2013年の債券相場を振り返る(上半期編)
2013年の金融市場は大きな変化の年であった。債券市場でも4月の日銀の異次元緩和を受けて一時的に大きな値動きもあったが、長期金利は1%以内での推移となっていたことで、総じて超低金利の状態は継続していたと言える。
それではまず1月の債券相場から振り替えってみたい。今年の債券先物の寄り付きは143円32銭と昨年末からは33銭安となった。米国での財政の崖問題が回避されたことで、年末年始の間に米株は上昇し、米10年債利回りが1.9%近辺に上昇したことが影響した。日銀の追加緩和期待などから中期ゾーン主体に買いが入り、債券先物も144円台を回復した。10年債利回りは0.8%を割り込む。日銀の追加緩和期待や日本の閣僚の発言などをきっかけに再び円安が進行し、ドル円は2年7か月ぶりの90円台、ユーロ円も120円台に乗せた。1月22日の金融政策決定会合で、日銀は政府からの要請のあった「物価安定の目標」を導入することを決定し、同時にあらたな追加緩和策として「期限を定めない資産買入方式」を導入することを決めた。5年債利回りが0.140%と過去最低利回りを更新した。外為市場ではドル円は91円台、ユーロ円は122円台と円安が進み、28日の日経平均は11000円台乗せに。28日に米10年債利回りが一時2%をつけた。
2月に入って12日のG7の緊急共同声明では、円の過度な動きに懸念を表明することが目的だったとの匿名のG7筋による発言があったが、これは米政府の意向を反映した可能性があった。2月25日に日銀の白川方明総裁の後任に黒田東彦総裁を起用、副総裁には岩田規久男教授と中曽宏氏を軸に検討と伝えられた。リフレ派と呼ばれる黒田氏と岩田氏の起用で、アベノミクスへの期待が強まった。債券市場では積極的な追加緩和策への期待も出てきたが、特に期間の長めの債券の買入等も期待され、超長期債を中心に買い進まれた。イタリアの政局が不透明となったことで、25日の欧米市場ではリスクオフの動きが強まった。外為市場ではドル円は94円台から一時90円台に、ユーロ円も一時120円割れとなった。円債もさらに買い進まれ、26日に5年債利回りは0.115%に低下し連日で過去最低を更新。10年債利回りも0.7%割れに。10年債は0.640%をつけ2003年6月以来の水準に。
3月4日の衆議院運営委員会の所信聴取で日銀総裁候補の黒田東彦氏は、デフレ脱却へ向け可能なことは何でもやると表明し、長期の国債も購入対象として検討すべきだと述べた。4日の債券先物はこの発言を受けて上昇し145円32銭の高値引けとなり、12月11日につけた過去最高値を更新した。10年債利回りも2003年6月以来の水準に低下した。外為市場では2月のG7以降、円安の動きにはブレーキが掛かった格好となったが、欧米市場ではあらためてリスクオンの動きが強まり、再び円安の動きを強めつつあった。3月14日にかけて米国株式市場でダウ平均は10日続伸となり、8日連続で過去最高値を更新。これに対し米債は上値が重くなり、10年債利回りは2%台に上昇した。外為市場では円安の動きは鈍くなったものの、米株の上昇を受けて東京株式市場も上昇し、8日に日経平均は12500円台を回復した。この株高や米債の上値の重さにも関わらず円債は堅調地合となった。ユーロ圏財務相会合ではキプロスへの財政支援と引き換えに全ての銀行預金への課税を決めたことを受け、キプロス政府は16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始した。この異例の措置に市場は動揺した。新体制となった日銀による国債買入対象になると見込まれる10年債は28日に0.510%まで買われた。
4月4日の日銀の金融政策決定会合では量的・質的金融緩和の導入を決定した。マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度にし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を決定した。これを受けて4日の引けあとに10年債利回りは0.425%をつけ過去最低利回りを更新。5日に日経平均は13000円台を一時回復、外為市場ではドル円97円台、ユーロ円は125円台を回復した。10年債利回りは0.315%に低下し、債券先物も146円69銭まで上昇したが、中期ゾーン主体に銀行からとみられる売りが入ったことをきっかけに、債券先物は二度のサーキットブレーカーが発動し、143円10銭まで急落した。その後145円台まで戻すなど、相場は乱高下した。8日の債券先物は買いが先行。日銀は新たな国債買入を実施し、その結果も好感され債券先物は後場に入り145円02銭と5日の清算値から1円高となったことで、サーキット・ブレーカー制度が発動した。その後145円25銭まで買われたが、戻り売りも入り144円57銭まで急落するなど荒れた展開に。10日には5年債主体にまとまった売りが入り、債券先物は引けにかけて下げ足早め144円16銭で引けた。引けあとにさらに下げ足を速め、債券先物はイブニング・セッションでサーキット・ブレーカーが発動した。11日も荒れた相場となったが、日銀はシグナルオペとして初の1年物の共通担保資金供給オペをオファー、午後にも1年物2兆円のオペを追加し1日の供給額としてはオファー・ベースで4.3兆円に。さらに長期国債買入れのオファー日程も公開した。18日になると超長期債の板も厚みが出てくるなど流動性も回復してきた。18日の夕方に発表された日銀の国債買入方式の一部修正により、オペの頻度を多くし、その分、一回あたりの買入額を減少するなど、市場への配慮が示された。19日に閉幕したG20の声明では日本の金融緩和を容認、日銀による最近の政策はデフレから脱却し、国内需要を支えるためのものだと声明文に明記された。このG20での日銀の異次元緩和への理解により、円安が進行し22日にドル円は99円98銭をつけて100円に接近した。
5月1日の10年国債の入札がまずまず順調なけっかとなり、2日に債券先物は145円台を回復し、10年債利回りは0.560%まで低下した。2日のECB政策理事会では政策金利の0.25%引き下げを決定。2日のドイツ連邦債先物は過去最高値を更新した。9日のNY外為市場でドル円は4年ぶりに100円の大台に乗せ、円安を受けて10日の日経平均は2008年6月6日以来の14500円台を回復。10日の東京時間でドル円は一時101円台に。日経平均は14600円台。10年債利回りは2月25日以来の0.7%台乗せとなった。債券先物は前日比1円安の143円72銭まで売られてサーキットブレーカーが発動した。13日も債券先物は142円70銭まで下落し、サーキット・ブレーカーが発動した。10年債は0.800%まで利回りが上昇。22日にバーナンキFRB議長は出口を意識した発言をしたことで、米債は下落し10年債利回りは2%台に乗せた。この米債安もあり、23日の債券先物は寄付から下落し、サーキット・ブレーカー発動後、140円70銭まで下落した。10年債利回りは昨年4月5日以来の1%台乗せに。ドル円が103円台をつけるなど円安ドル高が進み、この日の日経平均は16000円に接近した。ところが中国の5月製造業PMIの低下などがきっかけとなり、一気に利益確定売りなどが膨らみ、日経平均は前日比1143円安と急落した。日銀がシグナルオペ等をオファーしたこともあり、債券先物は142円74銭まで買い戻されて、10年債も0.825%に低下した。
FRBの量的緩和の早期縮小観測もあり、米国株式市場は強い経済指標に売りで反応するなど、やや不安定な展開となった。6月3日の日経平均は500円を超す下げに。この株安も意識されて債券先物は143円台に上昇した。3日のニューヨーク市場でドル円は100円を割り込んだ。6日のニューヨーク市場でドル円は一時95円台に。19日のFOMC後のバーナンキFRB議長の会見では、6月19日の会見でバーナンキFRB議長は年内に緩和策の縮小に踏み切る可能性を示し、これを受けて米長期金利は大きく上昇し21日に2.5%台に、24日には一時2.66%近辺まで上昇した。日本の10年債利回りも21日に0.890%まで上昇した。25日には中国市場での短期金融市場の混乱も手伝い、上海株式市場が急落するなど不安定な動きとなり東京株式市場も下落し日経平均は13000円を割り込む場面もあった。