世界の交通事故死者数は年間130万人 きょうは死傷者を想い、被害ゼロを願う日

世界の交通事故死者数は年間約130万人。きょうは国連が制定した犠牲者の日(提供:アフロ)

 2018年11月17日(土)、午後6時。

 東京・芝公園『平和の灯』前の広場に、キャンドルの優しい灯が揺らぎ始めました。

 その後ろには、ライトアップされた東京タワーが、まさに大きなキャンドルのように輝いています。 

(撮影/長谷智喜氏)
(撮影/長谷智喜氏)

 この日、開催されたのは、『世界道路交通被害者の日・日本フォーラム』(ワールドディ・ジャパン)。キャンドルのまわりには、各地から遺族や被害者支援に取り組む人々らが次々と集まり、祈りをささげ、語り合います。

 中には、被害者の写真を胸に抱いている方もおられました。

 群馬県から駆け付けた黒崎陽子さんもその一人です。3年前、当時13歳だったわが子をトラックに奪われました。自転車に乗っていた息子さんは青信号で横断中だったそうです。

「昨年までは自宅でキャンドルを灯してこの日を迎えていました。でも、今年は初めて、ここへ来てみようと思ったのです」

13歳で亡くなった我が子の写真とともに参加した黒崎さん(筆者撮影)
13歳で亡くなった我が子の写真とともに参加した黒崎さん(筆者撮影)

 呼びかけ人の一人である小栗幸夫氏(千葉商科大学名誉教授)は語ります。

世界では毎年、交通事件によって約130万人にものぼる死者が出ています。重傷者は、2000~5000万人とも推計されています。ワールドディとは、現代文明が生む最大の道路交通被害者に思いを馳せ、悲しみのない世界を祈る日なのです」

 小栗氏自身も、姉を交通事件で失った遺族です。

■国連が定めた『世界道路交通犠牲者の日』

「世界道路交通犠牲者の日」をご存知でしょうか。

 そもそもの発端は、1993年、家族を交通事件で失ったイギリスの母親らが中心となって立ち上げた「ロードピース」というNGO団体でした。

 その活動はヨーロッパを中心に支持を広げ、WHOも参画するかたちでの国際的な取り組みとなっていきます。

 そして12年後の2005年、交通事件による被害者やその家族の喪失を重く見た国連は、11月の第3日曜日を「World Day of Remembrance for Road Traffic Victims(世界道路交通犠牲者の日)」と定め、総会で議決します。

 以降、世界各国で、同じ日、同じ目的で、被害者を悼むさまざまな取り組みが行われているのです。

『生命のメッセージ展』代表をつとめるアーティストの鈴木共子さんもワールドディに参加。19年前、当時19歳だった大学生の一人息子を、飲酒運転の車に奪われました(筆者撮影)
『生命のメッセージ展』代表をつとめるアーティストの鈴木共子さんもワールドディに参加。19年前、当時19歳だった大学生の一人息子を、飲酒運転の車に奪われました(筆者撮影)

 

 このとき国連は、

 ●シートベルトやチャイルドシートの着用 

 ●ヘルメットの着用 

 ●飲酒運転の防止 

 ●過剰な速度違反の防止

 ●道路インフラの整備

 などを被害軽減のための重点的な取り組み課題とするよう、各加盟国に強調し、発展途上国については資金や技術面での国際支援を行っていくことを表明しました。

■交通事故死者一人ひとりに未来があり、家族がいる

 警察庁は、平成29年中(2017年1月~12月)の交通事故死者数を3694人と発表しました。これは昭和23年に交通事故統計を開始して以降、最小の交通事故死者数です。しかし、この数字を見て、「少なくなった」と喜ぶことはできません。

 今年初めてワールドディに参加した、東京都の鈴木理絵さんは語ります。

「私は昨年、9歳の息子を失いました。私は息子の身体を冷凍保存したいと訴えました。いつか、息子の命をよみがえらせることができるかもしれない、そう思ったからです。でも、それは無理なことでした……。統計上は、被害者は1人なのかもしれません。でも、我が子を失った私たち夫婦、可愛い孫を失ったそれぞれの両親……、本当に、一人の命が奪われることでどれほど多くの悲しみ、苦しみがあるでしょう。まだ、何をしていいのかわかりません。でも、今日、この場に来てみなさんとつながることができて、本当によかったと思っています」

2016年のワールドディ(撮影/長谷智喜氏)
2016年のワールドディ(撮影/長谷智喜氏)

 イギリスのNGOが立ち上がってから今年で25年。日本でもワールドディの活動の意義は全国に広がり、東京だけでなく、北海道、秋田、仙台、石巻、福島、群馬、名古屋、大阪、九州の被害者団体や被害の現場で開かれています。

全国交通遺族の会が解散した2012年、前同会の佐藤清志氏、小栗氏ら3人で継承したワールドディ。ソフトQカー(速度制御装置付電気自動車。小栗氏開発)が未来の安全な交通のシンボルとして登場(撮影/小栗氏)
全国交通遺族の会が解散した2012年、前同会の佐藤清志氏、小栗氏ら3人で継承したワールドディ。ソフトQカー(速度制御装置付電気自動車。小栗氏開発)が未来の安全な交通のシンボルとして登場(撮影/小栗氏)

「交通事故は、被害者、加害者の立場に関わらず、いつでも、だれにでも起こることです。ワールドディは決して被害者だけが参加するものではなく、被害を経験した人と、そうでない人の溝を埋めるためにあるべきだと思っています。世界の道路交通の被害は依然として途方もなく、悲しみはさらに大きくなっています。私たちはさらに連帯し、現代文明のもたらした暴力と闘わねばなりません。11月の第3日曜日、国連が年に一度、こうした日を設けていることをぜひ多くの方に知っていただきたいのです」

 そう語る小栗氏は、日本のワールドディのために、オリジナル曲『きみがいるから』を作詞作曲し、その動画はワールドディのWEBサイトにもアップされています。

https://worlddayofremembrance.org/wdr-music-video-by-yukio-oguri/?fbclid=IwAR22IAZj4E-SHZ7B7-52eGLn-jwYH3JnpETX6OIhs_ZMSWLLB4YFkyuqMzw

 芝公園でのワールドディでは、最後に参加者全員がこの歌を合唱しました。

被害者遺族だけでなく、さまざまな立場の人が集まってキャンドルを囲んだ、2018年のワールドディ(撮影/長谷智喜氏)
被害者遺族だけでなく、さまざまな立場の人が集まってキャンドルを囲んだ、2018年のワールドディ(撮影/長谷智喜氏)

 2018年の「世界道路交通犠牲者の日」は、11月18日(日)です。

 ほんのいっときでも構いません。

 ぜひ、世界の人々とともに、交通被害の現実に、思いを馳せてみてください。

(撮影/長谷智喜氏)
(撮影/長谷智喜氏)