【高齢ドライバーの重大事故】 原因は「運転操作不適」が最多

交通事故死者が減少する中、「運転操作不適」の高齢者による事故は増加傾向にある(ペイレスイメージズ/アフロ)

 1月4日、警察庁は2017年の交通事故死者数を発表しました。

 事故発生から24時間以内に亡くなった人の数は、3694人。前年に比べて210人減少し、警察庁が保有する1948年(昭和23年)以降の統計の中では、最も低い数字となりました。

 死者が1万6000人を超え「交通戦争」と呼ばれていた昭和40年代、その後、減少したとはいえ、9年間連続で1万人を超えていた平成の初期の頃を思えば、かなり改善されたと言えるでしょう。

逆走85歳ドライバーが2人の女子高生を次々と……

 一方、高齢者人口の増加に伴い、これまでにはなかった新たな形態の事故が増えているという現実も浮き彫りになり、小此木八郎国家公安委員長は1月5日、高齢運転者の交通事故対策について「喫緊の課題」とコメントしていました。

 その矢先、『女子高生2人はねられ重体=85歳運転の車に ―前橋』(時事通信)という高齢ドライバーによる痛ましい事故のニュースが飛び込んできました。

 記事によれば、1月9日午前8時20分ごろ、前橋市北代田町で85歳の男性が運転する乗用車が対向車線にはみ出し、斜め向かいの民家の塀に衝突した後、自転車で通学途中だった女子高生2人に衝突し、2人は意識不明の重体で病院に運ばれたというのです。

 被害者にとっては、まさに不可抗力の出来事です。

 まもなくテレビ各局も、この事故のニュース映像を流しました。

 大きく変形した2台の自転車と黒い乗用車。現場は決して広いとは言えない生活道路です。通勤や通学で人通りも多く、本来なら最徐行を余儀なくされる時間帯に、なぜあのような事故が起きたのか……、にわかに信じられませんでした。

日本自動車研究所(JARI)で行われた交通警察の研修会にて衝突事故の被害者のダミーを検証(筆者撮影)
日本自動車研究所(JARI)で行われた交通警察の研修会にて衝突事故の被害者のダミーを検証(筆者撮影)

高齢者の加害死亡事故、全体の3割に

 昨年11月までの交通事故統計によれば、死亡事故を起こした原付以上の運転者(第1当事者=事故の原因を作ったとされる者)を年齢層別にみると、65歳以上の高齢者が3割近くを占めていました(807件。構成率27.7%)。

警察庁HPより、「年齢層別死亡事故件数の推移」
警察庁HPより、「年齢層別死亡事故件数の推移」

 また、死亡事故を起こした高齢運転者の「法令違反」をみると、『漫然運転』については全体の2割ほど(101件。20.9%)、『運転操作不適』については、なんと全体の4割以上(168件。42.4%)を占めていることがわかりました。

『運転操作不適』は、安全運転義務違反に含まれる違反ですが、そもそも運転操作が適正にできないとなれば、運転資格そのものを問われてしかるべきではないでしょうか。

警察庁HPより、平成29年11月末までの交通統計
警察庁HPより、平成29年11月末までの交通統計

 昨年(2017年)3月に施行された改正道交法では、75歳以上の免許更新時に認知機能検査が行われることになり、それによって第1分類(認知症の恐れがある)と判定された人には、医師の診察が義務付けられました。

 ところが、1月8日付の『京都新聞』には、「認知症恐れ指摘後の受診3割 運転免許取り消し避ける?」といった見出しの記事が掲載されていました。

加害者にならないために「運転免許の自主返納」の検討を

 高齢者が意識的に診察を拒否しているのかどうか? その実態は定かではありません。最近は私の周囲でも、高齢の親の認知症を心配する声やご近所のお年寄りの運転に不安を感じている人たちの声をたびたび耳にします。

 運転技術や体力などには個人差もあり、年齢だけでは判断できない難しい問題ですが、交通統計からは被害者にとってまったく予測不能な『運転操作不適』による高齢者事故が多発していることが明らかになっています。

 高齢ドライバーご本人もそしてご家族も、年頭に当たってこの現実を直視し、加害者にならないための「運転免許の自主返納」という選択肢について真剣に話し合い、検討することも必要ではないでしょうか。

 夕方の日本テレビの報道によれば、今回、女子高生2名に衝突する事故を起こした85歳のドライバーは、昨年秋に免許を更新していたそうです。しかし、家族はこの日の朝、本人に「運転しないように」と告げていたそうです

 免許更新時の認知症検査の結果は? またこの日の体調はどうだったのか。通勤・通学の時間帯に生活道路を運転することに、本人は危険性を感じなかったのでしょうか。

 家族の忠告を聞き入れてさえいればと思うと、残念でなりません。 

 児童や学生たちが安心して学校へ通える国にするにはどうすればよいのか……。

 様々な角度からの検証が必要です。