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澤村拓一の移籍に「年俸格差」など関係ない!メディアはトレードのネガティブ報道と決別を!

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 巨人からのトレードで、ロッテに合流したその日にいきなりのお立ち台。澤村拓一投手にとっては最高のスタートだったはずだ。8日の日本ハム戦。1点リードの6回に本拠地のマウンドに上がると、3者連続三振と新天地で鮮烈なデビューを飾った。

 本来の背番号は57だが、新しいユニホームが間に合わず、裏方さんに拝借して出場した106番のユニホーム姿が、いかにロッテが必要として獲得したかを物語っている。

 ロッテはパ・リーグの優勝を争うチーム。しかも、勢いもある。そんなチームに請われての移籍だ。日本のメディアも、そろそろ「トレード」をネガティブにとらえる報道はやめるべきだ。澤村にとって、そしてロッテから巨人へ移籍した香月一也選手にとっても、互いのチームが必要としているからこそ、成立したトレードなのだ。プロは厳しい世界。戦力と判断されなければ、そもそも契約をしてもらえない。澤村投手には実績と豊富な経験。香月選手は左のパワー打者とともに魅力があり、欲しいチームがあるからトレードは成立した。しかも、首位の巨人と首位を争うロッテ。互いの思惑が合致しての移籍は、2人の選手にとって決して「放出」なんかではない。澤村投手の好投が「ネガティブなトレード報道」と決別する転機になればいいと願う。

 両者を比較して「年俸格差」のトレードという報道も目にしたが、推定年俸を比較する意味があるのだろうか。私がレンジャーズに移籍した際のトレード相手も、のちに私の年俸を超えるような選手になっている。トレード時点での年俸で「格差」があるということを紹介する意味がわからない。メジャーでは年俸が20億円を超えるような大物選手が若いマイナーの複数選手とトレードが成立することがある。即戦力が必要なチームと、将来性のある選手が必要なチームがあれば、日常的に行われる。そんなとき「格差トレード」などと報道するメディアがあれば、「なにを比較しているのか」とバカにされるだろう。

 澤村投手については、ここからが真価を問われるマウンドになる。18年と19年シーズン途中までの短い間だったが、チームメートとして接した。私からみると、すごく繊細で完璧主義なところがある。3人で抑えないといけないとか、三振を取らないといけないと理想へのこだわりが強い。そのことで思い悩むこともあったのかもしれない。ただ、あれだけのボールを持っているのだから、もっと楽な気持ちで投げても結果はついてくるはずだ。走者を出しても得点を与えなければOK、点を取られても追加点を許さなければOK。その都度、気持ちを切り替えていかないと連日のようにマウンドに上がるのだから、メンタルが持たなくなる。きょうのような投球を忘れず、活躍してほしい。

 最後に一つ。私が香月選手にホームランを打たれたから引退したというような報道があるが、引退理由を勝手に決められては困る。この点もメディアにくぎを刺しておきたい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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