「福島第一原発」 劣悪とされてきた環境はどう変わったのか 

福島第一原発構内 新事務棟 1号機原子炉建屋から1kmほどしか離れていない

原発事故から4年半、福島第一原発で働いてみませんか?この問いを社会に投げかけた時、100人が100人、「そんな危険な場所で働きたくない!」そう言われる風潮が未だあります。それは一重に社会が認識している福島第一原発のイメージは、事故当時のまま止まっている事も一因ではないでしょうか

普段、一般の方をお連れして福島第一原発を視察している取組から、現在の福島第一原発の労働環境をお伝えし、福島第一原発の事故当時から変わった事と、そしてこれらかの問題についてお届けします。

働ける現場と変わっていく福島第一原発

福島第一構内配置図 東京電力提供資料
福島第一構内配置図 東京電力提供資料

福島第一原発を語る時、構内のどの場所の話なのかが重要です。構内資料のどのエリアの話なのか、それをひもとく事が、イメージの上で福島第一原発と実際の福島第一原発とのギャップを埋めることに繋がります。

発電所入口付近、構内配置図の中央下部の赤色で染められた防護対策不要エリア

大型休憩所 作業員の方々が食堂で温かい食事を食べられるようになりました。
大型休憩所 作業員の方々が食堂で温かい食事を食べられるようになりました。
入退域管理施設に通じる通路
入退域管理施設に通じる通路

10月5日に屋根パネル完全に外された1号機原子炉建屋から、距離にして約1kmの場所になります。冒頭のイメージ写真は、その入口エリアにある「新事務棟」です。写真で分かる通り、放射線防護対策が不要となっています。同エリアで抑えたい設備として「大型休憩所」も挙げられます。こちらの中にある食堂で、作業員の方々が温かい食事取れるようになりました。

福島第一原発が今どのようにあるか?それを一番に物語っているのが、この入口付近エリアの状況です。この場所は、通勤のバスを待つ場所でもあり、日本中にある工場と変わらない風景がそこにはあります。これらは原発事故後に新しく作られたものです。入口付近のこの状況は「大気中への放射性物質の飛散」が、どの程度抑えられているか分かり易く示していると言えます。

進む構内除染

9月24日撮影 1,2号機原子炉建屋と西側のり面
9月24日撮影 1,2号機原子炉建屋と西側のり面

増え続ける汚染水対策として行われている「フェーシング」という作業があります。これは雨水が地下へ浸透することを防止し、地下水を抑制するために行われてる作業です。写真で注目したいのが「のり面のモルタルが吹き付けられた様子」です。現在、原発事故による避難区域で行われている除染と同じように土が削られ、その上に吹き付けられています。雨水の浸透を防ぐための処置が、除染の効果を持っています。

バス車内からの構内視察の模様
バス車内からの構内視察の模様

構内除染がいかに進んだかは、一般の方が1~4号機原子炉建屋西側に行ける状況が表しています。バスを降車しないケース(現場に降りない)であれば、簡易的な装備で原子炉建屋直近の様子を伺う事が出来るのが現状です。1時間ほどの、構内視察において、10マイクロシーベルトの積算被ばくを受ける程度にまで、構内は改善されています。

構内の空間線量の変化は、サーベイマップと呼ばれる空間線量をマッピングしたものからも読み取れます。現在においては、1~4号機周辺エリアを除けば、10マイクロシーベルト未満/時間のエリアになるまで、除染が進みました。

画像
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東京電力HP 福島第一原子力発電所サーベイマップ より抜粋

見える化された放射線管理

事務所内で表示される現場空間放射線量モニタ
事務所内で表示される現場空間放射線量モニタ

構内作業エリア事に、放射線量を測るモニタリングポストが配置されています。測定データは電波で飛ばされ、作業される方々が自由に見れるよう、タッチパネル式モニタが事務所に設置されています。これにより、測定場所ごとに現在時の詳細なデータを、自由に知ることが出来るようになっています。

作業エリアは完全防備が続く、放射線防護装備は負担が大きい

事務仕事を行える「新事務棟」、作業員の方々が休憩でき、食事がとれる「大型休憩所」が整備されました。除染が進み、構内入口エリアでは防護対策が不要になるほど改善が進みました。

10月2日 港湾にて海側遮水壁の説明を受ける筆者
10月2日 港湾にて海側遮水壁の説明を受ける筆者

ですが、発電所入口付近を除き、構内面積のほとんどを占める「管理区域」と呼ばれる放射線被ばくをする作業エリアでは、今も防護服に身を包み、内部被ばく防止のために防護マスクをする状況は続いています。これは作業をする人間が内部被ばくを完全に防ぐためと、作業により付着する放射性物質による汚染を構外に持ち出さないために講じられた措置です。

写真は取材に入った時の様子です。一般の方との視察と違い、バス車外に降りるため、実際の作業員の方と同じ装備に身を包みました。防護服の下には、10月になっても熱中症を防ぐため、クールベストを着用しました。内部ひばくを防ぐためのマスクを、たった2時間程度の着用しただけで、終始、防護マスクを締め付ける力から、頭痛に悩まされる状況になりました。ただそのエリアに入るだけの、基本的防護装備が働く方にとって大きな負担になっている状況は続いています。

事故直後から比べれば改善が進んだ労働環境、だが「働きやすい」までにはなったのか?

原発事故から4年半、現場は、事故直後と比較をすれば劇的に改善されています。作業員の方々の月平均積算被ばく放射線量は、約0.8ミリシーベルトまで下がっています。1年で換算すれば0,8ミリ×12ヶ月=9,6ミリとなります。この数値は、外部被ばくによるものです。どの程度の被ばく量か、例を挙げれば1年に1回CT検査を受けるのと同等の量です。(国立研究法人 放射線医学研究所 放射線被ばくの早見図についてを参照ください。)

作業員の方々が被ばくする線量は、かなり改善が進んできたと言えます。しかし放射線被ばくは、合理的に可能な限り低減する原則があり、さらなる被ばく低減は必要です。

仕事をする上で最低限必要な、「事務所」、「食事をとれる環境」、「休める環境整備」が進んできました。作業現場を出ればようやく一般産業並になってきました。ですが、作業時の身体的苦痛はあまり変化がありません。夏場の暑さ、冬場の寒さといった外作業の苦痛と同時に、「放射線防護装備」による負担は続いています。

誰しもが劣悪と感じた忌避した労働環境は、この4年半で働くことが出来る環境へと変わってきたことは事実です。ですがそれは事故直後の状況に比べれば、という条件がつきます。これから求められる労働環境への課題は「働きやすい環境の整備」です。これが成し遂げられる事が「働いても良いと思える現場」へと繋がり、早期の健全な廃炉へと繋がっていきます。

廃炉の意義は、私達の生活の安心へと繋がっています。厳しい原発事故現場の中で、日々作業される方々が守られ続けていくよう、これからも改善を求め続けていくことは重要と言えます。