ヤマト、「三方よし」狙う仕組みづくりへ    運賃アップ、残業時間半減など「働き方改革」で

「働き方改革」を柱とした中期経営計画を発表する山内雅喜社長(筆者撮影)

ヤマトホールディングスは28日、2019年度末までに社員の残業時間を半減するとともに、コンビニなど自宅外での宅配便受け取り拠点を増やすネットワークを強化し、夜間配達に特化したドライバーを1万人超確保すると発表した。こうした「働き方改革」に向こう3年間で1500億円を投資する。

配達特化ドライバー、1万人雇用へ

従来、ヤマトの配達員は配達、集荷などのさまざまな仕事をこなす多機能型セールスドライバー(SD)が大半だった。だが、eコマースの発達によって、配達個数が増えるとともに、夜間配達のニーズが増え、SDの残業が常態化した。それを正常化するため、配達だけに特化した7時間勤務の契約社員を夜間中心に配置することにした。

一方、eコマース大手のアマゾンなど法人向け配達運賃の見直しにも取り組む。これまでは業者ごとに個別に運賃を決めていたが、運賃の決定プロセスを標準化する。出荷量だけでなく、不在率が多くなれば運賃を高くしたり、燃料費や時給単価など経済環境の変化によるコストアップを運賃に反映させたりする仕組みを採用する。これまではeコマース業者とヤマトとの力関係で運賃が決まり、人件費がアップしても運賃が上げにくい構造になっていたが、継続的に運賃があげられるようにするのが狙いだ。

コストアップ分を運賃に反映させる仕組みについては、eコマース業者や消費者の理解は簡単には得られないかもしれない。そのためロボットや人工知能(AI)の導入で業務の効率化を図り、人件費などのコストアップ分がすべて運賃に反映はされないよう努力する考えだ。

消費者にも負担求める

また消費者にも「努力」を求める。だれでも使えるオープン型の宅配ボックスやコンビニなどの受け取り拠点を増やし、自宅外での受け取り比率を2019年度末までに10%に引き上げるという。すべての荷物を消費者に手渡しするのではなく、消費者が受け取り拠点まで足を運ぶ比率を高め、配達員の負担を減らすとともに運賃上昇をできるだけなだらかにすることが狙いだ。

1時間余りの会見の最後で山内雅喜社長は「あえて言わせてもらうと・・・」と言いながら、こう話した。

「『送料無料』といういい方は適切ではない。それぞれの立場で便利な世の中にしていくことが望ましい。適切な運賃をいただき、よりよいサービスを提供するといういい循環になってほしい」

つまりeコマース業者、物流業者、消費者の3者がそれぞれに負担を分かち合い、生活の利便性を継続的に確保するという考え方である。eコマース業者が「送料無料」とアピールしても実際には物流業者への運賃は発生している。そのシワ寄せは物流業者や商品提供業者への価格値下げ要求となってあらわれる。

注文から配達までの時間がどんどん短縮され、夜間でも自宅に荷物が届くという便利な生活への欲求は高まるばかりだ。だがその利便性の陰には、配達員の長時間残業という負担増加という実態があった。

利便性が誰かの犠牲のもとに成り立っているとすれば、その仕組みは持続的ではないだろう。かつて近江商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を商売の心得としていた。売り手ばかりが儲け、あるいは買い手が安く買いたたくばかりでは、経済社会は長続きしない、という教えである。

eコマースよし、物流業者よし、消費者よし

ヤマトの今回の発表は「eコマースよし、物流業者よし、消費者よし」の「三方よし」を目指す内容と言える。ヤマトは、利便性を提供し収益を上げるeコマース、その利便性を支え、収益を確保する物流業者、利便性を享受する消費者の3者が応分の負担をする社会を目指すことを求めているのだ。

ヤマトが28日に発表した中期経営計画では、eコマース業者には運賃アップを受け入れるという「負担」があり、消費者には自宅以外でも受け取るという「負担」が生じる。ヤマトは二つの負担に見合ったサービス内容の向上を実現するという厳しい責務を負うことになる。

「サービスが先、利益は後」というヤマトの企業DNAについて、山内社長は「ヤマトの理念は変えない」と言った。「三方よし」と社会が受け止めるだけのサービスを磨き上げることができるかどうか。ヤマトの真価が問われている。