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サハラの大砂嵐が予測どおりアメリカへ 新型コロナウイルス症状に影響?

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
サハラ砂漠から巨大な砂雲 カリブ諸国に飛来(写真:ロイター/アフロ)

日本へ飛来する砂粒は、中国内陸部やモンゴルの砂漠を発生源とする「黄砂」です。日本で暮らす私たちにも時々影響を及ぼしますが、東アジア地域の砂漠から舞い上がる砂粒の量は、地球全体の10分の1程度でしかありません。世界で最も大きい発生源はサハラ砂漠です。サハラ砂漠で舞い上がった砂粒は、貿易風によって大西洋に流れます。およそ12月から2月にかけては、サハラ砂漠から南西の方向へ砂粒が流されますが、およそ6月から8月にかけてはサハラ砂漠から西の方向へ流されます。(これに関連することは、私が最初に執筆した2000年発表の研究論文でも言及しています。なつかしいです。)

サハラ砂漠から真西の大西洋の対岸はカリブ諸国です。現在(6月26日)、サハラ砂漠で発生した大砂嵐による砂粒が、大量に大西洋を横断して、北中米へ到達していることが現地で大きなニュースとなっています。過去50年間で最も大規模であるとも言われているようです。

A 'Godzilla' dust cloud from Sahara Desert is nearing US Gulf Coast(USA TODAY)

カリブ海上空を覆うサハラの砂 米国に到達へ(CNN.co.jp)

この大規模な砂嵐は予測できていました

私は、研究のために自ら開発したソフトウェアSPRINTARSを利用して、PM2.5と黄砂の予測を毎日実施し、皆様に広く情報提供しています(上述の私の最初の研究論文はSPRINTARS初期版について書かれています)。この予測情報は、中国からの越境大気汚染の予測であると認識されているかと思いますが、実は、地球全体でPM2.5と砂粒の予測をしています。SPRINTARS英語版ページの"Forecast movies (Global)"で、地球全体の予測動画を公開しています。過去の予測情報はもう見られなくなっていますが、6月16日時点と6月24日時点で予測した情報を、以下に動画で再掲しておきます。

1つめの動画を見ると、6月15〜16日にサハラ砂漠で舞い上がった砂が大西洋を横断して21日にカリブ海に到達すると予測していたことがわかります。6月16日の時点で、現在起きていることが予測できていたことになります。2つめの動画では、その後、6月25〜26日にメキシコや米国南東岸(フロリダ州・ルイジアナ州・テキサス州)へ到達すると予測されています。

大砂嵐の影響が新型コロナウイルス症状にも関係する?

大気中に砂粒が高濃度で存在すると、呼吸器に影響することは広く知られています。一方で、世界的に蔓延している新型コロナウイルスの症状も呼吸器に現れます。したがって、世界最大の感染者数を抱えている米国では、この大砂嵐と新型コロナウイルスの複合的な影響が懸念されているようです。

A massive dust cloud is barreling toward the U.S. The health impacts could be deadly.(NBC News)

大気汚染物質に長期的にさらされた人は、新型コロナウイルスによる死亡率が高くなるという指摘が複数の研究によりなされていますが、ウイルスについて、いろいろと不明な点の多いことが、人々を一層不安にさせているということもあるかと思います。ただし、砂嵐だけでも健康影響があります。日本の皆様も、PM2.5や黄砂の濃度が高い時は引き続き気をつけてください。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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