検察を攻撃する理由はまだわかりやすい。彼らに後ろ暗い部分があるならば、いずれ政権交代が繰り返させるうちに、必ず事実が暴露されるだろう。それに比べ、文在寅政権と与党が北朝鮮と何をしたいのかは非常に見えにくい。毎年、国連で指弾され続けている人権侵害国家と手に手を取り合ったところで、「バラ色の統一の未来」などないのだ。文在寅氏と彼の支持者らが、朝鮮半島の10年後、20年後、30年後の未来像をどのように描いているのか、じっくり聞いてみたいものだ。