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「平成28年熊本地震」 SNSを上手に活用し情報難民を防ぎ、適切な支援を

吉川彰浩一般社団法人AFW 代表理事
(写真:アフロ)

徐々に熊本大地震の被害状況が明らかになってきました。冷静に見守る私達にとっては、それは断片的です。被災された方々にとっては伝えて欲しいのは、それじゃないといったことも生まれている事と、思います。

現在の災害の局面は、いかに正確な情報を被災された方々が手にいれるかの段階にあります。既にSNSを利用されている事とは思いますが、使い方を誤ればそれは混乱のたねになりかねず、またこれから支援に向かおうとする人達にとっては勘違いを生むものです。

筆者は昨年9月、関東・東北豪雨災害で最大の被害地となった「茨城県常総市」で、[常総市大水害 伝わらぬ被害実情 SNSを活用した正しい情報共有と生活再建支援を。 SNSを活用し地元グループを立ち上げました]。SNSが生みだず弊害と有効性をお伝えいたします。少しでもお役に立てればと思います。

茨城県常総市のケースと熊本地震のケースは良く似ている

スタートが水害と地震という違いがありますが、これから迎える生活再建のフェーズは非常に似ています。

共通することが多々あるからです。特に家屋被災に焦点をあてると常総市大水害からの復興は参考になります。

大規模災害

インフラが制限されている(電気・水道・ガス・道路と大きな被害を受けました)

家屋被害が甚大(避難所生活の長期化、家屋再建にかかる費用ねん出の問題、家財の確保、これらは熊本の皆さんも今後抱えるものです)

地元主導型グループを

今も大変な状況である被災された方々にとっては酷なお願いではありますが、リアルタイムに正しい情報を出せるのは、TVでも新聞でもなく、地域に精通した皆さまです。

すでにネットの世界では、熊本地震を題する外部グループが立ち上がっていますが、機能しません。なぜなら当事者不在だからです。

例えば、通れる道路があるという情報などは、それが片側制限なのか、頑張れば通れるのか、地元しか知らない抜け道もありますよね。

そうした事は部外者は分かりません。

ここでグループ立ち上げの際に、参考にして頂きたいのは地元出身者で、被害が少ない若しくは、なかった地域の方がグループを立ち上げ、地元出身者に呼びかける手法です。常総市のケースでは数日で数千人の規模になりました。地元の呼びかけの効果は絶大です。

地元主導型だからこそ、本当の生の声が伝わります。待ちの姿勢だけではニーズと合わぬ支援ばかりが続いていきます。

ですが、グループを立ち上げてもそこにはルールが必要です。半端な情報は返っていらぬ混乱を生み出すからです。

投稿ルールを作る

ここが非常に重要です。無駄な投稿がされることや、不安だけの文句になってしまったりと、いわゆる2ch化をいかに防ぐかが重要になります。

筆者も数千人のグループ運営をした際、ここが肝になりました。大切なのは「被災された方にとって有益な情報であること」そして管理者権限において、不要な投稿は削除する勇気です。

ご参考に常総市グループで決めたルールを掲示します。これは基本です。状況に応じて追加・削除などをご検討ください。

1.投稿日時を記載する 

これはリアルタイムで更新されていくSNSでは重要です。日々状況が変わりますので情報に正確性を持たせるため、必須事項になります。

2.投稿制限をする。

地元の方の声を優先するためです。多数の支援団体の投稿が届きます。ですが中には宣伝なのか、応援なのか、時には冷やかしもあります。

3.監理者は一日を振り返る

大変な事ですが、特に重要な点はページ固定などをして残すことが必要です。防犯について警鐘し続けるのも重要です。

4.高齢者といったネットを使えない方への気配りを

SNSどころか、スマートフォンを使えない方も大勢います。そして災害時、必ず情報弱者になる方々です。グループで得た情報は地域高齢者と共有することを義務づけることが必要です。

5.投稿は投げっぱなしにしない

投稿が解決されたかどうか分からないと、混乱のたねになります。救援投稿は特に解決したら「しました」投稿も必要です。

グループの統一化

SNSはお手軽ゆえに、沢山のグループが作られます。大規模災害の場合、横の連携が重要です。出来うるならば一本化することが、より情報を集約でき、拡散できます。

被災地外ではなく、地元の中で一本化する、大きくすることを指します。

地域行政との対立の場所にしない

行政の方々もひもとけば、被災された方々です。これまでにない被害状況の中、寝ずの仕事をされています。不備も当然出てきます。その際、どうしても立場上はけ口となってしまうところですが、この先一番頼りになるのは地域行政です。

行政が行き届かないことを民間でフォローする。そうした気持ちがグループ運営に必要です。

地元の方々がSNSを有効に使うことで、外部支援者が本当のニーズにそった支援が行えます。それは情報支援であったり、物資支援であったり、労働力の支援であったりと。

また、これからの復興を考えた時、地元の繋がりが希望を生み、悩み課題を共有し、震災を乗り越えていくことにも繋がります。

今、熊本で不安な状況でいる方々は乗り越える術を知らないという前提で、情報を伝える局面にあります。

近年では関東・東北豪雨災害、5年前に遡れば東日本大震災、それを経験した人達が持ち得る経験が活きる局面です。

私達が冷静に出来ることは情報支援もあります。これもSNSを有効に使えば出来る支援です。

本来、情報のプラットフォームになるのは行政HPです。ですが整う・機能するまでは相当の時間がかかります。民間がフォローすることが大きな力を生みます。

その一つがSNSですが、それは使い方によります。

一般社団法人AFW 代表理事

1980年生まれ。元東京電力社員、福島第一、第二原子力発電所に勤務。「次世代に託すことが出来るふるさとを創造する」をモットーに、一般社団法人AFWを設立。福島第一原発と隣合う暮らしの中で、福島第一原発の廃炉現場と地域(社会)とを繋ぐ取組を行っている。福島県内外の中学・高校・大学向けに廃炉現場理解講義や廃炉から社会課題を考える講義を展開。福島県双葉郡浪江町町民の視点を含め、原発事故被災地域のガイド・講話なども務める。双葉郡楢葉町で友人が運営する古民家を協働運営しながら、交流人口・関係人口拡大にも取り組む。福島県を楽しむイベント等も企画。春・夏は田んぼづくりに勤しんでいる。

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