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スケボー教室どう選べばいいの? 知らなきゃ損するタイプ別のメリット・デメリットは

吉田佳央フリーランスフォトグラファー/スケートボードジャーナリスト
今やスケートボードスクールはキャンセル待ちが出るほどの人気に。撮影:吉田佳央

スケートボードスクールが活況を呈している。

東京五輪での相次ぐメダル獲得はもちろん、”ゴン攻め”や”ビッタビタ”などの言葉を世間に浸透させた瀬尻稜氏のフランクな解説や、滑走後に他国選手達に抱き抱えられたシーンが話題となった女子パークの岡本碧優選手など、競技としての魅力だけではなく、元来スケートボードが持っているカルチャーとしての魅力が伝わったことも、より人気に拍車をかけているのだろう。

ただ、いざやってみようとスクールを探しても、何を基準に選んだら良いのかわからないという人も多いのではないだろうか。現在はキャンセル待ちが出るほどの人気になっているとはいえ、むやみやたらに選んで失敗はしたくないというのが本音というところ。

一番手近なのは、やはり近所にどんなショップやパークがあるのかを調べて、そこに問い合わせてみることだろう。今は体験会から、初心者・中級者向けといった形でクラス分けをして行っているところが多いので、数年前に比べ受講に対するハードルは格段に下がっている。

とはいえ、実際のところそれだけでは細かな情報は掴みにくいし、特に初心者に至っては、具体的にどんな違いがあるのか理解できるはずもない。

そこで今回はスクールを、集団・少人数制・マンツーマン・オンラインの4タイプに分け、それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介していくことにしよう。

仲間づくりに最適な集団スクール

初心者におすすめな大人数のスクール。 撮影:吉田佳央
初心者におすすめな大人数のスクール。 撮影:吉田佳央

一言に集団スクールといっても実は何パターンか形式があるのだが、ここでは複数人の講師がいてそれぞれグループ分けして進める形式ではなく、学校の授業のように一人の講師が多くの生徒を教える形式を紹介する。

まず大人数でのスクールの一番の魅力は、なんと言っても皆で楽しめるところにあると言える。

毎週集まって皆でワイワイ楽しむことは、実はスケートボードの上達にはとても重要だ。オリンピックで選手達が、事あるごとに”楽しむ”や”仲間”という言葉を発していたのも、「お互いに讃えあって自分超えをしていく」という文化がスケートボードには根付いているからであり、それこそが最大の魅力であるからに他ならない。

大人数で受講する分料金が安くなるのもメリットと言えるだろう。

反面でデメリットとして、個人へのフィードバックが少なくなってしまう点が挙げられる。もちろんそれを補うために、各スクールではトリックごとに難易度を段階分けしたり、カリキュラムを組んだりしながら、皆が万遍なく目標を持ちつつ一つの方向に向かっていけるような工夫はしている。

ただ、大人数で講座を進める以上、密度が薄くなってしまうのはある程度仕方のないことだ。むしろ、それだからこそ安価なのだ、と割り切って捉える方が良いだろう。

そもそも個人の嗜好が固まっていない本当の初期段階では、皆が総じて同じような基礎を練習するものだ。まだ一緒に練習する友達がいないケースも多いので、右も左もわからない初心者にとってはメリットのほうが大きいと言える。

それに参加者の中には、「初見から横でずっと講師に見られているのもしんどい」と言う人も多い。それではお互いに疲れてしまうだけなので、距離感という意味でも、この形式は初心者に最適ではないかと思う。

一点気を付けたいのは、受講者の年齢層だ。今は子どもの参加者が非常に多く、大人のクラスがあっても「親子参加OK」の場合では雰囲気も変わってきてしまう。

ただし大人向けのスクールは、平日の夜か土日の開催と日時が限られている場合が多く、特定のスクールには同じ人が参加している場合が多い。その分友達作りもしやすいので、まずはこういったものから気軽に参加してみると良いのではないだろうか。

やりたいことが固まってきたら少人数制スクールへ移行を

五輪でもパークとストリートで種目が分かれていたように、ある程度基礎を覚えてやりたいトリックが出てきたら、その方向性に合わせて、より専門性の高い少人数スクールを受けてみよう。撮影:吉田佳央
五輪でもパークとストリートで種目が分かれていたように、ある程度基礎を覚えてやりたいトリックが出てきたら、その方向性に合わせて、より専門性の高い少人数スクールを受けてみよう。撮影:吉田佳央

初心者スクールにしばらく通って基礎がある程度できるようになってきたら、次は少人数制スクールへの移行をオススメしたい。

これはスケートボードスクールに限らずどんな習い事でもそうだと思うが、ある程度できるようになって物事への理解が深まってくると、「次はあれがやりたい!」 といった方向性が定まってくる人が多いし、トリックの向き・不向きも徐々にわかってくる。

そうなると、適切な指導方法というのは個人で変わってくるため、集団よりも個人に寄り添った指導が必要になるのが必然的な流れだ。

少人数制スクールの詳細な内容は個々のスクールで違いはあるものの、大まかには講師が複数人の生徒を順番に回り、個別にアドバイスしていくのが一般的。

他の人を見ている時や次のレッスンまでに行うべき自主練習も含め、やりたいトリックのコツやポイントを教え、全体をグルグル回りながら一定の時間をおいてまた戻ってくる。そこで教えている事ができているかを確認するといった方法だ。

アドバイスされたことが身に付いていればもちろん問題なく、たとえまだできなくても身体の使い方から話の噛み砕き方まで、できない原因を探ってしっかりとフィードバックをしてくれるため、一人でやみくもに練習するよりも上達は確実に早くなるだろう。

そういった細かな配慮がある分、デメリットとしては大人数に比べて値段もどうしても高くなってしまう点が挙げられるが、熟練の講師ともなると、生徒ひとりひとりに合った目標を与えて進むべき道を示してくれる人もいるので、得られるものは非常に大きいはずだ。

また、更なる上達のためには継続的な指導も必要になってくる。自分に合う先生が見つかったら定期的にずっと通い続けることと、そしてなるべく同じくらいのスキルの人と参加することが望ましい。

教える側からしても、あらかじめ生徒のスキルを理解している方が集団スクールも含めてやりやすいのは当然だ。そして参加者が同じくらいのレベルのトリックに挑戦している人達ばかりならば、互いに励まし合い切磋琢磨しながら楽しんで成長することができるので、相乗効果は一層大きいと言える。

より上を目指したい人向けのマンツーマンレッスン

マンツーマンになると、ひとつのトリックの成功だけに限らず大会への臨み方や技構成に至るまで総合的なアドバイスをもらうことができる。撮影:吉田佳央
マンツーマンになると、ひとつのトリックの成功だけに限らず大会への臨み方や技構成に至るまで総合的なアドバイスをもらうことができる。撮影:吉田佳央

「さらに上を目指したい! プロになりたい!! 」という人にはマンツーマンレッスンもある。

もちろん初級~中級者も多くいるが、マンツーマンとなるとかなりの上級者が受講しているケースもあり、場合によっては講師でもできない、全国大会で優勝を狙うようなすごく難しいトリックを、ゴン攻めしながら習得を目指すという場合もある。

スケートボードはすごく繊細な乗り物で、トリックが複雑かつ高度になればなるほど技術以外の部分、メンタルなども非常に大切になってくる。言い換えれば、そこまでくるとマンツーマンレッスンでないと効果が出づらくなってしまうというわけ。

別の言葉で例えるならコーチの感覚に近いといったところだろうか。

今やスケートボードも分析が進み、コンテストにおいても戦略がものすごく重要になっているので、上達すればするほど個別レッスンにしていった方が良いという考え方が、現在のシーンには定着しつつある。

もちろんその分料金も高くなってしまうが、より細かく、トリックの成功だけに限らない総合的なアドバイスがもらえるので、上を目指すためには間違いなく必要になっていくだろう。

2024年のパリ五輪でもスケートボードは競技に採用されているし、2028年の五輪はスケートボードのメッカであるロサンゼルスでの開催なので、そこでもまず採用されるとみて間違いない。これらの事実を見ても、「スキルが高くて、なおかつ上を目指したい人ほどマンツーマンレッスンにするべき」という流れは、今後も加速していくことが予想される。

時間制約や交通の便の影響を受けにくいオンライン

いつでもどこでも気軽に受講できるオンラインは、時間制約の多い大人にもピッタリ。写真提供:中坂優太
いつでもどこでも気軽に受講できるオンラインは、時間制約の多い大人にもピッタリ。写真提供:中坂優太

最後にまだまだ数は少ないものの、コロナ禍で生まれた新しい流れともいえるオンラインレッスンにも焦点をあててみたい。

まだスケートボードの世界ではオンライン指導の方法が確立されていないため、内容的にこれといった決まった形はない。最も多い形式が、参加者に事前に動画を送ってもらい、それを分析して講師がアドバイスを行うというものだ。

参加者は、自分の滑走している姿を見ながらレッスンが進んでいくため、自らをものすごく客観視できるという点に特徴がある。さらに講師は、参加者本人が見てもわからないような部分も当然理解しているので、そこから身体の使い方や身体作りのアドバイスももらえるというわけ。

実際に今年からオンラインレッスンを事業化した中坂優太さんも、特徴が明確なフィードバックができ、そこの満足度が高いおかげでニーズも高まってきていることを実感していると話す。

また、他のスクール形式にはないオンラインならではの特徴として、レッスンパターンが豊富であることと、どこにいても受講可能であるということの2点が挙げられる。

中坂さんのスクールでも1ヶ月で1万円の定額制で常にフィードバックをもらえる形式と、20分1レッスンを1000円という従量課金形式の2パターンを導入している。参加者が自分の裁量に合わせて気軽に参加できるというのは大きな魅力だろう。

そして、自宅近くにスクールがないという人の参加はもちろん、中には海外からわざわざ参加してくれる人もいるというのだから、距離という壁がなくなることは双方にとってメリットが大きいといえるだろう。

さらに受講形式の自由度の高さは、参加者の年齢層にも表れている。オンラインのレッスンは40代以降の大人に人気だそうだ。

これは、普段から仕事や家庭で何かと時間的な制約が多いことも一因ではあるが、大人は子供に比べて成長スピードが遅くなりがちなため、決まった日時で定期に開催されるスクールよりも、コソコソと練習してある程度形になってきたタイミングで見てもらった方が効率的という側面もあるからだ。

ただし自由度が高い一方、指導のクオリティという面ではどうしても対面式に劣ってしまう部分もある。事前に送ってもらう映像の質は参加者任せになってしまうため、そこが不十分だと実際の目で確認するより気づきが少なくなってしまうこともある。身体の使い方を教えるにしても、言葉とボディランゲージにプラスできるのは、事前に用意したサンプル動画くらいになりがちだ。講師が意図したことがどこまで伝わるかは、参加者の理解力に委ねられる部分もあると言える。

自分に合ったスクール選びを

トリックの成功を共に喜び分かち合える。そんな先生に出会えれば、あなたのスケートボードライフは間違いなく有意義なものになるでしょう。撮影:吉田佳央
トリックの成功を共に喜び分かち合える。そんな先生に出会えれば、あなたのスケートボードライフは間違いなく有意義なものになるでしょう。撮影:吉田佳央

以上のように、どのスクールにも一長一短はあるし、なんでもかんでもとにかくスクールに行けば良いというものでもない。それぞれのやり方にそれぞれの良さがあるので、まずは自分にあったスクールを見つけることが大切だ。

オリンピックのフィーバーによって世間の大きな話題を呼び、新たに始める人が爆発的に増えているスケートボード。せっかく興味を持ってくれた方が、その最初の一歩を失敗しないように、今回の記事がほんの少しの道標になってくれたら幸いである。

フリーランスフォトグラファー/スケートボードジャーナリスト

1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。Instagram:@yoshio_y_

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