歩行者に衝突した自転車女性が死亡 歩行者の責任は、刑事罰は受けるのか?

歩道で自転車と歩行者が衝突。自転車側が死傷したら歩行者の責任はどうなるのでしょう(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

『歩行者と衝突、自転車の女性死亡』(2019.12.11 NHK総合)

 昨年、このようなニュースがテレビで流れていました。

 えっ、聞き間違いかな? そう思い、もう一度テレビに目をやりました。

 やはり、間違いありません。亡くなったのは、歩行者ではなく、自転車の方だというのです。

 報道によれば、この事故は12月11日午前7時半ごろ、東京・文京区の歩道で発生しました。

 歩道を走っていた自転車の女性(60代くらい)が、右側の路地から出てきた歩行者の中学生と衝突し、そのはずみで転倒。近くに設置されていたガードパイプで胸を強く打ち、約1時間後に死亡したというのです。

 歩行者の中学生にケガはありませんでしたが、自分とぶつかった人が死んでしまうという出来事は、大きなショックだったに違いありません。

車道左端にペイントされた自動車レーン(筆者撮影)
車道左端にペイントされた自動車レーン(筆者撮影)

■相手が亡くなったら、歩行者にも責任が生じるのか?

 このニュースが流れた後、何人かの方から連絡がありました。

「歩行者でも死亡事故の加害者になってしまうなんて、本当に怖いですね。中学生でも逮捕されるんでしょうか?

「こういう場合、自転車と歩行者の過失割合はどうなるのですか?」

「歩行者側にも、亡くなった人の遺族から賠償金を請求されるのかしら?」

 今回の事故は歩行者が中学生だったということもあって、特に、お子さんをお持ちの方が心配されていました。

 では、歩道上で歩行者と自転車がからむ重大事故が発生し、自転車側が死亡したり大けがを負ったりしたとき、歩行者側の刑事罰や民事的な責任はどうなるのでしょうか。

 先日も「自転車賠償保険」についてお話を伺った、一般財団法人全日本交通安全協会に質問をしてみました。

■自転車はあくまでも「車両」、歩道上は歩行者優先

Q

歩道の自転車と歩行者が衝突し、自転車の女性が死亡しました。歩行者の責任はどうなりますか。

A

・道路の状況をきちんと確認する必要がありますが、一般論として歩道を走行中の自転車と歩行者が接触して自転車が転倒した場合は、歩行者側に進路を故意にふさぐといった行為がないかぎり、その責任は問われません。

・自転車は「車両」です。通行方法は特別の場合をのぞき、自動車と同じです。歩道を通行する場合は「徐行または一時停止」をして、歩行者の通行を妨げないようにする義務があります(道路交通法63 条)。

・歩道に接する(交差する)路地や家の出入口がある場合、自転車の運転者は歩道に歩行者がいないかどうかなど安全を確認しながら走行するとともに、路地や家の出入口から飛び出してくる横断者に注意して徐行する義務などもあります。

 おわかりいただけましたか?

 冒頭のような事故の場合、歩行者の側に責任が問われることは、まずないということです。

 逆に、もし、歩行者の中学生が死傷すれば、自転車側には大きな責任と賠償責任が科せられるのです。

自転車用レーンはあっても走るのが怖い道路も(大阪府堺市で筆者撮影)
自転車用レーンはあっても走るのが怖い道路も(大阪府堺市で筆者撮影)

■車道が危険なとき、自転車はどこを走ればよいのか?

「自転車は基本的に歩道を走ってはいけない」このルールさえ守れば、歩行者との衝突は避けることができます。

 しかし、自転車にとっても車道は危険がいっぱいです。子供はもちろん、大人でも歩道を走りたくなる場面がよくあるのではないでしょうか。

 そこで、以下の質問をしてみました。

Q

交通量の多い車道や、自転車レーンのない車道など、自転車が走行するには危険な道路が多数あります。こうした場合、つい、歩道を通りたくなるものですが、それでも違反になりますか。

A

原則、自転車は車道の左側端を通行することになっています。しかし、交通量が多い場合や工事中、または轍(わだち)があるなど、走行に危険を伴う場合には、歩道を通行することができるということになっています。以下を参考にしてください。(道路交通法第63条の4第1 項、道路交通法施行令第26条)

<自転車が歩道を走ることが許される場合>(「交通の方法に関する教則」より)

● 歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等があるとき。

● 13歳未満の子供や70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が普通自転車を運転しているとき。

● 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場合や、自動車などの交通量が大変多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などの接触事故の危険がある場合など、自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき

■自転車に乗るときは、子供も大人も「加害者」の視点で保険の備えを

 自転車でも、上記のような理由があるときは、歩道を通ってよいことがわかってホッとしましたが、逆に、歩行者に対しては十分に気をつけなければなりませんね。

 自転車は「車両」です。車と同じく、万一、歩行者を死傷させたり、他人のクルマをキズつけた場合は、被害者側に損害賠償をしなければなりませんので、保険の備えも不可欠です。

 ちなみに、今回質問に答えていただいた、一般財団法人全日本交通安全協会によると、同協会が扱う自転車賠償保険で、最近、保険金を支払った事例としては、以下のようなケースがあったそうです。

<最近の自転車保険支払い事例>

・子どもが自転車で他車を傷つけた→80 万円

・人身事故を起こした→対人保険 数百万程度

・自損事故で運転者が死亡→死亡保険 1000万円

 加害者の年齢に、大人も子供も関係ありません。

 自転車側がルールを無視していた場合は、刑事的にも罰せられます。

 『交通の方法に関する教則』の中には、「自転車に乗る人の心得」が詳しく書かれています。まずは自転車が歩道を走ってもよい場合について、親子で一度じっくり目を通してみることをお勧めします。

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