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電通が発表! 日本のLGBTの割合は「左利き」とほぼ同じ

山口一臣THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)
日本で同性婚が当たり前になる日は来るのか?(写真:アフロ)

「LGBTとは何か」の認知は急激に広まった

 大手広告会社電通内に設けられた電通ダイバーシティ・ラボ(以下、DDL)が1月10日、「LGBT調査2018結果報告」を公表した。この調査はLGBTに関する人々の意識について調べたもので、2012年、2015年に次いで実施された。今回の調査は全国に住む20〜59歳の個人6万人からスクリーニングを行い、6229人を対象に行われた。

 LGBTというのは、L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダーといった性的マイノリティ(少数者)を表現する言葉だ。ここ1〜2年で社会的認知が急激に広がったので、ほとんどの人が知っていると思う。ちなみに、2015年の調査では「LGBTを知っていますか」という質問に対して、「知っている」「何となく知っている」と答えた人が37.6%だったのに対して、今回の調査では68.5%と倍近く増えている。

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 といっても、「知っている」と自信を持って答えた人は34.4%で、残り34.1%は「何となく知っている」という程度の認識だ。性的マイノリティの中にはLGBTで分類できない人もいる。DDLではセクシャリティを「身体の性」「心の性」「好きになる相手の性」(性的指向)の3つの組み合わせで分類した独自の「セクシュアリティマップ」をつくっている。この中で、異性愛者であり、生まれたときに割り当てられた性と性自認が一致すると答えた人を「ストレート」とし、それ以外の人をLGBT層と定義した。

DDL独自の「セクシュアリティマップ」
DDL独自の「セクシュアリティマップ」

 さて、この前提でLGBT層がどれくらいの割合でいるのかという、2012年調査で5.2%、2015年調査で7.6%だったものが、2018年調査では8.9%になっている。質問方法が違うので単純比較はできないというが、増加傾向にあることは間違いないだろう。ただ、実数としてのLGBT層が増えているのかというと必ずしもそうではない。DDLの調査担当者の話では、ここ数年でLGBT層に対する認知と理解が進んだことから、自らのセクシャリティについて考える人が増えたことや、アンケートに対して答えやすくなったことなどが関係しているのではないかという。

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職場でのカミングアウトにはまだまだハードルが……

「8.9%」というのは約11人に1人という計算で、左利きの人の割合とほぼ同じだという。実感として、どうだろう。「そんなにいるかな?」というのが正直な印象ではないだろうか。その謎を解くカギが「カミングアウト」(自分のセクシャリティを他者に伝えること)の割合だ。LGBT層に対して「当事者であることをカミングアウトしていますか」と質問したところ、実に65.1%が「誰にもカミングアウトしていない」と回答している。

 この質問は、誰に対してカミングアウトしているかも聞いているが、カミングアウトしていたとしても、相手の多くは家族や友人で、職場の同僚・仕事仲間というのは4.5%、職場の上司に至ってはわずか2.6%だった。「職場の同僚(上司・部下を含む)へのカミングアウト」については、50.7%が抵抗があり、抵抗がない人は21.1%にとどまった。LGBTへの認知と理解が広がる一方で、職場でのカミングアウトについてはまだまだハードルが高いことがわかる。

「以前に比べてカミングアウトしやすい環境になっているかと感じますか」という質問にも、当事者の69.5%が「なっていない」と答えている。カミングアウトに抵抗がある理由としては、

・特に伝える必要がないと思うから(49.0%)

・偏見を持たれたくないから(43.5%)

・相手に気を使わせたくないから(40.1%)

・理解してもらえないと思うから(36.4%)

・今までの関係が変わるのが怖いから(34.2%)

・嫌がらせ・悪口などがあるかもしれないから(27.9%)

・その他(1.7%)

 となっている。当然だが、やはりネガティブな反応に対する懸念が壁になっている。

 しかし、8.9%、ザックリ言うと左利きの人同じくらいの割合でLGBT層が存在していることをしっかり認識する必要があるだろう。その人たちが「生きづらい」世の中は、どう考えてもおかしいことだ。その上で、例えばもし当事者がカミングアウトしたいと思ったら、安心してカミングアウトできる環境をどうしたらつくっていけるかを考えなければいけないと思う。

電通ホールで行われたパネルディスカッション(筆者撮影)
電通ホールで行われたパネルディスカッション(筆者撮影)

 調査結果の公表を受けて11日、東京・港区の電通ホールでDDLの「LGBT調査2018情報共有会」があり、パネルディスカッションが行われた。パネリストとして登壇したLGBT当事者でもある日本テレビの谷生俊美さんの言葉が印象に残った。谷生さんが出演している番組への投書の中に、世の中にはマイノリティがたくさんいるのになぜLGBTだけが優遇されなければならないのかという質問があったという。それに対する谷生さんの答えはこうだった。

「優遇されたいとはまったく思っていません。ただ、普通に扱ってもらいたいだけなんです」

 杉田水脈さんにぜひ、聞かせたい!

THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)

1961年東京生まれ。ランナー&ゴルファー(フルマラソンの自己ベストは3時間41分19秒)。早稲田大学第一文学部卒、週刊ゴルフダイジェスト記者を経て朝日新聞社へ中途入社。週刊朝日記者として9.11テロを、同誌編集長として3.11大震災を取材する。週刊誌歴約30年。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。2016年11月末で朝日新聞社を退職し、東京・新橋で株式会社POWER NEWSを起業。政治、経済、事件、ランニングのほか、最近は新技術や技術系ベンチャーの取材にハマっている。ほか、公益社団法人日本ジャーナリスト協会運営委員、宣伝会議「編集ライター養成講座」専任講師など。

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