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1年に1度のご開帳!伏見の北向山不動院へ

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
北向山不動院の正面入口(※以下の写真も全て著者が撮影)

 スタートは近鉄電車の竹田駅南改札口が最も近い。改札口を出ると早速この日限りの立て看板を発見した。この時点で既に、今日が北向山不動院での年に1度のご開帳という特別感が伝わってくる。駅から南へ向かうと、ほどなく右手に安楽寿院が見えてくる。

 保延3(1137)年に鳥羽上皇の命によって創建され、皇后美福門院のために新御塔も造営された。しかし美福門院は高野山に葬られたため、二人の子である近衛天皇の遺骨が葬られ、現在は境内の一角が近衛天皇陵として宮内庁管轄になっている。その場所には豊臣秀頼の寄進による多宝塔が建っているのでわかりやすい。

豊臣秀頼によって慶長11(1606)年に寄進された
豊臣秀頼によって慶長11(1606)年に寄進された

 安楽寿院の西側に位置するのが鳥羽天皇陵と本日お目当ての北向山不動院だ。北向山不動院は、大治5(1130)年に鳥羽上皇の勅願で創建された古刹である。

 鳥羽上皇が病に伏せっていた際、興教大師が鳥羽離宮に呼ばれて病気平癒の祈祷を行うと、満願の日に不動明王が現れ、上皇の病気が平癒したという。回復した上皇は霊験あらたかな不動明王を、皇居を守るために、北の皇居に向けて安置したため、「北向きのお不動さん」と呼ばれるようになったと伝わる。

 本堂は正徳2(1712)年に霊元天皇の命によって東山天皇の御殿を移築したものであり、本日(1月16日)は鳥羽天皇の生誕の日であることから、秘仏で重要文化財の不動明王が年に一度のご開帳となっていた。

堂内では護摩木や御守り、ご朱印も受け付けていた
堂内では護摩木や御守り、ご朱印も受け付けていた

 普段は静かな境内に多くの参拝者が次々と訪れ、護摩木を奉納し、本堂に上がって不動明王に参拝していた。この冬の寒い時期ということもあり、また年中行事として紹介されることもほとんどないため、訪れる人は地元の人か信仰心の厚い人ばかりのような雰囲気。それでもこれだけ多くの人が訪れていることに驚いた。

 また境内ではぜんざいの無料接待が行われており、参拝者にどんどん振舞われていた。味はあっさりとしていて食べやすく、一口大に切り分けられたお餅がたくさん入っていた。また庫裡において墨絵新聞紙アート展が行われており、パン屋さんやコーヒー店の出店もあった。

 貴重な年に1度のご開帳、ぜひ来年は訪れてみてほしい。

大きな釜で炊かれたぜんざいが振舞われていた
大きな釜で炊かれたぜんざいが振舞われていた

京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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