城之内の決め台詞「サイナス」とは? ドクターXでよく見る業界用語を外科医が解説

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

10月から始まった人気ドラマ「ドクターX」第6シーズンは、これまでと同様に高視聴率を記録しているようです。

こうしたドラマをきっかけに、外科治療に興味を持ってくださる方が増えるなら、大変ありがたいことです。

今回は、ドラマを見て多くの方が気になっているであろう「業界用語」について、分かりやすく解説してみます。

サイナス

大門未知子の相棒である麻酔科医、城之内の決め台詞です。

「サイナス」とは、日本語でいうと「洞調律」です(正確には "normal sinus rhythm")。

簡単に言えば、「心臓が正常なリズムで動いている」「不整脈がない」ということを意味します。

城之内の仕事は、麻酔科医として手術中の全身状態を管理し、安定させること。

患者さんの心電図モニターの波形を見て、「サイナス」であることを確認し、これを毎回宣言しているのですね。

決め台詞としては”カッコいい”のですが、現実には、あえて「正常であること」を強調する麻酔科医はあまり見ないように思います。

むしろ手術では、心房細動などの不整脈を持っている高齢患者さんが多くいます

こうした不整脈がある際に、その存在を手術前に情報共有することはよくあります。

モノポーラー

手術で使う道具といえば、「メス」がよく知られているでしょう。

外科医が最初に「メス!」と言い放って看護師からメスをもらい、皮膚を切る。

手術シーンの定番です。

しかし、実は手術中にメスを使う機会は「最初に皮膚を切る時」くらいしかありません

手術によっては途中で数回メスが必要になることはあるものの、メスは使う頻度がかなり低い道具です。

では、何かを切りたい時によく使う道具は何でしょうか?

それが、たいていメスで皮膚を切った後に外科医が要求する道具、「モノポーラー」です。

別名「電気メス」とも呼びます。

メスのような刃物ではなく、電気を通電して組織を焼きながら切る道具です。

(※この記事の冒頭の写真に写っている道具です)

手元にボタンがあり、これを押すと通電し、細かい血管を凝固しながら切開できるのが利点です。

ボタンを押すと「ピーッ」と電子音が鳴り、電気メスの先が触れた組織から煙が上がります。

ドラマでは、モクモクと煙が上がる様子もリアルに再現されていますね

糸の名前

ドラマ中で、外科医が看護師に糸を要求することがあります。

この時、数字を使って、

「4-0(ヨンゼロ)」「5-0(ゴーゼロ)」

のように、太さを指定するのが一般的です。

数字が大きい方が細い糸で、7-0や8-0になると、髪の毛より細くなります。

さらに、糸の種類を数字の後につけて、

「4-0シルク(絹糸)」「5-0ナイロン」

のように細かく指定します。

手術で使う糸の種類は膨大にあります。

結ぶ組織の種類や、柔らかさなどの性質によって、細かく使い分ける必要があるためです

手術室看護師は、これらの糸の名前を一つ一つ覚え、外科医から要求された通りに手渡します。

ちなみに10月24日放送の第2回で、大門が肝臓手術で使用した「4-0吸収糸」は、時間が経つと体内で溶ける糸のことです。

実際には、吸収糸の中にも多数の商品があり、この中でも細かく使い分けています。

ドラマでは、いつも道具の受け渡しはスムーズです。

しかし、考えてもみてください。

看護師は、台の上に載った膨大な種類の道具の中から、必要なものを次々外科医に手渡さなければなりません

指示があってから目的の道具を探し始めていると、手術はスムーズに進みません。

かるた大会で、読み上げられた上の句を聞いて初めて下の句の札を探し始めるようなものです。

そこで看護師は、台の上の道具の配置をある程度頭に入れた上で、手術中に外科医の動きを見て手術の流れを把握し、

「次にどんな道具が要求されるか」

を予想しています。

要求される道具の候補を頭に思い浮かべ、外科医より一歩先に動き始めているのです

そのおかげで、外科医が道具の名前を発声して手を出した瞬間に、手のひらの上に目的の道具がスッと載るわけです。

ドラマでは外科医ばかりが目立ちますが、実は隣で看護師が頭をフル回転させているからこそ、こうしたスムーズさが実現しているのですね

医療ドラマの手術シーンについては、以下の記事でもまとめています。

医療ドラマでは描かれない真実|緊急手術の前に外科医がやること