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育成契約は故障選手の避難先!?FA人的補償の是非は!?上原浩治が考える戦力均衡への提案

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本プロ野球選手会が31日に行われた日本野球機構(NPB)との事務折衝で、育成選手契約に関する見直しを求めたとの報道を目にした。

 選手会の森忠仁事務局長は、故障やフリーエージェント(FA)の人的補償から外すことを目的に支配下選手と育成契約を結ぶケースを念頭に、制度の趣旨に合っていないという指摘をしているという。選手会側は育成選手の実態に関する検証はこれからだとした上で、1億円以上の選手がけがをしたからといって、リハビリ期間は支配下登録から外すというケースがありうる現状には見直しが必要だと訴えている。

 私は2020年12月17日付で、「FA人的補償の隠れみの!? 育成なのに年俸数千万!? 『抜け道』になり始めた育成契約の健全化を」(https://news.yahoo.co.jp/byline/ueharakoji/20201217-00212997)と題したコラムを執筆している。

 育成契約はドラフトで支配下選手としては獲得するレベルにはないが、一芸に秀でていたり、将来的に成長できる可能性がある選手の可能性にかけ、またはハングリーな環境でも挑戦したいという選手に「門戸」を開く制度だと理解している。

 詳しくはこのときのコラムに目を通してもらえるとありがたいが、このときのコラムでは、けがをした選手の「避難先」にしないためにも、育成選手の年俸を厳密に2軍選手の最低年俸以下など低く抑えてはどうかと提言した。

 改めて考えたとき、複数年契約の選手などの問題も出てきそうだ。選手会が主張しているのも、趣旨とずれた実態の選手が育成契約を結んでいるという点である。そうであれば、「育成選手」とは別に、手術やけがで翌シーズンは出場しないなどの条件付きで、新たに「故障者契約枠」のようなカテゴリーを各球団にいくつかの枠を制限して設けるということでも、いいのではないかと思う。

 この上で、故障者契約枠の対象ではない選手と育成契約を結ぶ場合には、2軍最低年俸以下にするという条件を定めてはどうだろうか。

 同時に、FAによる人的補償の是非を協議し、この点も見直しに着手することも選択肢に入れるべきだと考えている。FAによる人的補償は廃止し、代わりにドラフト指名権を活用する案、もしくは人的補償+ドラフト指名権の活用という案である。

 つまり、FAで獲得した選手の年俸ランキングによって、選手を獲得した球団が翌年のドラフト会議の1、2位の指名権を移籍前の球団に譲渡するというのはどうか。あるいは人的補償に加え、ドラフト1位指名権のみを譲渡なども検討してはどうか。

 「育成契約」だけに焦点を絞るのではなく、「戦力均衡」の観点から「FAの人的補償も含めた一体化した制度の見直し」に着手する機会だと思う。球団、選手会それぞれに守りたいものはあるだろうが、球界のためにどういう制度作りがいいかを考えてほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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