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藤浪・吉田と千賀の移籍は大きく違う!ポスティング制度に全球団統一のルールを!

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 本人が何より安堵していることだろう。阪神からポスティング(入札)制度でメジャー挑戦を表明していた藤浪晋太郎投手が米大リーグ、アスレチックスと単年のメジャー契約に合意したと報道された。年俸325万ドル(約4億1900万円)は今季推定年俸4900万円から大幅増となった。昨季はア・リーグ西地区の最下位に沈み、チーム再建中で先発候補が必要というところで、期待もされている。藤浪投手はここ数年、ポテンシャルを十分に発揮できていなかったようだが、環境を代えることで、現状を打開できるチャンスを手に入れたともいえる。160キロを超える直球にスプリット。先発、中継ぎを経験した通算57勝右腕が持つ素材の高さは言うまでもない。阪神時代のように、常にメディアやファンの視線にさらされる状況ではなくなるだろう。その分、自分に集中できるはずである。決して甘い世界ではないが、厳しいサバイバルを生き抜いてほしい。

 今オフのメジャー移籍では、オリックスの吉田正尚選手が同じくポスティングによって、レッドソックスへ移籍。5年総額9000万ドル(約120億円)の大型契約だ。外野の守備が不安視されるという報道があったが、左翼の守備範囲が狭いボストンのフェンウェイ・パークが本拠地とあれば、打撃に集中できるという思惑もあるだろう。

 藤浪投手や吉田選手の移籍はこうしたプレー環境も考慮した上で交渉が進められていて、フリーエージェント(FA)による移籍とそん色ないように映る。日本の球団にとっても、「移籍金」が入るので、ウイン・ウインの関係となっている。

 一方で、ソフトバンクからメッツに5年総額7500万ドルで移籍した千賀滉大投手は海外FA権を行使して長年の夢を実現させた。ソフトバンクは自軍の選手をポスティングでは〝放出〟しない姿勢を打ち出しているので、ポスティングより年月を重ねる結果となった。

 この時期、私は何年もポスティングの現状について改革を訴えてきた。ポスティングというシステムの運用は認められているが、容認するかどうかは各球団に委ねられている。こうした現状は、ドラフト会議で球団を選ぶことができずにプロ入りする選手にとってフェアではないと思うが、どうだろうか。指名された球団がポスティングを容認するか、どうかでその後のプロ人生が変わってしまう。もちろん、ポスティングで出す球団も、出さないソフトバンクもルールに基づいているので批判される筋合いではないが、選手にとっては海外FA権取得より数年早くメジャーへいけるかどうかは、キャリアに大きく影響する可能性がある。

 例えば1軍登録日数が7~9シーズンに達した選手がポスティングを申請すれば、球団は自動的に応じるというような運用はできないだろうか。入団先の球団によって選手に不利が生じないようにと同時に、ソフトバンクのように海外FA権取得までは選手をポスティングにかけないという方針を貫いている球団が〝悪者扱い〟されないように、本当の意味での統一ルールが欠かせないのではないだろうか。巨人時代、ポスティングを訴えて「上原はわがまま」と言われた身としては、いつもこの問題を考えている。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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