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それにしても今回も少しタイミングが悪かった消費増税

久保田博幸金融アナリスト
(写真:吉澤菜穂/アフロ)

 過去の消費増税が行われたタイミングはあまり良くなかった。今回も同様のように思われる。過去の消費増税時を振り返ってみたい。

 1988年の竹下政権時に消費税法が成立し、1989年4月からは所得税や法人税などの大規模な減税と引き換えに3%の消費税が導入された。このときはまさにバブル真っ盛りであり、タイミングとしては悪くなかった。しかし、その後にバブル崩壊が起きることになるが、これは消費増税によるものではなく、あくまで資産バブルが崩壊したためである。バブルの勢いは1989年末まで続き、日経平均株価はその年の大納会の大引けで38915円を付け、これがそれ以降20年以上にわたる株価の最高値となった。

 1997年4月に橋本内閣において、減税の財源として消費税の5%への引き上げが実施された。村山内閣で内定していた消費税等の税率引き上げと地方消費税の導入を橋本内閣が実施した格好となった。この財政構造改革と消費税の導入が、その後の景気後退の要因とも指摘されたが、バブル崩壊後の金融システム不安などによる影響もあり、その影響だけを判別することは難しい。

 1997年には企業の破綻が相次ぎ、7月4日に東海興業、7月30日に多田建設、8月19日大都工業、9月18日ヤオハンが会社更生法の適用申請を行った。11月に入ると金融システム不安が一気に表面化し、3日に三洋証券が会社更生法適用を申請、17日には都銀の北海道拓殖銀行が経営破綻し北洋銀行への営業譲渡を発表した。さらに24日には証券大手の山一證券が自主廃業を届け出、26日には徳陽シティ銀行が分割譲渡と金融機関が相次いで破綻したのである。これらは消費増税によるものではない。

 1997年5月にタイの通貨バーツの暴落を皮切りに、アジアの新興諸国の通貨が連鎖的に暴落し、東アジア全域の経済が大混乱に陥いた。1998年5月には通貨ルーブルが急落したことでロシアの通貨危機が発生していた。

 2014年4月1日に安倍内閣時に消費税は5%から8%に引き上げられた。このタイミングで何が起きたのか。いわゆるアベノミクス相場は継続中であったが、ピークアウト感も出ていた。ただし、最もピークアウト感が強かったのが日銀の物価目標でもある消費者物価指数であった。消費者物価指数(除く生鮮、コア指数)は2014年4月に前年比プラス1.5%まで上昇幅を拡大させたが、それ以降は上昇幅を縮小させ、日銀の物価目標の2%から遠ざかることになった。

 消費者物価指数の前年比での上げ幅縮小などは消費増税の影響との見方も出ていたが、アベノミクスによる円安株高の効果が後退しつつあり、消費増税の駆け込み需要の後退などが影響したとの見方もできよう。

 そして今回であるが、米中の関税戦争の影響もあり、米国や中国だけでなく欧州などでの景気減速の懸念が強まっている。金融政策の正常化に向けて利上げをしていたFRBも利下げに舵を切り返している。10月1日に発表された日銀短観をみても企業の景況感は悪化しつつある。これらからみて、タイミングとしては今回もあまり良くはないように思われる。軽減税率やキャッシュレス還元などの対策も講じられているものの、世界的な景気減速となれば、その効果も一時的なものとなると思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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