Yahoo!ニュース

町は人なり〜大分県日出町の古民家“亀屋style”が仕掛ける『おくど市』

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
地元に浸透しはじめている『おくど市』には、遠方から訪れる人も

山と海を望み、歴史ある落ち着いた町並み。移住先として注目される大分県日出(ひじ)町に、築百年を超え、国の登録有形文化財に指定されている商家「亀屋」があります。この亀屋で4月26日(日)に開催される『おくど市』とはどんなイベントなのか、古民家を中心に地域の活性化を目指す、オーナー梶原純子さんに話を伺いました。

◆台所で、作り手の顔が見えるマルシェを

一軒の“おくど”とは思えない活気ある軒が連なる
一軒の“おくど”とは思えない活気ある軒が連なる

『おくど市』は亀屋の提唱するマルシェスタイルのマーケット。かつて土間で煮炊きするための「おくどさん」があった場所(台所)に85cmの竹ざるを置き、それを1ブースとして10軒くらいを用意、雑貨やお菓子などの商品を中心に、職人さんや自分で店を持つ方々に出店して貰う催しです。

「作り手の顔が見える市“マルシェ”を開くことで、この建物が活かされれば」という梶原さん。今回の『おくど市』には、かりんとうや桜餅、コロッケなどの食品の他、ガーデニング雑貨店などが軒を連ねます。離れではインスタレーションを展開、古民家に眠っていた古物の蚤の市も開かれ、とても一軒の古民家で行われるイベントとは思えない盛りだくさんの内容です。

◆新しい家が建っていく中で、古い家の良さを伝えたい

中庭や離れでは、コンサートやインスタレーションが行われることも
中庭や離れでは、コンサートやインスタレーションが行われることも

「新しいものばかりだと、街が乱れていく気がするんです」と言う梶原さんたちの願いは、古い家が継承されることだといいます。「神社や仏閣など“すごいもの”だけが残るということに違和感を覚えます。もっと普通の人の生活の部分を残したいんです」。内と外の空間にゆるやかな“間”があったり、余裕のある広さの間口、土間や縁側など曖昧な空間の存在が、人を受け入れる懐の深さを感じます。

「木のあたたかさや温もり、土壁の柔らかさ、障子の揺らぐ雰囲気だったり、今の家にないものに触れてもらうことで、良さを分かって貰って、残って欲しい」2007年に、昔の工法にこだわりつつ、外見はかつてのまま、中は機能的に生まれ変わった“亀屋style(亀屋スタイル)”は、一階部分はコンサートや展覧会、写真展などのイベントスペースとして、二階部分は住居として使用されています。

◆家が人を呼ぶ

「昔行われていたような市を復活させたい」というオーナーの梶原純子さん
「昔行われていたような市を復活させたい」というオーナーの梶原純子さん

「この家に来るとよいことがあるんだよね」そう言って亀屋を訪れる人も多い。建物や場には色々なキャラクターがありますが、「亀屋には人と人とを引き合わせて繋ぐような作用があると思う」という梶原さん。実際古民家再生計画をはじめると、京都の町家さん、左官屋さん、と縁が繋がってとんとん拍子にここまで来たといいます。とはいえ、家の力だけでは成功は難しい。純子さんをはじめ梶原家のみなさんの人柄や情熱に魅了されるファンも少なくない。

「亀屋を通じて日出を知った人が、移住したいと思ってくれて、集まってきたら楽しい」と目を輝かせる梶原さん。おくど市は4月26日(日)11:00〜16:00まで、豊後豊岡駅徒歩7分、速見郡日出町豊岡989 “亀屋style” にて。古き良き日常の中に、現代に必要な何かが見いだせそうな気がします。

■関連サイト

亀屋style

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

矢萩邦彦の最近の記事