筆者も国会で意見……命を奪う「あおり運転」厳罰化の対象となった2つの危険行為とは? 

あおり運転による重大事故が相次ぐ中、厳罰化が抑止力になることが期待されています(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

「あおり運転」など危険運転の適用範囲を拡大する「改正自動車運転処罰法」が、6月5日、参議院本会議で可決・成立しました。

【「あおり停車」も危険運転に 改正自動車運転処罰法が成立】(毎日新聞/2020.6.5)

 上記記事に書かれていますが、今回の改正によって、相手の車を妨害する目的で停止する行為も、「危険運転致死傷」の対象として厳しく罰せられることになったのです。

■東名高速上のあおり事故が投げかけた大きな課題

 今回の法改正のきっかけとなったのは、2017年6月に東名高速道路上で発生したあおり運転による死亡事故でした。

 子どもたちの目の前で、両親が犠牲となった痛ましいあの出来事……、記憶されている方も多いことでしょう。

 パーキングエリアでのトラブルをきっかけに逆上した男が、夫婦と子ども2人が乗ったワゴン車を執拗に追いかけ、最終的に追い越し車線でワゴン車の前に割り込んで停車。その直後、後続のトラックがワゴン車に追突し、夫婦が亡くなったという事故でした。

 ワゴン車を停車させた男は、危険運転致死傷罪で起訴されました。しかし、結果的に高裁から一審に差し戻されたのです。

 危険運転致死傷罪では、「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第2条4号)」が処罰の対象となっているため、「停止」という行為を「危険運転」として裁くことができない、というのがその理由です。

 しかし、どう考えても、高速道路で車の前方に割り込み、停止させる行為は危険です。

 現実にこの事故では、男の「停止行為」によって重大事故が引き起こされ、2人の命が奪われたのです。

 そこで、こうした悪質な行為に対して実態に即した対処をするために、今回、法律を改正して「妨害目的での前方停止」という2つの類型(=罪の対象となる行為)を追加しようということになりました。

 

 6月2日、私は参議院の法務委員会に3名の参考人の1人として出席し、今回の法改正について意見を述べました。そして、各議員からの質疑に答えました。

 当日のやり取りは、すべて参議院のHPに録画として記録されており、いつでも見ることができます。

 法律の専門家による「あおり運転」の定義や法案のポイント解説、また、法務委員会に属する各議員の発言も聴くことができますので、ぜひご覧いただければと思います。

 ●参議院法務委員会インターネット審議中継(2020.6.2) <筆者 キャプチャ 作成>

2020年6月2日の参議院法務委員会(参議院HPより)
2020年6月2日の参議院法務委員会(参議院HPより)

■妨害目的の「停止」も危険運転に

 では、今回の法改正で「危険運転致死傷罪」の2条に追加された「2つの類型」を、法務省が「典型例」として作成したイラストをもとに見ていきましょう。

 法律の条文なので少々わかりづらいのですが、そのまま転記します。

1) まず、「改正後の2条5号」は、以下の通りです。

<車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為>

 典型例としては、以下のような状況をイメージしてください。

(法務省提供)
(法務省提供)
(法務省提供)
(法務省提供)

2) 次に、「改正後の2条6号」は、以下の通りです。

<高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行をさせる行為>

 この典型例としては、以下のような状況が示されています。

(法務省提供)
(法務省提供)
(法務省提供)
(法務省提供)

 上記2例のような行為によって事故が発生した場合の刑罰は、いずれも、

 

●相手が死亡した場合  → 1年以上の有期懲役(最大20年)

●相手がけがをした場合 → 15年以下の懲役

 となっています。

■客観的な証拠を残すため、ますます高まるドライブレコーダーの必要性

 一方、6月2日には、「あおり運転」に関する改正道路交通法も可決・成立しました。

 通行を妨害する目的で、蛇行したり急ブレーキをかけたりし、相手に危険を生じさせた場合は、最高で5年以下の懲役、または100万円以下の罰金を科すことになったのです。

 さらに、こうした「あおり運転」を行うと、「免許取り消し」の対象になり、一定期間免許を再取得できなくなります。

 今回の法改正による一連の厳罰化が、悪質な「あおり運転」の抑止につながることを期待します。

 一方で、危険回避のためのとっさの車線変更や急停止など、ドライバー本人にまったく悪気のない行為までもが「あおり運転」と誤認される場合があるかもしれません。

「自分はあおり運転など絶対にしない!」

 そう思っている人にとっては、心配ですね。

 こうした「冤罪」の危険性については、6月2日に行われた参議院法務委員会の参考人質疑でも議論となったのですが、万一のときにわが身を守るためにも、ドライブレコーダーの装着をおすすめします。

 映像さえ残っていれば、その瞬間を立証することができるからです。

 自分があおり運転の被害に遭ったときはもちろん、加害行為を疑われたときのためにも、備えておくことが必要でしょう。

 改正された新しい法律は、今年7月までに施行される予定です。

 被害者にも加害者にもならない運転を心がけてください。