「エジプトに兵器輸出2千億円」誇る文在寅氏に「契約まだ」と現地報道
韓国防衛事業庁は2022年2月1日、エジプト政府とハンファ・ディフェンス製K9自走榴弾砲の輸出について契約を結んだと発表した。これを受け、文在寅大統領は同日、「今回の契約は2兆ウォン(約1930億円)を超えるものであり、K9自走砲としては最大規模の輸出を記録しただけでなく、わが国の兵器体系の優秀さが改めて認められる契機になった」とのコメントを発表した。
文在寅氏は1月の中東歴訪に際し、エジプトのアブドルファタハ・シシ大統領との会談で直接、K9自走砲を売り込んだ。そうした経緯もあり、政権として官民一体での取り組みで成果を出した、との自負があるのだろう。
ところがこの発表に対し、民放のSBSが異議を唱えている。エジプトに対する輸出契約は、まだ完了していないというのだ。
エジプトへのK9自走砲の輸出を巡っては、代金の80%に当たる1兆6千億ウォンを、韓国輸出入銀行が融資することが条件になっていることが、まずSBSの報道を通じて明らかになった。これに対して韓国政府は、輸出と融資を連動させるのは一般的な方式だと説明している。
しかし、SBSが問題視したのはこの部分ではない。後続の報道でSBSは、エジプトと韓国輸出入銀行との間で、融資契約が締結されていないことを明らかにしたのだ。
支払代金の融資が決まっていないなら、商品を輸入することはできない。しかも、韓国政府とエジプト政府の合意は、かなり心もとない状況にあるようだ。SBSは、次のように報じている。
〈政府は「サインはしていないが、融資交渉は事実上、終わっているため、輸出契約を発表した」との立場だ。ところが融資の当事者である輸出入銀行側は「エジプト政府の合意意思は間接的に伝えられたエジプト当局者の言葉だけ」だと認めた。エジプト政府当局者がハンファ・ディフェンス側に、ハンファ・ディフェンスの職員が輸出入銀行の職員に、それぞれ口頭のみで貸出条件に同意する旨を伝達したのだ。法的効力のある融資関連文書はただの一枚も届いていない。〉
このような現状を受け、SBSは、今後の交渉で韓国側が不利になることを懸念する。すでに発表してしまった以上、韓国政府は何がなんでも融資契約をまとめようとする。必然、エジプト側の立場が強くなるというわけだ。
こうした一連の報道を目にしながら、文在寅政権の5年間の対北政策がフラッシュバックした。どれほど現実味があるかわからない北朝鮮の非核化や、朝鮮半島の平和体制構築に前のめりになり、結果的に北朝鮮の居直りに直面した。
その一方、北朝鮮の人権問題については、目の前に情報があふれているのに、露骨に見て見ぬふりを続けた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
仮に非核化が進展しても人権状況がひどいままでは、ウイグル族への抑圧を非難される中国と同様、北朝鮮は国際社会から利益を得られない。その時点に至り、「騙された」と怒りの矛先を向けられるのは韓国だ。
K9自走砲は、これまでにトルコ、ポーランド、フィンランド、エストニア、インド、ノルウェー、オーストラリアへの輸出に成功した売れ筋商品だ。任期切れ間近の文在寅氏が成果を焦らなくても、じっくり交渉すればエジプトへの輸出が成就する可能性は十分にある。
文在寅氏の安請け合いや勇み足、功名心への焦りこそが、周辺に徒労を強いているのである。